2013 Fiscal Year Research-status Report
関節リウマチ患者登録システムと保険データベースによる分子標的治療薬の薬剤疫学研究
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25860390
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
酒井 良子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30631981)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 薬剤疫学 / 安全性 / レジストリー / 前向きコホート研究 / 関節リウマチ / 生物学的製剤 / 抗リウマチ薬 / 保険データベース |
Research Abstract |
1. REALデータベースを用いて、トシリズマブ(TCZ)使用患者群の重篤な有害事象(SAE)の発生頻度をTNF阻害薬(TNFI)使用患者群と比較し、SAEおよび重篤な感染症(SI)のリスクを比較した。解析対象症例は、TCZの投与を開始された患者(TCZ群、n=302)、および2008年以降にTNFIの投与を開始された患者(TNFI群)とした。その結果、SAE及びSIの発生率比(TCZ vs. TNFI)は1.5[95%CI0.9-2.3]、3.5[1.5-8.2]であり、TCZ群の方がTNFI群と比較してSIの発生率が有意に高かった。TNFI群に対するTCZ群のSAEおよびSIのリスクはハザード比1.3 [95% CI 0.8-2.2]、2.2[0.9-5.4]だった。本研究は実臨床において、TCZとTNFIを直接比較した初めての報告であり、生物学的製剤を正しく選択するための有用な情報となることが期待される。 2. 日本における分子標的治療薬使用RA患者に関するアウトカム研究(CORRECT)のwebシステムを管理し、患者登録を進め、登録患者数は平成26年3月時点で396名となった。平成25年12月までにデータが固定された患者286名(TT曝露群:150名、TT非曝露群:136)名の患者背景の記述統計を実施した。 3. 保険データベースを用いて、RA群(2762名)と非RA群(27620名)での合併症有病率を解析した。調査対象の各合併症の有病率(RA vs. 非RA)は、狭心症(4.5% vs. 1.2%)、急性心筋梗塞(0.4% vs. 0.1%)、虚血性心疾患(5.0% vs. 1.4%)、糖尿病(6.0% vs. 2.5%)、骨粗鬆症(19.9% vs. 1.2%)といずれの合併症においてもRA群の方が非RA群と比較して有意に高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
REALを用いたTCZ使用患者とTNFI使用患者群の安全性の比較は、予定していた解析を全て終了した。保険データベースを用いた研究に関しては、RAにおける薬剤別の安全性解析を計画していたが、まずは保険データベースに登録されているRA症例の全体像を把握する必要があると判断し、各種合併症の有病率をRAと非RAで詳細に解析した。したがって、本研究課題は総合的には概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. REALデータベースを用いて、早期RA患者と長期罹患患者の安全性を比較検討する。解析対象症例は、REALのフォローアップデータが得られた患者のうち、生物学的製剤が一度でも投与された患者とし、生物学的製剤開始時のRA罹病期間が2年以内の患者を早期RA患者(early RA), E群とし、それ以外の症例は長期罹患患者(long-standing RA), L群とする。解析対象期間は生物学的製剤開始から3年、死亡、追跡中止日までとする。解析対象症例の背景因子を記述し、報告されたSAEを分類したのち、SAEの発現率および内容を両群で比較する。次に、E群およびL群におけるSAE発現者と非発現者における背景因子の比較を行い、リスクとなる候補因子を探索する。時間依存性変数は観察期間内における変化とSAEの発現時期を考慮し、最も適切な統計学的モデルを構築する。 2. CORRECTデータベースは、平成25年度に引き続きデータベースの充実化を促進させ、十分な症例数が確保されたのち、治療群間の登録時データや疾患活動性、SAEの発現頻度および内容を比較する。また、有効性に関しても患者の身体機能評価の指標も含めて比較検討する。 3. 保険データベースを用いた研究に関しては、RAにおける薬剤別の安全性解析実施する前に、まずはRA症例の全体像を把握する必要があると判断した。最新の保険データベースを用いて対象患者数を増やし、RA症例における各種合併症(心血管系疾患、糖尿病、骨粗鬆症など)の有病率を再度検討し、今年度の結果と比較する。また、最長3年間の入院イベントの内容および発生率をRA症例と非RA症例で比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は概ね当初の計画通り、研究を実施したが、一部、研究内容を修正したため、費用が余った。 第一の研究である、REALデータベースを用いた、早期RA患者と長期罹患患者の安全性の比較検討において、必要事務用品の購入費、統計解析費、論文作成にかかる費用として使用する計画である。第二の研究である、CORRECT研究においては、データベースのサバー管理費として使用する計画である。また、REAL/CORRECT研究会議において研究参加施設とのミーティングを行うための旅費としても使用する計画である。第三の研究である、保険データベースを用いた研究に関しては、統計解析費および学会発表の際の出張費として使用する計画である。
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