2013 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変マウスを用いた胃がん形成における炎症反応の役割の解析
Project/Area Number |
25860230
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武田 はるな 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80647975)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 炎症 / 胃 / マウス |
Research Abstract |
CagA陽性のピロリ菌感染は、慢性炎症を引き起こし胃がん発症と強い相関を示す。CagAタンパク質の発がん作用に関する報告は蓄積されているが、炎症における作用は未知な部分が多い。本研究では、CagAタンパク質が炎症反応に促進的な働きをしているかを生体レベルで解析するために、野生型マウスとCagAトランスジェニックマウスにおいて胃炎を誘導し炎症の度合いを比較した。用いたマウスの系統はC57/BL6であり、予備実験においてHelicobacter Felis (HF)とH. pylori株の一つであるSS1を感染させて比較したところ、強い胃炎を誘導できるのはHFであった。HFを感染させてから40週後に胃のHE染色を行い観察したところ、胃の委縮、好中球やマクロファージ、リンパ球の浸潤を伴う強い炎症を野生型、CagAマウスで誘導することができた。HF感染による炎症反応は、幽門部ではなく、主に胃体部で観察された。次に、炎症の度合いに差があるかを、1)リンパ球の胃腺管への浸潤、2)好中球の胃腺管への浸潤、3)胃腺管の委縮の有無、4)腸上皮化生の有無について評価したところ、野生型マウスとCagAトランスジェニックマウスの間で有意な差は見られなかった。この実験から、CagAタンパク質の炎症を増強する作用はとても弱いと考えられた。一方で、CagAマウスにおけるCagAタンパク質の発現は弱いため、HF感染により強い炎症を惹起することでその効果が見えにくくなっている可能性も考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CagAタンパク質の胃炎に与える影響を、CagAトランスジェニックマウスを用いた実験系で評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症が胃がん形成に与える影響について、次年度は胃がんで変異がある遺伝子、その中でも特に腫瘍抑制遺伝子に着目し、これら遺伝子の発現を、胃の器官培養や胃がん細胞株においてノックダウンする。これらの細胞をマウスへ移植することで、生体内での腫瘍形成能を評価する。次に、これらの細胞に対する炎症性サイトカインへの反応性を、がんシグナルの増強などの観点から生化学的に解析する。また、炎症性サイトカイン存在下の細胞の動態をタイムラプスイメージング技術を用いて解析することで、炎症が胃がん形成にどのように寄与しているかを明らかにしていく。
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