2013 Fiscal Year Research-status Report
寄生胞膜に着目した肝内型マラリア原虫-宿主間“鬩ぎ合い”機構の解明
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25860311
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
案浦 健 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90407239)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マラリア / 原虫‐宿主相互作用 / 寄生胞膜 |
Research Abstract |
マラリア原虫は宿主細胞内において寄生胞膜(PVM)を作り、宿主と隔たりを設けることで寄生を成立させる。マラリア原虫(スポロゾイト)が感染する肝細胞は、様々な免疫応答等が可能な細胞であることから、侵入後は宿主内に潜むため特に巧妙な隠れ蓑が必要になると考えられるが、肝内型原虫のPVMやそれに対する宿主応答に関する報告は極めて乏しい。そこで本研究では肝内型原虫PVMと宿主応答の“鬩ぎ合い”を明らかにするため、肝内型原虫PVMに対する宿主オートファジー(Atg)応答などを明らかにし、肝内型原虫特異的なPVM分子、PVMと相互作用する宿主分子、宿主Atg応答と相互作用する原虫分子の同定を試みることで、原虫‐宿主間の新規相互作用の解明に迫る。本研究計画では、齧歯類特異的マラリア原虫(P. berghei)を用いて、以下の計画実験を遂行した。 肝内型原虫に対する宿主Atg応答を解明するため、in vitroにおいてAtg関連分子の詳細な解析を行った。宿主肝細胞としてHuh-7細胞を用いて、RNAiの原理によりAtg5、TECPR1、FIP200の宿主Atg関連分子を各々一過性にノックダウンさせ、野生型(Wt)スポロゾイトを感染させた。感染24時間後に感染細胞を回収し、免疫蛍光抗体法により宿主LC3の原虫への集積を観察したところ、Atg5ノックダウン感染細胞ではLC3の原虫への集積は認められなかったが、TECPR1、FIP200をノックダウンさせた場合には引き続きLC3の原虫への集積が認められた。これらの結果から肝内型原虫に対する宿主LC3の集積応答は、ULK1複合体やPI3K複合体の機能に依存的しない集積である可能性が示され、生体の恒常的なAtg応答とは異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、肝内型原虫PVMと宿主の相互作用メカニズムを明らかにするために、主に以下の2つの異なるアプローチによる計画実験を遂行している。まず、1) 肝内型原虫に対する宿主Atg応答を詳細に解明し、次に2) 肝内型原虫のPVM分子、PVMと相互作用する宿主分子、宿主Atg応答に相互作用する分子の同定を試みる。 初年度は、1)の計画実験からin vitroにおいてRNAiの原理により宿主Atg関連分子を各々一過性にノックダウン後、Wtスポロゾイトを感染させ肝内型原虫に対する宿主LC3応答を観察した。その結果、Atg5、TECPR1、FIP200各々のノックダウン条件下において、宿主LC3の局在性が異なることが明らかとなった。すなわち肝内型原虫への宿主LC3集積はULK1複合体やPI3K複合体の機能に依存せず、原虫により宿主LC3に伴う一連の分解応答は遮断されている可能性(ハイジャック?)が示唆された。このような見解を明らかに出来た意義は大きく、今後RNAiによるin vitro解析を詳細に行い、また必要に応じてin vivo実験を並行して行うことで、肝内型原虫が宿主Atg応答をコントロールしている分子の同定を試みる。また一方で、2)の研究計画を遂行するためPVM形成に必須な因子であるnewgap1のタグ付加発現コンストラクト作製の準備を行った。newgap1のC末端に3xMYCをタグ付加したコンストラクトを作製後、内在性のnewgap1遺伝子と置換する原虫を作製し、その細胞内局在性と機能の解析を試みた。その結果、興味深いことにC末端タグ付加原虫は、Δnewgap1(遺伝子欠損)と同じ表現型を示し、newgap1のC末端は機能に必須な役割を担うことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
興味深い結果が得られたRNAiによるin vitro解析をさらに進め、肝内型原虫がハイジャックする候補分子の絞り込みを試みる。具体的には、Atg応答の異なる段階で作用する分子を各々ノックダウンし、宿主LC3の原虫への集積や肝内型原虫の生育などを比較する。LC3の活性化に必須であるAtg7、ULK1複合体非依存の確認のためにBeclin1やUVRAG、PI3K複合体非依存の確認のためにWIPI2、リソソーム融合との有無の検証のためにStx17やLAMP1などのノックダウンを予定している。また必要に応じて各種ノックアウトマウスを入手しin vivoによる解析も展開する。 肝内型原虫のPVM分子、PVMと相互作用する宿主分子を網羅的に同定するため、新たにnewgap1タグ付加コンストラクトをし、内在newgap1遺伝子とは異なるニュートラルローカス部位に遺伝子導入し肝内期原虫にて発現させ、免疫沈降法により相互作用するタンパク質を回収する。現在newgap1のORF内部にタグ付加配列を挿入し、推定機能ドメインを部分的に欠損したコンストラクトを複数作製中であり、これらを比較検討する事で実験の精度を高める。LC-MS/MSなどによる質量分析により陽性タンパク質の同定を試みることで、PVMを中心とした原虫‐宿主間の“鬩ぎ合い”におけるPVMの役割など機能解明に迫る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、申請者が所属する講座研究費などを用いて消耗品を購入し研究を行ったため、多大な費用を使用せずに研究を推進する事ができた。しかし次年度は、これらの結果をふまえ研究を展開するため初年度よりも多くの研究費を必要とする可能性が高い。特に分子間相互作用を解析する実験、LC-MS/MS解析、in vivo解析などは比較的高価な物品や消耗品などを必要とするので、初年度に計上した研究費を次年度に繰り越し使用する予定である。 RNAiによるin vitro解析を行い、肝内型原虫がハイジャックする候補分子の絞り込みを試みる。Atg応答の異なる段階で作用する候補分子Atg7、Beclin1、UVRAG、WIPI2、Stx17、LAMP1などを各々ノックダウンし、宿主LC3の原虫への集積や肝内型原虫の生育などを比較する。肝内型原虫のPVM分子、PVMと相互作用する宿主分子を網羅的に同定するため、新たにnewgap1タグ付加コンストラクトをし、内在newgap1とは異なる部位に遺伝子導入し肝内期原虫にて発現させ、免疫沈降法により相互作用するタンパク質を回収する。LC-MS/MSなどによる質量分析により陽性タンパク質の同定を試みることで、PVMを中心とした原虫‐宿主間の分子相互作用におけるPVMの役割など機能解明に迫る。これらの実験に使用する物品、消耗品などに使用する予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Two Plasmodium 6-Cys family-related proteins have distinct and critical roles in liver-stage development.2014
