2013 Fiscal Year Research-status Report
病理組織検体を用いた安定したmicroRNA検出法の確立と肝癌診断への応用
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25860277
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
熊谷 有紗 帝京大学, 医学部, 教務職員 (50596963)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / microRNA-21 / in situ hybridization / 癌幹細胞 / 上皮間葉移行 |
Research Abstract |
本研究の目的はmicroRNAの良好な検出と細胞形態保持を両立するin situ hybridization (ISH)法を確立し、肝癌診断・研究への応用について検討することである。 肝細胞癌(HCC)を含む多くの癌で発現上昇が報告されているmicroRNA-21(miR-21)に対するlocked nucleic acidプローブを用いてISH法の至適条件の検討を行った。①前処理、②ハイブリダイゼーション、③シグナル検出の3段階に分けて検討し、①Proteinase K→Pepsinへの変更、②反応温度、時間の変更、③発色液(NBT/BCIP)の反応時間延長によりmicroRNAの良好な検出と細胞形態保持の両立が可能となった。 確立した手法を用いて、HCC52例におけるmiR-21発現細胞の局在と免疫組織化学的特徴を明らかにするとともに、臨床病理学的因子との関連について検討した。HCC 52例中31例(59.6%)において腫瘍細胞でmiR-21の発現が同定され、HBV感染、分化度との関連を認めた。さらに、miR-21陽性HCC 31例中16例(51.6%)においてmiR-21強陽性を示す小型HCC細胞集塊がみられ、腫瘍内線維化の程度との関連を認めた。miR-21強陽性小型HCC細胞集塊はN/C比の高い細胞で構成され、腫瘍胞巣周囲の線維性間質に接して存在していた。また、予想していなかったことであるが、これら小型HCC細胞16例中13例で免疫組織学的に肝幹細胞/前駆細胞マーカーが陽性を示したことより、形態学的および免疫組織学的に肝幹/前駆細胞あるいは癌幹細胞の性質を有する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルブロックおよびホルマリン固定パラフィン包埋材料(FFPE)を用いて、形態の保持と良好なシグナル検出を両立したmicroRNAのISH法を確立した。 現在までに7種類のプローブ(miR-21,miR-200b,miR-141,miR-143,miR-145,miR-132,miR-224)の条件検討を終え、正常肝組織、肝細胞癌、胆管細胞癌を始め、胃・肺などの他臓器腫瘍に応用し、これらのmicroRNA発現局在とその意義ついて検討を進めている。 また、定量RT-PCR法の検出感度・特異度との比較を行うため、レーザーマイクロダイゼクション法を用いて採取した腫瘍成分よりmicroRNAを抽出し、定量RT-PCR法による発現解析を行い、本法の有効性、問題点について検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度からの研究を継続する。さらにEpithelial mesenchymal transition(EMT)を中心に胆管細胞形質を発現する肝細胞癌のメカニズムについて迫る。EMTは上皮細胞が間葉系様細胞に形態変化する現象であり、EMTの獲得により、癌細胞が浸潤や転移すると考えられている。胆管細胞癌においてもEMTの間葉系への移行と予後についての相関が報告されている。上皮細胞の代表的な接着分子であるE-cadherinはEMT獲得に伴いその発現が抑制されることから、EMTの代表的な指標の一つと考えられている。また、E-cadherinはZEB1、ZEB2、snailとそれを抑制するmiR-200ファミリー、miR-141、miR-26によって制御されていると報告されている。本研究では、それらの分子の発現について検討し、胆管形質を発現する肝細胞癌と典型的な肝細胞癌、胆管細胞癌のEMTの状態の違いを明らかにする。 1.検索対象とする症例の選定:免疫組織化学的検討において胆管細胞形質を発現する肝細胞癌10例、典型的な肝細胞癌20例、胆管細胞癌10例程度を選ぶ。 2.EMT関連分子の免疫組織化学的検討:E-cadherin、ZEB1、ZEB2、snailについて免疫組織化学的染色を行い、腫瘍間での違いや細胞形態間での違いについて明らかにする。 3.ISH法および定量RT-PCR法によるEMT関連分子を制御するmicroRNAの検出:EMT関連分子を制御するmicroRNAをISH法および定量RT-PCR法により検出し、腫瘍間での違いや細胞形態間での違いについて明らかにする。 4.腫瘍内での分布、局在、細胞形態との相関についての検討:2,3の検討で得られた結果を統合し、胆管細胞形質を発現する肝細胞癌と典型的な肝細胞癌、胆管細胞癌におけるEMTの移行状態の違いを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に沿って研究が順調に進み、平成25年度末に開催された海外の学会にて研究成果発表を行うことが可能となったため、学会発表・参加のための旅費として、また、現在準備中の論文投稿費用および英文校正費用として次年度に使用することとした。 研究成果発表のための外国旅費、論文投稿費用、英文校正費用および次年度の研究計画遂行のためのプローブ購入費用、方法確立及び検証のための試薬や酵素、抗体類の費用に充てる。
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Research Products
(4 results)