2013 Fiscal Year Research-status Report
骨髄ニッチを再現した低酸素環境での白血病幹細胞の病態解析に基づく分子標的治療
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25860404
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
伊藤 真以 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70415545)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 白血病 / 低酸素 / 骨髄ニッチ |
Research Abstract |
白血病は、正常造血幹細胞が腫瘍化した白血病細胞が、正常造血幹細胞の増殖能を上回る自己複製能を獲得し、無制限に白血病細胞の増殖をきたす疾患である。治癒率の向上には、単なる白血病細胞の増殖抑制だけではなく、白血病幹細胞を制御する治療戦略が必要である。そのため、自己複製能を獲得した白血病幹細胞が、低酸素環境下である骨髄微小環境(骨髄ニッチ)で増殖し続ける機構を解析することが重要である。 25年度は、白血病細胞株に対し、細胞の低酸素応答に重要な転写因子であるHIF(Hypoxia-inducible factor)蛋白の発現と、造血幹細胞の自己複製能の制御に関わるNotch、mTOR、NF-κBシグナルとの関連について、低酸素培養による時系列の作用を調べた。その結果、mTOR上流のAktは、低酸素により活性化される傾向を示したが、その他のシグナルは抑制される傾向にあった。また、Notchシグナルの標的遺伝子であるHES1の発現は、HIF蛋白の持続的な発現にも関わらず、ネガティブフィードバック機構が働く細胞株があることが分かった。更に、他のグループから、低酸素によって発現が誘導されるHIF蛋白が、活性型Notch蛋白との相互作用によりNotchシグナルを活性化させるとの報告があるが、Notchシグナルを強制的に活性化させた場合も低酸素培養によりNotchシグナルは抑制されることが分かった。 造血幹細胞が存在する低酸素環境で示す、以上のような細胞の反応を踏まえ、骨髄において白血病幹細胞が正常造血幹細胞の増殖能を上回る自己複製能を獲得する分子機序を、骨髄ニッチを再現した低酸素環境にて明らかにし、白血病幹細胞の病態解析に基づく分子標的治療の開発を目指す。骨髄ニッチの構成成分を標的とした分子標的治療戦略が開発できれば、白血病幹細胞の根絶への可能性が高まると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白血病細胞を用い、低酸素環境下における自己複製能を制御するシグナルに関する研究が、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、低酸素応答によるHIF蛋白の発現と他のシグナルとの関連を調べてきた。今後は、阻害剤やsiRNAを用いてHIF蛋白の発現を抑制することにより、HIF蛋白との作用を調べる予定である。 また、25年度までは主に白血病細胞株を使用してきたが、今後は健常人から正常血液細胞を分離して同様の実験を行い、白血病細胞で見られた現象との差異を調べる。 骨髄ニッチを再現する方法として、Notchリガンドをコーティングした培養プレートを用いて、低酸素培養装置にて細胞培養を行ったが、Notchリガンドだけでは白血病細胞株の自己複製能は亢進しないことが分かった。そのため、今後は骨芽細胞など骨髄支持細胞を底面にコーティングした培養プレートを用いて、白血病細胞株との共培養を試み、自己複製能の亢進が認められる否かを検討する予定である。
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Research Products
(7 results)