2013 Fiscal Year Research-status Report
リドカイン誘導体QX-572の痛覚神経特異的遮断-新規機序によるがん性疼痛の克服
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25860199
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
宮野 加奈子 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (50597888)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | TRP / 疼痛 / がん / 抗がん剤 / 末梢神経障害 |
Research Abstract |
現在、満足できる疼痛コントロールができているがん患者は少なく、より効果的な鎮痛薬の開発が求められている。近年、がん性疼痛に一次知覚神経に発現する6回膜貫通型陽イオンチャネルtransient receptor potential (TRP) superfamilyのTRPV1やTRPA1などが重要な役割を果たすことが明らかとなっている。そこで、本研究は、TRP発現神経特異的遮断候補薬として局所麻酔薬リドカイン誘導体に着目し、in vivo及びin vitro実験系を用いてリドカイン誘導体の薬理作用、ならびにがん性疼痛に対する鎮痛効果を評価し、臨床試験に向けて必要な基礎的データを蓄積することを目的とする。 当該年度は、リドカイン誘導体の薬理作用について解析するために、in vitro実験系を用いてリドカイン誘導体が作用するTRPチャネルサブタイプの探索を行った。その結果、TRPV1およびTRPA1発現細胞において、各アゴニスト処置により濃度および時間依存的なYO-PRO1-Iodideの取り込みが認められた。一方、TRPM8発現細胞においてはTRPM8アゴニスト処置よりYO-PRO1-Iodideの取り込みは認められなかった。したがって、リドカイン誘導体はTRPチャネルのうちTRPV1ならびにTRPA1を介して細胞内へ流入する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、in vitro実験系を用いてTRP発現神経特異的遮断候補薬として申請者が着目したリドカイン誘導体の薬理作用について解析を行い、リドカイン誘導体がTRPチャネルのうちTRPV1およびTRPA1を介して細胞内へ流入し神経活動を遮断する可能性を明らかにした。そこで、現在、TRPチャネルと電位依存性ナトリウム(Nav)チャネルのうちがん性疼痛に関与しているNav1.7, ならびにNav1.8を安定的に共発現させたHEK293細胞(TRPV1とNav1.7、TRPV1とNav1.8、TRPA1とNav1.7、TRPA1とNav1.8を発現させたHEK293細胞)を作製している。なかでも、TRPV1-Nav1.7安定共発現HEK293細胞とTRPA1-Nav1.7安定共発現HEK293細胞については、既に作製が完了している。 現在、世界中の企業がTRPをターゲットとした新規鎮痛薬の開発を行っているが、安全性の問題などから臨床試験を断念せざるを得ない状況が続いている。当該年度において得られた結果は、リドカイン誘導体は従来のTRP拮抗薬とは異なり、TRPチャネル発現神経のNav活性を阻害することにより神経活動を遮断し鎮痛効果を発揮する可能性を示唆する。この仮説の証明には、更なる研究の遂行が必須であるが、当該年度の研究計画目標を概ね達成していることから、順調な進捗を示していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度は、リドカイン誘導体がTRPチャネルのうちTRPV1およびTRPA1を介して細胞内へ流入する可能性を明らかにし、TRPV1-Nav1.7安定共発現HEK293細胞とTRPA1-Nav1.7安定共発現HEK293細胞を作製した。今後は、これらのTRP-Nav安定共発現細胞を用いて、リドカイン誘導体がTRPチャネルの活性化を介して細胞内へ流入しNav活性を抑制するか否か電気生理学実験を用いて明らかにする。さらに、TRPチャネルの活性異常が関与することが報告されているがん性疼痛モデル動物を作製し、リドカイン誘導体の鎮痛効果について評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当研究は平成25~26年度の2年間で行うこととなっている。直接経費の請求額は平成25年度1,600,000円となっていたが、実験の進捗に合せて平成25年度終了までに316,884円を執行し、残りの1,283,116円を平成26年度に繰り越した。その理由としては、平成25年に計画していた電気生理学実験が平成26年度へ移行したからである。平成26年度は電気生理学実験ならびに当初から計画していた動物実験の両方を行う予定である。 平成26年度は、請求額1,600,000円と繰り越し分を合せ以下の予算にて研究を遂行する。物品費:1,804,293円、旅費:575,190円、その他:503,633円 平成26年度の研究費は上述した研究推進方策を進めるために必要な試薬の購入に充当する予定である。具体的には、real time PCRに必要なプライマーやSYBR Green I、western blottingや免疫組織化学染色に必要な抗体、ELISAキット、電気生理学実験に必要な電極などの消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] New cancer cachexia rat model generated by implantation of a peritoneal dissemination-derived human stomach cancer cell line.2014
Author(s)
Terawaki K, Sawada Y, Kashiwase Y, Hashimoto H, Yoshimura M, Suzuki M, Miyano K, Sudo Y, Shiraishi S, Higami Y, Yanagihara K, Kase Y, Ueta Y, Uezono Y.
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Journal Title
Am J Physiol Endocrinol Metab
Volume: 306
Pages: E373-E387
DOI
Peer Reviewed
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