2014 Fiscal Year Research-status Report
心理特性を踏まえた個別化した情報支援のあり方に関する研究
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25860388
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
浦久保 安輝子 独立行政法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 研究員 (20602824)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | がん / 情報提供 / 意思決定 / アドバンス・ディレクティブ / Advance Care Planning |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、医療分野でさまざまな形態の意思決定支援ツール(Decision Aids)が欧米を中心に開発されている。Decision Aidsは、互いに優位性がない2つ以上の選択肢がある状況で、患者が自身の価値観と照らし合わせながら優先順位を明確にすることや、医療者とのコミュニケーションをサポートする仕組みになっており、特にエビデンスに基づく情報が限られている状況や終末期治療の場面などでニーズが高いとされる。 そこで、本研究はがん医療で活用できる意思決定支援ツールの方向性を明らかにすることを目的とし、本年度は、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning、以下、ACP)に関して欧米で用いられている11の意思決定支援ツールのレビューを行った。これらはウェブもしくはPDF版冊子であり、いずれもオンラインでアクセスが可能なものである。 内容分析の結果、共通項として含まれる内容は、Living Will、代理人指定、延命治療、臓器提供、緩和ケア、療養場所など、医療・ケアに関するものが主であったが、宗教、人生観・価値観、最期のケア、他の患者の体験談などの多様な項目が含まれ、内容の比重はツールによって異なった。 一方、International Patient Decision Aid Standards (IPDAS)による意思決定支援ツールの評価基準と照合すると、意思決定に必要な中立的かつ詳細な情報提供や、段階的な意思決定を積み重ねていく構造的アプローチは多くのツールで不足していた。特に、多くのツールが、目的として「医療者や周囲とのコミュニケーションを促すこと」を明記していたが、コミュニケーションのための具体的かつ個別的なアプローチは十分ではなかった。 今後、ACP領域で高水準の日本語版意思決定支援ツールを作成・普及するために、具体的な対象者を設定した上で、ツールに関する患者・医療者のニーズの検討と、活用場面・普及方法の検討などが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年計画の2年目である。当初、2年目に医療者を対象としたインタビューを行う予定だったが、既存のツールの系統的レビューを行うことでより有益な情報を得られると判断した。この点が、当初の計画と異なる点であり、現在までの達成度は「おおむね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ACPに関する意思決定支援ツールについての系統的レビューを進める。また、医療者・患者へのニーズ調査や、活用場面・普及方法の検討などを行い、日本語版意思決定支援ツール作成の実現性について検討を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、本年度は系統的レビューを集中して行ったため、ヒアリング調査等の予算が未使用となっためである。また、本研究に関する学会発表等の機会が少なく、予定していた旅費の支出が抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に系統的レビューのための情報収集および資料作成費、ヒアリング調査費等に用いる予定である。
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