2013 Fiscal Year Research-status Report
肺気腫の新規発症機序:接着分子CADM1の細胞内断片による肺胞上皮アポトーシス
Project/Area Number |
25860302
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
萩山 満 近畿大学, 医学部, 助教 (60632718)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肺気腫 / CADM1 / shedding / アポトーシス |
Research Abstract |
肺気腫は慢性閉塞性肺疾患の一種で、プロテアーゼの絶対的或いは相対的な上昇による肺胞壁の破壊的変化を特徴とする。肺気腫の肺胞上皮アポトーシスと肺胞上皮接着分子CADM1の細胞外切断(shedding)との間の因果性について調べる。 肺気腫及び健常肺病理組織のパラフィン包埋ブロックの薄切切片をTUNEL法(アポトーシスの検出)に供し、肺気腫においてTUNEL陽性細胞の割合が有意に高いことを明らかにした。また肺気腫と健常肺の肺組織ライセートを調整し、CADM1抗体でのウエスタンブロットに供し、症例ごとに全長型に対する切断産物の量比をCADM1 shedding率として算出したところ、肺気腫におけるCADM1 shedding率が健常肺に比べて有意に高いことが示された。 CADM1 sheddingと肺胞上皮アポトーシスの関連性を調べるため、次の実験を行った。肺胞上皮細胞株NCI-H441細胞をTPAとトリプシン処理によってCADM1のsheddingを亢進させ、MitoTracker(ミトコンドリアの検出)とCADM1抗体にて二重染色すると、CADM1のシグナルがMitoTrackerと共局在するのが観察された。sheddingを亢進させた上記細胞からミトコンドリア分画を抽出し、CADM1抗体でのウエスタンブロットに供したところ、α切断産物(αCTF)が濃縮して存在していた。NCI-H441細胞にαCTFを外来性に発現させたところ同様の結果が得られ、さらにミトコンドリア膜電位測定用蛍光色素JC-1を用いてミトコンドリア膜電位が低下することを明らかにした。 以上の結果より、肺気腫の肺胞上皮ではCADM1のsheddingが亢進状態にあり、αCTFがミトコンドリアに移行し、ミトコンドリア膜電位を低下させ、その結果として肺胞上皮の病的なアポトーシスが惹起されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺気腫の肺胞上皮でアポトーシスとCADM1のsheddingが亢進していることを明らかにした。肺胞上皮アポトーシスとCADM1 sheddingとの間の因果性について、sheddingの最終産物として細胞内に産生される細胞内断片(ICD)の機能解析の観点から調べる予定であった。しかし、少量かつ分解が速いためかICDの発現量は極めて低かった。肺胞上皮細胞株であるNCI-H441細胞をTPAとトリプシン処理によってCADM1のsheddingを亢進させたところ、CADM1のシグナルがMitoTracker(ミトコンドリアの検出)と共局在するのが観察され、そのミトコンドリア分画にα切断産物(αCTF)が濃縮して存在していることを明らかにした。上記細胞にαCTFを外来性に発現させたところ同様の結果が得られ、ミトコンドリア膜電位測定用蛍光色素JC-1を用いてミトコンドリア膜電位の変化を介したアポトーシスが誘導されている可能性が示唆された。以上より、CADM1のsheddingと肺胞上皮細胞のアポトーシスの関連性を示し、肺気腫発症の新しい分子機序を提案することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
CADM1 sheddingの最終産物である細胞内断片(ICD)の機能解析を行う。肺気腫と対照肺の肺組織ライセートをCADM1 C末抗体にて免疫沈降し、続いてウエスタン法に供してICDの検出を試みた。肺気腫にのみICDを検出することはできたが、ICDが少量かつ分解が速いためか、その発現量は極めて低かった。今後、症例数を増やして検証する。 ICDペプチドを多種品目同時固相法自動ペプチド合成装置にて合成し、生細胞においてライブイメージングでの検出を可能にするため、ICDペプチドを蛍光色素(FITCなど)で標識する。蛋白トランスフェクション試薬にて肺胞上皮細胞(RLE-6TN、NCI-H441など)にICDペプチドを導入し、①ICDペプチドはミトコンドリアに局在することを確認する、② TUNEL陽性細胞が増加するか調べる。対照ペプチドとして、「WoLF PSORT」での細胞内局在の予測がミトコンドリアから細胞質に変化するようにアミノ酸変異を導入したペプチドを合成し同様の実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題では、肺気腫の肺胞上皮におけるアポトーシスの実態とCADM1のshedding亢進の有無を病理組織学的及び分子生物学的に解析し、肺胞上皮アポトーシスとCADM1 sheddingとの間の因果性について、sheddingの最終産物として細胞内に産生される細胞内断片(ICD)の機能解析の観点から調べる予定であった。肺気腫と対照肺の組織ライセートをCADM1抗体のウエスタンブロットに供したところ、肺気腫にのみICDを検出できたが、ICDが少量かつ分解が速いためか、その発現量が極めて低かった。そのため、ICDペプチドの合成及びそのライブイメージを次年度に積極的に行う予定に変更したため。 また、本研究の実施に当たって現有の設備を少し拡充したいと考えていたが、実施環境を整理するのに時間がかかり次年度に行う予定にしたため。 本研究の実施に当たって、申請書の通り現有の設備を少し拡充する。 CADM1 sheddingの最終産物として細胞内に産生される細胞内断片(ICD)の機能解析を行う。ICDは約50アミノ酸残基よりなるペプチドと予想される。そのペプチドを多種品目同時固相法自動ペプチド合成装置にて合成する。対照ペプチドとして、「WoLF PSORT」での細胞内局在の予測がミトコンドリアから細胞質に変化するようにアミノ酸変異を導入したペプチドを合成する。蛍光色素で標識したペプチドを蛋白トランスフェクション試薬(Xfect, Clontech)にて肺胞上皮細胞(RLE-6TN、NCI-H441など)に導入し、① ICDペプチドはミトコンドリアに局在し、対照ペプチドは細胞質にびまん性に存在することを確認する、② TUNEL陽性細胞が増加するか調べる。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Cell adhesion molecule 1 is a new osteoblastic cell adhesion molecule and a diagnostic marker for osteosarcoma.2013
Author(s)
Inoue T, Hagiyama M, Enoki E, Sakurai AM, Tan A, Wakayama T, Iseki S, Murakami Y, Fukuda K, Hamanishi C, Ito A.
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Journal Title
Life Sci
Volume: 92
Pages: 91-99
DOI
Peer Reviewed
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