2013 Fiscal Year Research-status Report
胎盤の発生分化におけるエピジェネティック制御機構の解析
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25860259
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
冨川 順子 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (80534990)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エピゲノム / クロマチン / 初期発生 / 細胞分化 / 幹細胞 / 胎盤 |
Research Abstract |
本研究では、マウスをモデルとして用い、初期胚発生における経時的エピジェネティックプロファイルを作成することにより、胎仔側、胎盤側それぞれの細胞系列分化の評価系となりうるゲノム領域(シスエレメント)を探索し、その基準を整備することを目的としている。特に、分子生物学的知見に乏しい胎盤の発生、分化に関わる機能的ゲノム領域の新規同定をめざす。 本年度は、まず全能性を有していると考えられる2細胞期胚(2-cell)、未分化ES細胞および未分化TS細胞それぞれにおける発現プロファイルおよびエピゲノム情報の取得を進めるとともに、分化TS細胞の細胞種ごとの分離回収方法の検証を試みた。エピゲノム情報としては、ChIP-seq等に加え、FAIRE-seqデータを2-cell、ES細胞、TS細胞それぞれについて取得した。2-cellについてはまだ解析中なため、まずはES-TS間での比較の結果、胚体系列(ES)に比べ、胚体外系列(TS)では予想以上に多くの機能的ゲノム領域が獲得され、より複雑なクロマチン構造が形成されている可能性が示唆された。これは、オープンクロマチン領域として検出された領域の数が、TSではESの2倍近く存在すること、オープンクロマチン領域がいわゆる転写開始点近傍以外の非プロモーター領域に偏って分布していること、さらにFAIRE領域を挟んでH3K4me1の特徴的な二峰性ピークが観察されており、遠位エンハンサーとして働く可能性を有していることからもうかがえる。2-cellデータについての解析も現在進行中であり、3者間を比較することにより、これらエンハンサーの特徴をもつ領域が機能的なものか否か、さらに明確な予測が可能になると期待される。一方、分化TS細胞の分離回収については、マーカー遺伝子の発現状態から、各種栄養膜細胞種の培養環境下での分化時期を特定し、回収のタイミングを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階で予想された通り、得られたデータのバイオインフォマティック解析が本研究の進捗を左右する大きな要因になっている。配列データ取得後の解析についての対策は万全を期しているものの、ChIP-seqひとつをとってもそのデータ解析方法に関しては様々な知見があり、世界的に共通した方法は明示されていない。より適した解析方法、解析ソフトの選択等を随時話合い、進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度にひきつづき、各種データ解析および分化TS細胞の分離回収を進める。 解析の結果得られた候補ゲノム領域について、それらの領域を欠損したES細胞、TS細胞株の作製の準備も進めていく。その手法としては、同成育医療研究センター研究所のシステム発生・再生医学研究部に協力を仰ぎ、同研究室においてすでに確立されているTALEN(Transcription Activator-Like Effector Nuclease)あるいはCRISPR/Casシステム等のゲノム編集技術による変異細胞株の作出を行う。作製した細胞あるいはマウスについて組織学的、生化学的、細胞生物学的手法等を用いて生体内における機能や個体での機能を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
できうるかぎりキャンペーン期間を利用することで予想以上に安価での試薬購入が可能になったことや、当初の実験計画では、失敗した場合を考慮しやや多めに計上していたこともあり、次年度使用額を生じることとなったと考えられる。 次年度に計画している変異導入細胞株および動物の作出は、非常に有効な手法として近年報告されたゲノム編集技術を用いる予定であるが、これまでの遺伝子改変動物作出の経験からもさまざまな困難が予想されるため、次年度使用額は主にその試みに使用することになると考えられる。
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Research Products
(1 results)