2013 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー代謝特性に基づく消化器がん病態解明と制御への応用
Project/Area Number |
25860233
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
堂本 貴寛 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80635540)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | がん代謝 / 分子標的治療 / GSK3β |
Research Abstract |
これまでに我々は消化器がん細胞株(SW480, HCT116, PANC-1)を用いたメタボローム解析(CE-MS法)によって, GSK3βを阻害することで解糖系からTCA回路に至る代謝産物量に変化が生じることを見出した. 今回, メタボローム解析での結果を裏付けるべく, 各種消化器がん細胞株にGSK3β阻害剤を処理, あるいはsiRNAを用いてGSK3βの発現を抑制し, その代謝産物量変化を一つひとつ個別に分析キットを用いて計測した. その結果, がん細胞代謝の特徴とされる酸素供給量に非依存的な乳酸産生(Warburg効果)がGSK3βを阻害することによって抑制され, ミトコンドリア内での代謝産物量(アセチルCoA, クエン酸, フマル酸, マレイン酸)が増加することが確認された. その一方で, 非腫瘍性の細胞株(HEK293)ではGSK3βを阻害しても大きな変化は観察されなかった. メタボローム解析結果と一致して, 乳酸やアセチルCoAの前駆体であるピルビン酸量は変化せず, GSK3β阻害によって乳酸が減少し, アセチルCoAから生じるクエン酸が増加したことから, ピルビン酸を元にアセチルCoAを合成するピルビン酸脱水素酵素(PDH)の機能をGSK3βが制御している可能性が示唆された. また, GSK3βを阻害した際のPDH活性を計測したところ, GSK3β阻害剤を処理して3時間後にはその活性が回復してくることがわかった. こうしたことから, GSK3βの活性・発現を制御することで, がん細胞特有の代謝を更生しうることを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度中に実施予定していた培養細胞系での代謝産物についての解析がほぼ終了し, その分子メカニズムについての解析に着手している. また, 次年度に予定していた大腸がん細胞移植マウスでの実験を前倒しして開始できたため, おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
GSK3β阻害によって生じる代謝産物量変化について分子メカニズムの解明を主に進める. 特に, がん細胞エネルギー代謝特性の中心的な役割を担っているピルビン酸脱水素酵素に焦点を当て, GSK3βとの相互作用について詳細に解析する. また, 消化器がん細胞株でGSK3βを抑制するとアポトーシスが誘導されることから, エネルギー生産の中核として働くミトコンドリアへの影響についても解析する.
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