2013 Fiscal Year Research-status Report
In vivoパッチクランプ法を用いた痒覚中枢機構の解析
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25860431
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
歌 大介 生理学研究所, 生体情報研究系, 特任助教 (70598416)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 痒み / in vivo patch clamp / セロトニン / 脊髄 / 膠様質ニューロン / c-Fos / シナプス伝達 / 痛み |
Research Abstract |
時に痒みは痛み以上に耐え難い感覚であるにもかかわらず、痛みに比べ脊髄における痒み情報伝達機構の詳細は不明なことが多い。そこで、感覚情報の入り口である脊髄後角からのin vivoパッチクランプ法を用い、皮膚への痒み刺激により誘起されるシナプス応答の詳細な解析を行った。 まず、痒み中枢への情報伝達系を解明するために、起掻物質であるセロトニンをラット下肢皮膚へ投与し脊髄後角におけるc-Fos発現部位の解析を行った。その結果、セロトニン投与により脊髄後角の表層にc-Fos陽性細胞が局在していることが明らかとなった。次いで、脊髄後角表層の痒み受容ニューロンのより詳細な特徴を解析するためにパッチクランプ法を用いて-70mVの電位固定下に記録を行い様々な検討を行った。その結果、痒み受容ニューロンの多くはある種のTRPチャネル発現線維の入力を受けていることを見出した。更に電流固定下で膜電位の変化の詳細を解析すると、セロトニン塗布により幾つかのニューロンでは長時間にわたる活動電位の発生が見られた。更に痒み受容ニューロンの発火パターンを解析すると、delayedタイプとtonicタイプを示す傾向が見られた。 以上のことから、皮膚へのセロトニン投与によって痒み行動が誘発され、その情報は末梢で発生した活動電位がある種のTRPチャネルを発現した求心性線維により膠様質のニューロンにシナプス入力していることが明らかとなった。更に痒み情報を受け取る膠様質のニューロンはdelayedタイプとtonicタイプの発火パターンを示す傾向が見られた。これら脊髄におけるシナプス応答の詳細な報告は現在までになく、今後痒みのシナプス伝達機構の解明に非常に重要な結果であると思われる。尚これらの研究結果は、2013年に開催された国際痒みシンポジウム、アジア疼痛シンポジウム、日本生理学会などの学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、痒み中枢への情報伝達系を解明するために、起掻物質であるセロトニンをラット下肢皮膚へ投与し脊髄後角におけるc-Fos発現部位の解析を行い、セロトニン塗布により脊髄後角の表層にc-Fos陽性細胞が局在していることを示した。更に、in vivoパッチクランプ法を用いた実験で薬理学的な詳細なシナプス応答解析により、痒み受容ニューロンの多くはある種のTRPチャネル発現線維の入力を受けていることを見出した。次いで、記録した細胞の場所を調べると、セロトニンに応答した細胞は応答しなかった細胞に比べ有意に浅い層に分布しておりc-Fosの結果とも一致していた。更に痒み情報受容ニューロンの電気生理学的特性を解析すると、痒み情報受容ニューロンはdelayedタイプとtonicタイプの発火パターンを示す傾向が見られた。以上の結果から、皮膚へのセロトニン投与によって痒み行動が誘発され、その情報は末梢で発生した活動電位がある種のTRPチャネルを発現した求心性線維により膠様質のニューロンにシナプス入力していることが明らかとなりその情報を受け取るニューロンはdelayedタイプとtonicタイプの発火パターンを示す傾向が見られる傾向にあることが分かった。これらの結果は、国際痒みシンポジウム、アジア疼痛シンポジウム、日本生理学会などで報告した。現在は、痒み受容ニューロンの形態学的解析や、さらに上位中枢への痒み情報伝達機構を調べるために脳におけるc-Fos陽性細胞の局在を調べる実験を行っている。 以上のことから、おおむね研究計画通りに研究が出来ていることから順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている、セロトニンに応答した膠様質ニューロンの詳細を調べるために免疫組織学的手法を用いて形態染色を行う。更に、現在痒み特異的な受容体がいくつか報告されているがそれらの阻害剤を投与しセロトニン投与による応答がいかなる変化を起こすかを検討する。次いで、さらに上位中枢である脳における痒み情報伝達機構の実験を行う。セロトニン投与によりc-Fos陽性細胞が見られた脳部位からin vivo細胞外もしくはin vivoパッチクランプ記録法を用いて電気生理学的な解析を行い痒み情報伝達機構の解析を進める。電気生理学的解析や組織学的解析を行い、脊髄及び脳における掻痒シナプス伝達を担う基盤神経回路の同定と情報処理機構の全容を明らかにすることを目的とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は主に感覚情報の入り口である脊髄後角からのin vivoパッチクランプ法を用いた実験を行う為にパッチクランプ増幅器(Axopatch 200B)を購入予定であったが、円安などによる製品価格の急騰で当初申請単価では調達が非常に困難となってしまったが、所属研究室に代替品があり当初の計画をほぼ変更することなく実験が遂行できた為、26年度に助成金を繰り越しパッチクランプ増幅器の調達を行う事とした為。 26年度はセロトニン投与によりc-Fos陽性細胞が見られた脳部位からin vivo細胞外もしくはin vivoパッチクランプ記録法を用いて電気生理学的な解析を行い痒み情報伝達機構の解析を進める予定である。26年度から申請者は富山大学へ異動の為、異動先での研究遂行の為にはパッチクランプ増幅器は必須であり購入予定である。また、研究立ち上げに際し消耗品として、細胞外液、細胞内液といった溶液や痒み誘発物質などの試薬品を購入する経費が必要である。更に本研究では動物を使用し行動薬理学的実験や電気生理学的実験を行う事からその購入経費も必要である。最終的には、本研究で得られた結果を国内外の学会で積極的に発表し、英文科学誌などに投稿することで社会に発信していく計画である。
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] CCL-1 in the spinal cord contributes to neuropathic pain induced by nerve injury.2013
Author(s)
Akimoto N, Honda K, Uta D, Beppu K, Ushijima Y, Matsuzaki Y, Nakashima S, Kido MA, Imoto K, Takano Y, Noda M.
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Journal Title
Cell death and disease
Volume: 4
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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