2013 Fiscal Year Research-status Report
視交叉上核から室傍核領域への時刻情報伝達機構の解明
Project/Area Number |
25860181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
升本 宏平 近畿大学, 医学部, 助教 (60580529)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 体内時計 / 概日リズム / 組織培養 / 移殖 / グリア細胞 |
Research Abstract |
哺乳類の体内時計の中枢は視交叉上核である。しかしながら視交叉上核の時刻情報がどの様に周辺脳領域に伝わり、脳領域の時計を制御しているのか未だ明らかにされていない。申請者は組織培養下における視交叉上核と室傍核領域の時計遺伝子の振動を、発光測定系を用いることで同時に測定することを可能とした。さらに申請者は室傍核領域の単独培養では時計遺伝子の振動は消失するが、そこに視交叉上核を移植して共培養することで室傍核領域の振動が回復することに成功した。そこで本研究では申請者が開発したこの技術を用いて、視交叉上核がどの様に室傍核領域の時計を制御しているのかという時刻情報伝達機構について明らかにすることを目的とする。 時刻情報伝達機構にはグリア細胞による情報伝達または神経連絡のどちらが重要であるか検証するために、視交叉上核組織片移植後、振動が回復した組織に対して免疫染色を行った。その結果、室傍核領域組織片と視交叉上核組織片の間にはグリア細胞が増殖して組織間を結合していることがわかった。そこで、時刻情報伝達機構にはグリア細胞が重要であるかと考え、移植実験の際にグリア細胞の増殖を抑制する処理を行った。その結果、室傍核領域の時計遺伝子の振動は回復しなかった。これらのことから時刻情報伝達機構にはグリア細胞が重要な役割を果たしていると考えられる。また、時刻情報伝達機構における電気シグナルの関与を検証するために、多平面電極上で室傍核領域組織片を培養し、そこへ視交叉上核組織片を移植して培養を行った。その結果、時計遺伝子の振動と同様に、電気活動の振動は室傍核領域と視交叉上核では逆位相であることが確認できた。このことは、電気活動及び時計遺伝子振動に対して同様の機構によって時刻情報の伝達が行われている可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では視交叉上核から室傍核領域への時刻情報伝達機構の解明を行うために、1. 時刻情報伝達機構が液性因子依存か物理的要因依存であるか明らかにする。2. 時刻情報伝達物質の同定。3. 物理的要因の検証の、3つの項目を軸に研究を進める。 1に関して、透析膜を用いた実験を行い、液性因子または物理的要因のどちらが重要であるか検証するものであったが、透析膜を用いても完全に物理的(グリア細胞の)接触を阻害することはできなかった。しかしながら、免疫染色等の結果からグリア細胞の重要性が浮かびあがってきた。当初の予定とは異なったが、物理的要因の重要性を明らかにすることができた。 2に関して、時刻情報伝達物質の同定を行うものだが、1の検証の結果、時刻情報伝達機構には物理的要因が大きく関与している可能性が示唆されたので、当初の予定通り、2の項目は行わずに3の物理的要因の検証を行った。 3に関して、物理的要因の内、時刻情報伝達機構に重要なのは、グリア細胞による連絡なのか、神経連絡によるものなのか検証を行った。まず、グリア細胞の関与を検証するために、組織移植時にグリア細胞の増殖抑制処理を行った。その結果、振動の回復は観察できなかった。同様に神経連絡の関与を検証するために、移殖時に軸策伸長阻害処理を行った。これは現在検証中である。また、電気シグナルの関与については、その測定系を樹立することができた。 これらのことより本研究は概ね予定通りに進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
時刻情報伝達に重要であるのはグリア細胞であるのか、神経連絡であるのか明らかにするために、引き続きグリア細胞増殖抑制剤、軸策伸長阻害剤等を用いた検証を行う。また、なぜ室傍核領域と視交叉上核とでは振動の位相が逆位相になっているのかという疑問を解決するために、昼行性動物から採取した組織片を用いた実験を行い、位相差を作り出すのは情報の発信側(視交叉上核)なのか、情報の受信側(室傍核領域)なのか明らかにする(*夜行性動物は室傍核領域と視交叉上核の時計は逆位相。昼行性動物は室傍核領域と視交叉上核の時計は同位相)。また、グリア細胞の重要性の検証についてはギャップ結合阻害剤などを用いて、グリア細胞の何が重要であるのか掘り下げていく予定である。 多平面電極を用いた電気シグナルの測定系を構築し、時計遺伝子の振動と同様に視交叉上核組織片移植後、室傍核領域の電気活動の振動は視交叉上核と逆位相であることが確認できた。この測定系を用いて、組織移殖時にグリア細胞の増殖抑制、軸策伸長阻害を行い、電気活動に対する時刻情報伝達機構にグリア細胞または神経連絡が関与するのか検証する。また電気シグナルの関与を検証するために、視交叉上核に電気刺激を与え、室傍核領域の電気活動が影響を受けるか測定する。視交叉上核と室傍核領域の電気活動は概日振動しているので、1日4時間毎の6点で刺激を与え、室傍核領域の電気活動の位相が時刻ごとにどれだけ変動したかを示す位相反応曲線を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品である組織培養用メンブレンは非常に高価であるので、極力再利用することに勤めた。また、研究の進展に伴い、組織培養数が当初予定より少なくなった。その結果、組織培養用メンブレンの購入費を抑えることができた。 繰越分は次年度のおいて組織培養用メンブレンを購入する予定である。また、電気活動測定に用いる電極(MEDプローブ)も消耗品であり、次年度はこちらの使用数が増えることが予想されるので、MEDプローブを購入する予定である。
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[Journal Article] Establishment of TSH β real-time monitoring system in mammalian photoperiodism.2013
Author(s)
Kaori Tsujino, Ryohei Narumi, Koh-hei Masumoto, Etsuo A. Susaki, Yuta Shinohara, Takaya Abe, Masayuki Iigo, Atsushi Wada, Mamoru Nagano, Yasufumi Shigeyoshi, Hiroki R. Ueda
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Journal Title
Genes Cells
Volume: 18(7)
Pages: 575-588
DOI
Peer Reviewed
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