2013 Fiscal Year Research-status Report
濾胞性ヘルパーT細胞の抗原特異性が腸管IgA産生に与える影響の検討
Project/Area Number |
25860375
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
河本 新平 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (40612081)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | IgA / パイエル板 / 濾胞性ヘルパーT細胞 / 腸内細菌 |
Research Abstract |
腸管IgAは、腸管免疫系を含めた全身の免疫恒常性維持において重要な役割を果たしていることが明らかとなりつつあり、腸管IgAの産生メカニズムの解明は炎症性腸疾患の治療法の新規確立や経口ワクチンの開発などの臨床医学的な応用につながる非常に重要な研究課題である。腸管IgAは、主にパイエル板において濾胞性ヘルパーT細胞(以下、TFH細胞)と呼ばれるT細胞依存的に産生されることが知られているものの、このT細胞が腸管IgA産生にどのように関与しているのかについては不明な点が多い。そこで本研究では、単一のパイエル板TFH細胞に由来するT細胞レセプター(以下、TCR)をすべてのT細胞が有しているTFH細胞クローンマウスを解析することで、TFH細胞の抗原特異性が腸管IgA産生にどのような影響を与えているのかについて明らかにすることを目的とした。 本年度は、TFH細胞クローンマウスのTCRレパトアの一部を明らかにした。α鎖及びβ鎖から構成されるTCR特異性は、一般的にVα、Jα、Vβ、Dβ、Jβの遺伝子再編によって決定される。そこでまず、フローサイトメトリーを用いた解析により簡便に検討することが可能なVβ鎖の検討を行った。その結果、TFH細胞クローンマウスにおいてVβ6鎖が選択されていることがわかった。さらに、TFH細胞クローンマウスの解析を行ったところ、腸管特異的に二次的なTCR再編成を行うことにより、一部のT細胞が異なるVβ鎖に変化していることが明らかとなった。さらに、Vβ鎖を変化させたT細胞は、もとのVβ6+T細胞と比較してIL-17などの炎症性のサイトカインを産生していた。以上のことから、腸管内の抗原刺激により末梢においても二次的なTCR再編成が行われ、さらにTCR再編成によりVβ鎖を変化させたT細胞は性質の異なるT細胞サブセットに分化している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、TFH細胞クローンマウスにおけるT細胞レセプター(以下、TCR)のレパトアの一部を明らかにできたとともに、TFH細胞クローンマウスのもつ興味深い表現型も明らかにすることができた。よって、当初の研究計画に沿っておおむね順調に研究が進んでいると考えている。 現在、TFH細胞クローンマウスにおけるIgA及び腸内細菌叢の詳細な解析が進んでおり、研究目的であるT細胞の抗原特異性が腸管IgA及び腸内細菌制御へもたらす影響に関して、今後一部明らかにすることができると考えている。ただ、当初想定していた以上にTFH細胞クローンマウスにおいてTCRレパトアが腸管内において変化していることが明らかとなったので、TCRレパトアを固定するためにRAG欠損マウスとのかけ合わせを行うなどTCRレパトアを固定するための対策を講じると共に、この非常に興味深い現象に関しても詳細な解析を行う必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していたTFH細胞クローンマウスにおける腸管IgA産生の質的かつ量的な変化の解析をフローサイトメトリーやシークエンス解析を用いて行う予定である。また、我々のこれまでの研究から腸管IgAの質的変化が腸内細菌叢の変化につながることが明らかとなっているので、腸内細菌叢の構成の変化を次世代シークエンサーを用いた腸内細菌の16S rRNAシークエンス解析を行うことで検討する予定である。これらの解析から、TFH細胞の抗原特異性が腸管IgA産生および腸内細菌叢にどのような変化をもたらすのかについて明らかにしていく。 ただ、これまでの解析より、TFH細胞クローンマウスにおいて腸管特異的に二次的なT細胞レセプター(以下、TCR)再編成が行われ、TCRの特異性が一部変化している可能性が示唆された。そこで、TFH細胞クローンマウスとRAG欠損マウスをかけあわせることでRAG欠損TFH細胞クローンマウスを作製し、このマウスより単離したT細胞をT細胞欠損マウスに移入する系を用いることで、厳密にTCRが固定された状態における腸管IgAおよび腸内細菌叢の変化の検討も行う計画である。また同時に、TFH細胞クローンマウスにおいて見られる腸管特異的な二次的TCR再編成が、どのようなメカニズムで行われているのかについても検討を行う予定である。具体的には、抗生物質を投与したTFH細胞クローンマウスを解析することで、二次的TCR再編成における腸内細菌叢の影響を検討する。さらに、さまざまな種類の抗生物質を組み合わせて投与することで、どの種の腸内細菌が二次的TCR再編成に影響を与えているのかについても明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画していたTFH細胞クローンマウスの解析に使用する予定であったマウス及び試薬の購入費用が少なくてすんだこと、さらに参加予定であった学会出張をキャンセルしたことで旅費に余裕が生じたため。 次年度の研究計画では、試薬代が嵩むシークエンス解析(腸管IgA及び腸内細菌叢の解析)を大量に行う予定である。そこで、これらの実験の試薬代として繰り越された研究費を主に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)