2013 Fiscal Year Research-status Report
百日咳菌の環境適応戦略:単一塩基リピート長に影響を与える因子の解析
Project/Area Number |
25860328
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
大塚 菜緒 国立感染症研究所, 細菌第二部, 主任研究官 (90596610)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 百日咳菌 / fimbriae / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
百日咳菌の線毛遺伝子(fim2, fim3)発現は、各遺伝子のプロモータ領域に存在するpoly(C) 配列(またはC-stretchと呼ばれる) 長の影響を受けることが知られている。百日咳菌は単一コロニー内でも様々なpoly(C)長をもつ個体の「集団」として存在するため、様々な環境因子がfimbriae発現およびpoly (C)長分布に与える影響を評価する簡便な手法:PCR/LDR法を構築した。まず、Fim3産生国内臨床分離株を親株として、一定の条件下での継代培養により、遺伝子組換えの操作なくFim3産生能を欠損した変異株を分離した。PCR/LDR法によりFim3産生株およびFim3非産生変異株のPfim3 poly(C)長分布を測定および比較したところ、Fim3非産生株ではpoly(C)長の分布が13~14Cから12~13Cへピークが移行していることが明らかとなった。同様のことがIllumina Miseqを用いた全ゲノムシーケンス解析でも確認された。すなわち、当該菌株ではPfim3 poly(C)長が13Cを境に12C以下でfim3遺伝子発現OFF、14C以上でONとなることが示唆された。また、このPfim3 poly(C)長分布の変化の影響はELISA測定により、Fim3タンパク質産生レベルまで反映されることが明らかとなった。次に、Pfim3 poly(C)長に影響を与える環境因子の探索として、まずは2種類の生育培地で比較した。Fim3産生株をcyclodextrin solid medium (CSM)培地で培養した場合、馬脱繊血加BG寒天培地で培養した場合に比べて、Pfim3に短鎖のpoly(C)を有する個体が増加することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pfim3 poly(C)長分布の簡便な測定方法として、PCR/LDR法の構築を計画していたが、本法は単一ヌクレオチド長が長くなるほど困難になることが予想された。そこでまず、比較的短いpoly(C)配列を有することが知られるbvgS遺伝子に対して系の構築を試みた。その結果、百日咳菌virulent phase株では6Cであったのに対し、avirulent phase株として保存されていた百日咳菌2株では7Cとなり、その結果stop codonが形成されていることが確認された。同様に、Pfim3 poly(C)に対しても問題なく系の構築に成功した。これにより、設定条件ごとのPfim poly(C)長分布を次世代シーケンス解析などに頼らず簡便に測定することが可能となった。Fim3産生株ではbvgモジュレーターであるMgSO4およびニコチン酸によるPfim3 poly(C)長分布への影響は認められなかったが、Fim非発現変異株では延伸傾向が認められた。またFimタンパク質産生の検出には従来よりモノクローナル抗体(mAb)を用いた凝集反応が用いられてきたが、本研究ではBiotinラベルmAbを用いたELISA測定系を構築した。これにより、定量的にFimタンパク産生が測定できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
国内臨床分離百日咳菌は近年97%以上がFim3のみを産生する菌株となっているため、初年度はPfim3 poly(C)長分布への影響を優先して解析してきた。今後はfimbriae発現制御メカニズムを全般的に理解するために、Pfim2 poly(C)の測定系も構築する。また、Fimタンパク質産生測定のELISAに加えて、mRNAレベルでの解析も必要と考えられるため、qRT-PCRを行うことも計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予想していたよりも実験系がスムーズに構築でき、費用が節約できたため 当初の研究計画になかったqRT-PCRやPfim2の解析に使用する。
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Research Products
(2 results)