2014 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疼痛による不快情動に対する骨髄由来ミクログリアを介した新規治療戦略
Project/Area Number |
25860427
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
澤田 敦史 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10551492)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 不快情動 / 骨髄由来ミクログリア / ケモカイン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性疼痛は不安や抑うつなどの不快情動を引き起こすが,その機序は明らかにされていない.慢性疼痛が引き起こす不快情動は,生活の質を低下させ,この不快情動が痛みをさらに悪化させるという悪循環を生じる.中枢神経系の免疫細胞であるミクログリアは,血液脳関門が不完全な胎生期に,脳内に移行した前駆細胞から分化した内在性ミクログリアと考えられてきた.しかし,近年,外傷や中枢変性疾患において,血液脳関門を通過して血行性に脳内に侵入した骨髄由来単球細胞から分化した骨髄由来ミクログリアが,神経細胞に影響を与え,さまざまな病態形成に関与することが注目されている.末梢神経損傷時には,骨髄由来ミクログリアが脊髄後角に集積し,神経障害性疼痛の病態形成に関与することが明らかになっている.さらに,慢性心理ストレスにより骨髄由来ミクログリアが視床下部に集積し,不安行動を惹起することが報告されている. 本研究により,神経障害性疼痛の慢性期に扁桃体中心核に集積する骨髄由来ミクログリアがIL-1βを分泌し,NMDA受容体のリン酸化を介して神経細胞に作用することで,慢性疼痛による不快情動の形成に関与することが示唆された.また,本研究はこれまで明らかにされていなかった慢性疼痛による不快情動の形成機序を免疫学的,分子生物学的に明らかにした.本研究は,CCR2受容体拮抗薬とIL-1受容体拮抗薬の投与により,神経障害性疼痛による不安行動が改善することを明らかにしており,慢性疼痛による不快情動形成の機序解明だけでなく,慢性疼痛による不快情動の新たな治療戦略を提唱するものである.本研究の果たした意義は,これまで明らかにされていなかった慢性疼痛による不快情動の形成機序を解明し,従来の薬理作用機序とは全く異なる新規治療戦略を提唱したことである.
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