2013 Fiscal Year Research-status Report
ノルアドレナリン作動性神経による疼痛誘発扁桃体シナプス可塑性修飾機構の解明
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25860429
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
高橋 由香里 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20613764)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 慢性痛 / 情動 / ノルアドレナリン / 侵害受容性扁桃体 |
Research Abstract |
本研究では、慢性痛における内因性ノルアドレナリン扁桃体シナプス伝達調節作用の解明を目的としている。慢性痛下でのノルアドレナリン作用解明の予備的実験として、ラット糖尿病性神経障害性モデルでの脊髄でのノルアドレナリンシナプス伝達調節機構を解析し、慢性疼痛存在下では脊髄におけるノルアドレナリンシナプス制御機構が破綻している事実を明らかにした(論文発表)。この結果から、慢性痛下では扁桃体においても同様にノルアドレナリンシナプス調節障害が生じている可能性が示唆された。また、外因性ノルアドレナリンの扁桃体シナプス伝達に対する影響を評価しうる系を確立し、内因性ノルアドレナリンと比較する方法を得た。 光遺伝学的制御により内因性ノルアドレナリン放出を誘発する目的で、本研究ではアデノ随伴ウイルスベクターによるチャネルロドプシン(ChR2)発現誘導を行う。その予備的実験として、青斑核近傍に位置するグルタミン酸作動性神経核である腕傍核へのChR2の導入および扁桃体での光誘発シナプス伝達を記録した。ラットでは扁桃体に光誘発興奮性シナプス伝達を誘発するためには、腕傍核にChR2発現ベクター注入後、4-5週間必要であることが明らかになった。現在ノルアドレナリン作動性神経核にChR2発現ベクターの脳内微量注入を試みているが、まだ成果が出るには至っていない。 扁桃体シナプス伝達において内因性ノルアドレナリン放出がどのような影響を与えるかの知見はないため、共同研究者から譲受したノルアドレナリン神経ChR2発現トランスジェニック動物において、急性脳スライス上で経路非特異的にノルアドレナリン線維を光刺激し、それに対する応答を電気生理学的に解析している。その結果、青斑核や孤束核などのノルアドレナリン神経起始核では光誘発応答を得ることができ、扁桃体での光誘発ノルアドレナリン放出効果の評価に引き続き取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25 年度に予定していた計画はおおむね順調に進捗しているが、そのうち、光遺伝学法を用いた脳スライスでのin vitro実験の成果に基づいたin vivo動物での光刺激実験系の確立が以下の理由により、遅れている。理由1:in vitroの実験系において、光刺激によるノルアドレナリン放出誘発がニューロンに及ぼす効果が評価できていない。理由2:この評価に基づいて、平成25年度中にin vivoの実験系に着手し、平成26年度からin vivoでの検証を進める予定であったが、この段階にまだ到達していない。これらの原因として、1)平成25年度に試みた遺伝子発現導入法によっては、ノルアドレナリン神経終末チャネルロドプシン発現量が不十分である可能性、2)平成25年度に試みた光刺激方法では、内因性ノルアドレナリン放出を効果的に放出させるに至っていない、および、3)放出は生じているものの、平成25年度に試みた導入方法・実験条件・記録条件ではまだ十分な放出量が得られていない可能性が考えられる。平成26年度においては、1)ノルアドレナリン合成酵素ドパミンβハイドロキシラーゼプロモーター制御下にCreリコンビナーゼを発現するラットを導入し、ノルアドレナリン神経核にCre依存的ChR2-YFP発現アデノ随伴ウイルスベクターを投与するというアプローチにより、扁桃体でのChR2発現量の向上を試みる、2)従来グルタミン酸放出などに用いられているものと全く異なる光刺激パターンや、現在までに報告されている青斑核ニューロンの発火パターンの模倣など、さまざまな試行錯誤をし、シナプス伝達・膜電流への影響を比較する、3)SNRIなどを用いたノルアドレナリン再取り込み阻害による内因性ノルアドレナリンの効果増強を試みる、などの方法を用いて、研究計画を進行する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に包括型脳科学研究推進支援ネットワークによるリソース・技術支援として、ノルアドレナリン合成酵素であるドパミンβハイドロキシラーゼプロモーター制御下にCreリコンビナーゼを発現するラットの作製が採択され、作製の見通しが立っている。平成26 年度は、このラットに対し、特定のノルアドレナリン作動性神経核にCre依存的にチャネルロドプシンを発現するようなアデノ随伴ウイルスを感染させ、内因性ノルアドレナリン放出を誘導する。チャネルロドプシンの発現の指標となるYFPの発現を評価するとともに、ベクターの種類、ウイルスのタイター等の検討を行い、チャネルロドプシン発現の向上を図る。In vitroにおいて内因性ノルアドレナリン放出によるシナプス伝達調節作用を確認した後、in vivo痛み情動行動における内因性ノルアドレナリン放出の影響を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度以降に行うin vivo行動実験の予備的実験を平成25年度中に開始する予定であったが、in vitroでの扁桃体ノルアドレナリン神経終末におけるチャネルロドプシン発現系の条件設定に時間がかかり進捗が遅れているため、in vivo脳内光刺激実験に必要な物品を購入しなかった。そのため、次年度(平成26年度)使用額が生じた。 平成26年度は、in vitroでのノルアドレナリン神経特異的チャネルロドプシン発現系を確立し、in vivo光刺激による行動解析を行う。そのために、平成25年度購入予定であったin vivo脳内光刺激実験に必要な物品を購入する。
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Research Products
(13 results)