2014 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血の低体温療法におけるATP・アデノシンの役割
Project/Area Number |
25860193
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
川村 将仁 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10408388)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 薬理学 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
心肺停止および血栓による脳虚血における初期対応として、氷などによる脳の保護は、脳卒中の治療ガイドラインにも必ず載せられる事項である。脳温を32~33℃まで下げる本格的な低体温療法は専門施設を必要とするが、外部からの保冷による軽度の低体温療法でも脳卒中時の予後が改善されることが示されており、低温による脳保護は重要な治療効果を持つと考えられている。本研究計画では、脳虚血に対する低体温療法におけるATP・アデノシンの関与を証明し、その機序を明らかにすることを目的とする。マウスより急性海馬スライス標本を作成し、CA1領域より細胞外記録を用いて電気刺激誘発の興奮性シナプス伝達(fEPSP)を観察し、実験的虚血条件(N2 + 0 mM glucose, OGD)がfEPSPの振幅に与える影響を28℃、32℃、36℃の異なる温度条件下で比較した。36℃では15分間のOGDにより不可逆的なシナプス伝達障害が引き起こされたのに対し、32℃、28℃ではfEPSP振幅の回復が引き起こされた。アデノシンA1受容体の選択的抑制薬(DPCPX)は32℃におけるfEPSP振幅回復を阻害し、アデノシンA1受容体ノックアウトマウスでは、32℃におけるfEPSP振幅の回復は引き起こされなかった。一方、28℃におけるfEPSP振幅回復はアデノシンA1受容体の選択的抑制薬前投与群においても観察された。以上の結果により、32℃のmildな低体温条件における不可逆的シナプス伝達障害の発生抑制(神経保護作用)はアデノシンA1受容体の活性化を介しているが、現状の低体温療法では再現不能な、より低温条件(28℃)での神経保護作用はアデノシンA1受容体以外の機構を介しており、低温条件により異なる神経保護作用が働いていると考えられた。
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