2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞内タンパク分解系を標的とした多発性骨髄腫の新規治療法の開発
Project/Area Number |
25860398
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
森谷 昇太 東京医科大学, 医学部, 助手 (30634935)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 骨髄腫 / オートファジー / プロテアソーム / 小胞体ストレス / ボルテゾミブ / マクロライド / クラリスロマイシン / CHOP |
Research Abstract |
ボルテゾミブ (BZ)は2003年にFDAで認可された骨髄腫の治療薬であり、26Sプロテアソームの阻害効果を持つ。かつて骨髄腫は3年生存を目標とするほど予後の悪い疾患であったがプロテアソーム阻害剤の登場により長期生存を視野に入れた治療が可能となった。しかし、骨髄腫が完治不能であることは依然変わらず、革新的な治療法の開発が求められている。 我々は、骨髄腫細胞株においてBZ がオートファジーを誘導することおよび、BZとオートファジー阻害剤 Bafilomycin A1を併用添加すると殺細胞効果が相乗的に増強することを発見した。 しかし、現在のところ臨床認可されているオートファジー阻害剤は存在しない。一方近年、臨床で日常使用されているマクロライド系抗生剤であるクラリスロマイシンにオートファジー阻害作用があることが報告された。 そこで本研究ではまず、骨髄腫細胞株を用いて、臨床使用されている各種マクロライドのオートファジー阻害効果の評価および、BZとの併用添加培養を行い殺細胞効果増強の有無を検討した。 骨髄腫細胞株にエリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンを添加すると、ウエスタンブロッティング法において、オートファゴソームマーカーであるLC3B-IIの発現上昇が見られ、またオートファジーの基質マーカーであるp62の蓄積が見られた。このことから、これらマクロライドのオートファジー阻害効果が確認された。また、BZとこれらの併用投与を行うと著しい殺細胞効果の増強が見られ、小胞体ストレス性転写因子CHOPの発現増強が認められた。なお、この殺細胞効果の増強はChopを欠損したマウス線維芽細胞株では抑制される傾向にあった。 以上のことからBZによってプロテアソーム系を、マクロライドによりオートファジー系を阻害することで小胞体ストレス負荷の増大を伴う骨髄腫の殺細胞効果の増強が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンといった臨床で日常使用されているマクロライド抗生剤による骨髄腫細胞株へのオートファジー阻害効果が認められた。またBZとの併用において骨髄腫細胞株への殺細胞効果の増強、小胞体ストレス負荷の増強が認められた。 そのため、本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究において、骨髄腫細胞株にボルテゾミブとクラリスロマイシンを同時添加することにより細胞内に異常タンパク凝集体であるアグリソームの形成が示唆される結果を得た。アグリソームとは不良タンパクの細胞内蓄積に対して“細胞保護的”に形成されるものと考えられており、この形成にはヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)が必須であることが報告されている(Kawaguchi Y, Cell. 2003)。 そこで今後は、BZによってプロテアソーム系を、CAMでオートファジー系を、さらにHDAC6阻害活性を有するボリノスタット(SAHA)によってアグリソーム形成を同時に阻害することで、骨髄腫に対して小胞体ストレス負荷増大による殺細胞効果の増強が得られるか検討を進める予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の主な支出品目は細胞培養に必要なプラスチック消耗品類や、培地、および各種解析試薬である。これら品目を全て支出した後に直接経費残金が105円となった。 本研究で日常的に使用する最も安価な消耗品は培地(単価約1,000円)であるが、現状の残金では購入費に充てることが不可能であり、次年度使用額として繰り越すことが適切と判断した。 繰越金は次年度予算と合算し、細胞培養に必要なプラスチック消耗品類や、培地、および各種解析試薬の購入費に充てる予定である。
|
Research Products
(8 results)