2014 Fiscal Year Research-status Report
病理組織検体を用いた安定したmicroRNA検出法の確立と肝癌診断への応用
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25860277
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
熊谷 有紗 帝京大学, 医学部, 助教 (50596963)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / CK19 / miR-21 / in situ hybridization |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の検討で、HCCにおいて腫瘍胞巣周囲の線維性間質に接した位置にmiR-21強陽性を示す小型HCC細胞集塊が存在することとそれらの細胞がCK19を含む肝幹/前駆細胞マーカーを発現していることを明らかにした。
本年度は前年度確立した手法を用いて、転移・再発率が高いと報告されているCK19陽性HCCの臨床病理学的特徴とmiR-21発現について検討した。 CK19はHCC50例中10例(20%)で陽性を示し、肝内転移および門脈侵襲のある群、隔壁形成のある群、腫瘍内線維性間質陽性(≧10%)群で有意に多く認められた(p<0.05)。一方、miR-21は50例中29例(58%)で陽性を示し、CK19と同様に肝内転移、隔壁形成、腫瘍内線維性間質との関連が見られた他、B型肝炎ウイルス感染群、分化度が中または低分化度群で有意にmiR-21の発現が認められた。また、CK19陽性HCCではCK19陰性HCCに比してmiR-21の発現頻度が有意に高いという結果が示された(p<0.05)。 本年度の検討により、CK19とmiR-21の同様の臨床病理学的意義が示されたとともに、両者の関連が示唆された。前年度の検討で腫瘍胞巣周囲の線維性間質に接した位置にmiR-21強陽性を示す小型HCC細胞集塊が存在し、それらの細胞が形態学的、免疫組織学的にstem cell類似の性質を有する可能性が考えられたが、本年度の結果は前年度の結果と合致すると考えられた。しかし、臨床病理学的意義においても異なる点を含んでいることや現時点ではCK19とmiR-21の直接的な相互作用の有無については報告がないため、今後の検討課題と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.胆管細胞形質を発現する肝細胞癌を中心に癌の浸潤や転移機序の一つであるEpithelial mesenchymal transition(EMT)に関連するmicroRNAの腫瘍内での発現分布や組織細胞形態との関連性を詳細に検討し、そのメカニズムについて迫ることを目標として研究を進めている。 (1)EMT関連マーカー(E-cadherin、ZEB1、ZEB2、snail、vimentin)の発現について免疫組織化学的染色の条件検討を終え、胆管細胞形質CK19を発現する肝細胞癌、典型的な肝細胞癌、肝内胆管癌における各マーカーの発現の違いや細胞形態間での違いについて検討を進めている。 (2)EMT関連分子を制御するmicroRNA(miR-200ファミリー)については初年度に条件検討を行い、肝癌について検討を進めていたが、肝癌では全体的に陽性を示す症例が少なく、発現量が低い可能性が考えられた。現在、in situ hybridization(ISH)法の増感法について検討している。 2.初年度に確立したmicroRNA ISH法を正常肝組織、肝細胞癌、胆管細胞癌を始め、胃・肺など多臓器腫瘍へ応用し、microRNAの発現局在とその意義について検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度からの研究を継続する。EMTを中心に胆管細胞形質を発現する肝細胞癌のメカニズムについて迫る。EMT関連分子の発現について検討し、胆管形質を発現する肝細胞癌と典型的な肝細胞癌、胆管細胞癌のEMTの状態の違いを明らかにする。 1.検索対象とする症例の選定:免疫組織化学的検討において胆管細胞形質CK7、CK19を共に発現する肝細胞癌10例、典型的な肝細胞癌40例、胆管細胞癌10例程度を目途に症例を追加する。 2.EMT関連分子の免疫組織化学的検討:前年度に引き続き、E-cadherin、ZEB1、ZEB2、snail、vimentinについて免疫組織化学的染色を行い、腫瘍間での違いや細胞形態間での違いについて明らかにする。 3.ISH法によるEMT関連分子を制御するmicroRNAの検出:EMT関連分子を制御するmicroRNA(miR-200ファミリー、miR-141)についてISH法の増感法を確立し、発現量の低いmicroRNAについての検出を試みる。検出したmicroRNAの腫瘍間での違いや細胞形態間での違いについて明らかにする。 4.腫瘍内での分布、局在、細胞形態との相関についての検討:2,3の検討で得られた結果を統合し、胆管細胞形質を発現する肝細胞癌と典型的な肝細胞癌、胆管細胞癌におけるEMTの移行状態の違いを明らかにする。
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Causes of Carryover |
初年度の研究成果発表のための論文投稿に向けて準備を進めているため、その論文投稿費用および英文校正費用として次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果発表のための論文投稿費用および英文校正費用および次年度研究計画遂行のためのプローブ購入費用、方法確立および検証のための試薬や酵素、抗体類の費用に充てる。
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