Author(s)
Annoura T, van Schaijk BC, Ploemen IH, Sajid M, Lin JW, Vos MW, Dinmohamed AG, Inaoka DK, Rijpma SR, van Gemert GJ, Chevalley-Maurel S, Kiełbasa SM, Scheltinga F, Franke-Fayard B, Klop O, Hermsen CC, Kita K, Gego A, Franetich JF, Mazier D, Hoffman SL, Janse CJ, Sauerwein RW, Khan SM.
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Journal Title
FASEB J.
Volume: 28(5)
Pages: 2158-70.
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 肝内型マラリア原虫の寄生胞膜形成;新たな特異分子“B9”の役割2014
Author(s)
案浦健, van Schaijk BC, Ploemen IH, Sajid M, Franke-Fayard BM, 稲岡ダニエル健, 北潔, Mazier D, Hoffman SL, Sauerwein RW, Heussler VT, Janse CJ, Khan SM, 嘉糠洋陸
Organizer
第83回 日本寄生虫学会大会
Place of Presentation
愛媛大学
Year and Date
20140326-20140328
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[Presentation] New members of the Plasmodium 6-Cys family have distinct and critical roles2014
Author(s)
Takeshi Annoura, Ben C.L. van Schaijk, Ivo H.J. Ploemen, Mohammed Sajid, Daniel K. Inaoka, Geert-Jan van Gemert, Severine Chevalley-Maurel, Blandine M.D. Franke-Fayard, Audrey Gego, Kiyoshi Kita, Dominique Mazier, Stephen L. Hoffman, Chris J. Janse, Robert W. Sauerwein, Hirotaka Kanuka and Shahid M. Khan
Organizer
第3回 感染症若手フォーラム
Place of Presentation
やすらぎ伊王島
Year and Date
20140213-20140215
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[Presentation] 肝内型マラリア原虫-宿主間“せめぎ合い”メカニズムの解明2013
Author(s)
案浦健, van Schaijk BC, Ploemen IH, Sajid M, Franke-Fayard BM, 稲岡ダニエル健, 北潔, Mazier D, Hoffman SL, Sauerwein RW, Heussler VT, Janse CJ, Khan SM, 嘉糠洋陸
Organizer
第36回 日本分子生物学会
Place of Presentation
神戸ポートアイランド
Year and Date
20131203-20131206
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[Presentation] 肝内型マラリア原虫特異的分子“B9”と寄生胞膜に果たす役割2013
Author(s)
案浦健, van Schaijk BC, Ploemen IH, Sajid M, Franke-Fayard BM, 稲岡ダニエル健, 北潔, Mazier D, Hoffman SL, Sauerwein RW, Heussler VT, Janse CJ, Khan SM, 嘉糠洋
Organizer
第11回 分子寄生虫・マラリア研究フォーラム
Place of Presentation
長崎大学
Year and Date
20131002-20131003
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[Presentation] 肝内型マラリア原虫;寄生と共生の境界2013
Author(s)
案浦健, van Schaijk BC, Ploemen IH, Sajid M, Franke-Fayard BM, 稲岡ダニエル健, 北潔, Mazier D, Hoffman SL, Sauerwein RW, Heussler VT, Janse CJ, Khan SM, 嘉糠洋
Organizer
第2回 日本細胞共生学会 若手の会
Place of Presentation
京都大学
Year and Date
20130921-20130922
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[Presentation] 肝内型マラリア原虫特異的分子“B9”と寄生胞膜に果たす役割2013
Author(s)
案浦健, van Schaijk BC, Ploemen IH, Sajid M, Franke-Fayard BM, 稲岡ダニエル健, 北潔, Mazier D, Hoffman SL, Sauerwein RW, Heussler VT, Janse CJ, Khan SM, 嘉糠洋陸
Organizer
第21回分子寄生虫学ワークショップ
Place of Presentation
神戸セミナーハウス
Year and Date
20130825-20130828
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