2013 Fiscal Year Research-status Report
若年性骨髄単球性白血病患者のiPS細胞を用いた疾患特異的マーカーと治療薬の同定
Project/Area Number |
25860405
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松田 和之 信州大学, 医学部附属病院, 主任臨床検査技師 (00647084)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 若年性骨髄単球性白血病 / iPS細胞 / センダイウィルス / 白血病治療薬スクリーニング |
Research Abstract |
本研究の目的は、Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycの4因子を搭載したセンダイウィルスベクターを用いて、若年性骨髄単球性白血病(JMML)患者からiPS 細胞を樹立し、白血病性幹細胞(LSCs)等を含む異なる成熟段階の血液細胞群を分化誘導する。そして、白血病治療薬の抗白血病効果・薬剤応答について解析し、LSCsを効率よく除去できる特異性の高い白血病治療薬をスクリーニングすることである。 25年度の研究成果として、遺伝子変異を有するJMML患者2名(NRAS codon12 GGT>GAT例、PTPN11 226G>A例)を対象として、各患者からCD34陽性細胞とT細胞を分離し、センダイウィルスベクターを用いてiPS細胞への誘導を行った。誘導を行った細胞(現段階では、iPS(様)細胞と呼ぶ)は、Oct4及びNanogプロモーター領域が脱メチル化状態となっており、未分化マーカー(Oct4 、SSEA-3 、SSEA-4 、TRA-1-60、TRA-1-81、Nanog)が発現していた。また、テロメラーゼ活性を有していた。センダイウィルスの残存は認められなかった。血球分化の検討では、マイトマイシンC 処理したaorta/gonad/mesonephros (AGM) 領域由来のAGM細胞をフィーダー細胞としてiPS(様)細胞集塊を重層培養する培養系を検討した。効率的に血球分化誘導できるサイトカインの種類とその添加順などの検討を行っている。 25年度の研究成果であるiPS (様)細胞作製は、株化細胞の得られていなかったJMML において、長期培養可能なiPS (様)細胞を用いることで解析に使用する細胞の安定的な供給が可能となることから、今後の白血病治療薬の抗腫瘍効果・薬剤応答解析でのツールとしての意義は大きいと考える。また、PTPN11, NRAS変異を有するJMML細胞からiPS (様)細胞を作製できたことは、白血病治療薬の抗腫瘍効果・薬剤応答の解析において、遺伝子変異との関連性を考察する上で重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目的である白血病治療薬(RAS 経路特異的阻害剤・脱メチル化剤等)の抗腫瘍効果・薬剤応答の解析に向けて、NRASおよびPTPN11変異を有するiPS(様)細胞の樹立ができ、さらにAGM細胞をフィーダー細胞とした血球分化誘導への培養系ができ、サイトカインの組み合わせ・添加順序などの検討を行っている段階にあるため、おおむね順調に進んでいると判断している。次項の研究推進方策に従い、検討を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、樹立したiPS(様)細胞から、CD34+CD38-分画を含めた血球分化を安定して誘導ができるようにサイトカインの組み合わせや、その添加順序をさらに検討し誘導培養法を確立する。最終的には、iPS(様) 細胞から誘導したLSCs 等を含む異なる成熟段階の血液細胞群を用いて白血病治療薬(RAS 経路特異的阻害剤・脱メチル化剤等)の抗腫瘍効果・薬剤応答について解析する。この抗腫瘍効果・薬剤応答に関しては、NRAS変異、PTPN11変異例からiPS細胞が樹立できたため、これらのkeyとなる遺伝子変異の種類による薬剤応答に注目し解析を進めたいと考えている。今後の研究の進捗によっては、NRASやPTPN11変異の他にもJMMLにおいて認められている関連遺伝子変異(CBL変異等)を有する患者由来細胞からのiPS細胞の誘導も行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費の主な使用用途としては、iPS細胞の誘導や維持培養に必要な試薬等の購入であった。当初の計画では、iPS細胞からの血球分化実験、遺伝子発現解析までを実験計画としていたが、未分化状態を反映する各種マーカーについて、一定の条件を有するiPS(様)細胞を樹立するまでに時間を要した。そのため、現在は血球分化実験の検討途中までの達成となっており、次年度使用額が生じた。 樹立を行ったiPS(様)細胞から、安定して効率的に血球分化できるサイトカイン種類・培養条件の確立を行い、分化誘導した異なる成熟段階の血液細胞群を用いて白血病治療薬(RAS 経路特異的阻害剤・脱メチル化剤等)の抗腫瘍効果・薬剤応答について解析する予定である。この解析に使用する維持培養・分化誘導培養に使用する培養関連試薬及び薬剤応答の解析時に用いる各種の薬剤や遺伝子解析試薬の購入費として次年度使用額と26年度の経費を合わせて使用する予定である。
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