2013 Fiscal Year Research-status Report
プラス鎖RNAウイルス感染時におけるオートファジーの役割と分子基盤の解明
Project/Area Number |
25860339
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田端 桂介 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教(常勤) (40569018)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / フラビウイルス / アルファウイルス |
Research Abstract |
本研究では、プラス鎖RNAウイルス感染時におけるオートファジー誘導の生理的意義やその分子機構を明らかにすることを目的とする。本年度は計画に従って、(1)オートファジー阻害による以下のウイルスの増殖への影響を調べた。また平成26年度実施予定の(2)ウイルス感染によるオートファジー誘導の分子機構を解析していく中で有用になるツールの開発に成功した。 (1-1)フラビウイルス科、フラビウイルス属、日本脳炎ウイルス オートファジー関連遺伝子(Atg16L1、FIP200、p62)欠損細胞を用いてウイルス増殖への影響を調べたところ、ウイルス増殖の遅延および低下が観察された。このことからフラビウイルスの宿主細胞内増殖において、オートファジーが必要であることが示唆された。 (1-2)トガウイルス科、アルファウイルス属、シンドビスウイルス (1-1)と同様に、オートファジー関連遺伝子(Atg16L1)欠損細胞を用いてウイルス増殖への影響を調べたところ、ウイルス増殖が亢進した。このことからアルファウイルスが宿主細胞内分解機構であるオートファジーによって除去されている可能性、もしくはオートファジーがアルファウイルスの増殖を何らかの形で抑制している可能性が考えられる。 (2)ニュージーランドのグループとの共同研究により、LC3とAtg13が直接結合することを発見し、共結晶を取得後、結合様式を詳細に解析した(Structure 2014)。その結果LC3のLys49が結合に重要であり、Lys49をAlaに変換した変異体では定常状態のオートファジー活性および細菌感染時の選択的オートファジーが全く見られなくなった。一方、この変異体は飢餓誘導性のオートファジー活性にはあまり影響しないことから、選択的オートファジーを検出できるツールとして用いることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施の概要にも記載したが、オートファジー活性阻害時のウイルス増殖への影響を解析する手段としてオートファジー関連遺伝子欠損細胞を用いて解析を行い、ウイルス増殖におけるオートファジーの重要性が示された。ここで得られた結果を再確認するために別の阻害方法として今後Atg4Bの変異体の過剰発現やオートファジー阻害剤の影響を観察する必要がある。またオートファジー活性を亢進させるような薬剤処理や定常的に亢進している細胞を用いることによるウイルス増殖への影響も確認しておきたい。これらの確認実験が未検討であるが、研究の出発点であるウイルス増殖におけるオートファジー活性の重要性が確認できたことが大きな成果である。また来年度実施予定の分子機構の詳細な検討を進めて行く上で有用な選択的オートファジーを検出できるツールを開発した。この発見は当初の予定にはなかったものだが、今後の研究課題解明に役立つことが期待されることから、達成度に貢献していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
計画では、2年目にウイルス感染によるオートファジー誘導の分子機構解明に向けて取り組むことにしている。研究実施の概要に記載したように、ウイルス感染時のオートファジーの役割といってもフラビウイルスとアルファウイルスでは異なるので、それぞれの場合において、ウイルス感染時のLC3輝点形成を、野生型のLC3と先述の選択的オートファジー能欠損LC3変異体を用いて調べる予定である。また平成25年度中に実施できなかったAtg4Bの変異体の過剰発現やオートファジー阻害剤の影響を観察する予定である。さらにオートファジー活性を亢進させるような薬剤処理や定常的に亢進している細胞を用いることによるウイルス増殖への影響も確認する予定である。
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