2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒト卵形成時に発生する染色体不分離の加齢依存性増加機構の解明
Project/Area Number |
25860255
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
堤 真紀子 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助教 (30377907)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コヒーシンの減少 / 染色体の分離異常 / 高齢出産 |
Research Abstract |
ダウン症候群などにみられる染色体異数性(トリソミー、モノソミーなど)の出現頻度は、母親の年齢が上がるにつれて増加することがよく知られている。染色体異数性は減数分裂時の配偶子への染色体の均等な分配の失敗が主な原因である。また胎児の染色体異数性は流産の原因の50%以上の割合を占める。本研究の目的は、卵母細胞において染色体間を接着するタンパク質「コヒーシン」の加齢による変化の有無を明らかにし、加齢依存性染色体分離異常の発生機構を理解することである。コヒーシンは染色体の正常な分離に必須であるが、卵は女性の胎児期に形成されるため、長い年月を経ることにより劣化すると予想されている。近年、女性の出産年齢が高齢化していることから、母親の年齢というリスクファクターは決して軽視できる問題ではない。本研究成果は将来の生殖医療の進歩に役立つと期待される。 本研究ではコヒーシンの量を年齢間で比較するため、マウスは2ヶ月齢と10ヶ月齢、ヒトは10~40歳代を対象とした。ヒトの卵の解析は、インフォームドコンセントの上で入手した卵巣腫瘍摘出手術検体の正常部卵巣組織を用いた。タンパク質の定量については、方法としてウエスタンブロットが一般的であるが、組織中の卵母細胞の割合が少ないため、以下のような免疫染色によるタンパク質の定量系を構築した。組織切片を卵母細胞マーカー (c-Kit) で蛍光免疫染色して個々の卵母細胞を同定し、抗コヒーシン抗体による蛍光強度を画像解析してコヒーシンを定量した。その結果、ヒトでは若年齢群(10-20歳代)と比較して高年齢群(40歳代)では減数分裂細胞特異型のコヒーシンが有意に減少していた。マウスでも同様の傾向が見られた。これらの結果より、母親の加齢に伴う卵の染色体異数性の増加は、コヒーシンの減少が原因の一つであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトの卵を解析するための検体収集が、予定より早く終了したため、マウスに加えて次年度の予定としていたヒトの解析も行うことが出来た。ヒトの卵で加齢依存的にコヒーシンが減少することを示すことが出来たことは、当初の大きな目的を達成したと言える。予想以上に興味深いデータが得られたため、ここまでの成果は直ちに論文発表することが重要と考え、更なるデータの補強のための追加実験を行った。このため、コヒーシンの結合部位を同定するためのマウスのクロマチン免疫沈降実験は進行が遅れているが、総合的には進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの本研究の研究成果で卵母細胞のコヒーシンが加齢依存的に減少することを示した。卵母細胞のコヒーシンは胎児期以降は補充されないことが減少の要因であると考えられるが、既存のコヒーシンタンパク質が長い年月を経て分解され減少する過程は未だ不明である。このことを明らかにしたいと考え、今後の予定として、卵母細胞のコヒーシンを質量分析により解析し、若年齢群と高年齢群で翻訳後修飾を比較することを計画している。未知の翻訳後修飾の蓄積がコヒーシンを劣化させる。あるいは分解経路に導く可能性が考えられる。そのような翻訳後修飾を明らかにし、その予防手段が開発されれば生殖医療の進歩に大きく貢献すると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は次世代シーケンサーによるコヒーシンのクロマチン免疫沈降物の解析を計画していたが、進行の遅れによりその費用が使われなかったため。 これまでに得られた研究成果から、コヒーシンの減少機構を明らかにすることを立案した。よって生じた次年度使用額はコヒーシンの質量分析による解析のための受託費用として使用する。翌年度分として請求した助成金の使用計画は予定通りとする。
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Research Products
(4 results)