2013 Fiscal Year Research-status Report
Ag85Bとミコール酸の融合分子による新規ワクチン開発
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25860332
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japan BCG Laboratory |
Principal Investigator |
清原 秀泰 (小濱 秀泰) 日本ビーシージー製造株式会社(日本BCG研究所), その他部局等, 研究員 (10514581)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 結核 / 組換えタンパク / 脂質 / ワクチン |
Research Abstract |
本課題では、平成25年度に「Ag85B抗原及びアミノ化ミコール酸(MA)分子の作製と確認」と「Ag85B-MA融合分子の作製と免疫活性化能の評価」の実施を計画していた。抗原Ag85Bに関しては大腸菌発現系を用いて高効率にAg85B抗原を作製する事に成功したが、アミノ化MA分子の作製に関しては想定外の問題が生じた。具体的には、MAとN-(6-aminohexyl)-2,2,2-trifluoroacetamide(Hx-TFA-amine)の縮合反応は効率良く反応が進んでいることが薄層クロマトグラフィーで確認されたのだが、その後のNaOHを用いたTFA基の脱保護反応が上手く進行しなかった。本反応では、水系溶媒の温和な条件でのみ反応が進むことが判明しており、反応に用いた保護体は親油性度が非常に高かった為、反応が進まなかったと考えられた。また、反応効率を上げるために高温化での本反応を行った結果、前ステップで縮合したアミド基が分解し原料であるMA及びHx-TFA-amineに戻ってしまうことがTLC分析により確認された。従って、本反応でアミノ化MAを得ることを断念し、新たにスキームを再構築した。この新規の作製法では、まずジフェニルリン酸アジド試薬を用いてMAのカルボキシ基部分へのイソシアナート化(Ninomiya et al., Tetrahedron 1974, 30, 2151-2157.)を行い、その後、加水分解によりカルバミン酸を経てアミノ基への置換を試みた(MA-amine)。その結果、作製したMA-amineは薄層クロマトグラフィー、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析そしてリポソーム化時のΖ電位の陽転により正しくアミノ化されている事が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題において、最も難しい問題はMAを化学修飾する事によりカルボキシル基からアミノ基に置換することであった。しかし、このMAのカルボキシル基のアミノ基への置換は、作製法を部分的に変更することによって達成され、より簡便かつ高効率にアミノ化MAを得る事が出来るようになった。 当初の目的では「Ag85B抗原及びアミノ化MA分子の作製と確認」そして「Ag85B-MA融合分子の作製と免疫活性化能の評価」を平成25年度に達成する予定であったが「Ag85B抗原及びアミノ化MA分子の作製と確認」は達成されたが「Ag85B-MA融合分子の作製と免疫活性化能の評価」は達成できなかった。上述の通り、アミノ化MA作製法の改良点を模索した為、交付申請書作成時より達成状況がやや遅れることになったが、本課題の申請時手法よりも簡便かつ高効率にアミノ化MAを得ることが出来る新手法を見出すことができた為、平成26年度にアミノ化MAを大量に必要とする動物実験が控えている事を踏まえると、課題の総合的な達成状況としてはむしろ進展したものと考えられる。更に、平成25年度の研究においてMAの可溶化法に関しても新たな知見が得られた為、これまで想定していたMAのリポソーム化と比較してより簡便かつ高効率なMAの可溶化法が構築でき、今後の研究はより迅速に進める事が可能になった。 以上のような理由から、平成25年度に「Ag85B抗原の作製及びアミノ化MA分子の作製と確認」に成功し「Ag85B-MA融合分子の作製と免疫活性化能の評価」には至らなかったが、当初想定していた方法より簡便かつ高効率なアミノ化MA作製法およびMA可溶化法という有用な知見が得られたため、研究計画全体としては当初とほぼ同等の進展状況と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には「Ag85B抗原及びアミノ化MA分子の作製と確認」を完了した為、平成26年度は「Ag85B-MA融合分子の作製と免疫活性化能の評価」及び「Ag85B-MA融合分子ワクチンの感染防御効果の確認」の研究を推進する。具体的には、架橋試薬SPDPを用いて水系の溶媒中でAg85BおよびMA-aminを反応させることによりAg85B-MA融合分子を作製し、その分子融合の確認を行う。当初の計画では、anti-Ag85B抗体をプレートに固層化してサンドイッチELISA法に供し、融合したMAをanti-MA抗体によって検出する予定であった。しかし、平成25年度の研究において我々が所有しているanti-MA抗体がMAのカルボキシル基を認識している事が判明した為、MAのカルボキシル基をアミノ化しているMA-amineおよびAg85B-MAの検出が不可能になった。従って、今後はAg85B-MA融合分子の形成確認は、Ag85B-MA融合分子をSDS-PAGE後にWestern blottingに供し、anti-Ag85B抗体によって検出してAg85Bに融合したMAによる分子量の増加を測定することにより確認する。また、前述の方法に合わせて、Mass SpectrometryおよびEllman’s試薬によるAg85B-MA融合分子中のシステイン残基の測定による補足的な確認も行う。融合分子が確認された後は、当初の計画通りマウスへのAg85B-MA融合分子の免疫を行い、血清中のanti-Ag85B抗体の確認、脾臓細胞のAg85B刺激によるT細胞応答の確認、そしてAg85B-MA融合分子ワクチンの感染防御効果の確認を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本課題では、平成25年度内に「Ag85B抗原及びアミノ化MA分子の作製と確認」と「Ag85B-MA融合分子の作製と免疫活性化能の評価」を達成する予定であったが、アミノ化MA分子の作製段階において想定外の問題により計画を変更する必要が生じた。この問題は、MAの化学修飾スキームを部分的に変更することにより克服されたが、研究計画申請時の想定よりアミノ化MA分子の作製に時間がかかってしまった。その結果、本課題の申請時には平成25年度内に着手するはずであった「Ag85B-MA融合分子の作製と免疫活性化能の評価」に取組む時期が平成26年度にずれ込んでしまい、それに伴い「Ag85B-MA融合分子の作製と免疫活性化能の評価」に使用する予定であった試薬・実験器具・実験動物の費用を平成26年度に使用することになった為。 平成25年度に「Ag85B抗原及びアミノ化MA分子の作製と確認」を達成し、更に課題申請時に想定していた手法よりもより高効率にAg85B抗原及びアミノ化MA(MA-amine)を作製する方法とMAを可溶化する方法を見出した為、総合的な研究スケジュールに遅延は生じない事が予想される。今後、平成26年度には本課題の申請時の総合的な計画通り「Ag85B-MA融合分子の作製と免疫活性化能の評価」及び「Ag85B-MA融合分子ワクチンの感染防御効果の確認」に着手する為、平成25年度に使用する予定だった「Ag85B-MA融合分子の作製と免疫活性化能の評価」に関する試薬・実験器具・実験動物の費用を次年度使用額を平成26年度使用額に追加する形で使用する。
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