2013 Fiscal Year Research-status Report
アルシンの慢性影響に関する研究―遺伝子発現とタンパク発現、行動学からの解析―
Project/Area Number |
25860463
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山内 武紀 宮崎大学, 医学部, 助教 (40576287)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルシン / バイオマーカー |
Research Abstract |
アルシンは毒物及び劇物取締法により毒物に指定される気体のヒ素化合物である。アルシンは半導体の製造に不可欠であるが、他にもヒ素を不純物として含む金属の酸処理または精錬時に副産物として発生するため、精錬業の作業従事者においてはアルシンの吸入曝露による中毒事故が散発的に発生している。しかし、アルシンに対する許容濃度は設定されているものの管理濃度は設定されておらず、産業現場におけるリスク管理の観点から、アルシン曝露を示すバイオマーカーを見つけることは急務である。そこで我々はアルシンを曝露したマウスの血液サンプルに対して、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計(MALDI-TOF-MS)および誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を使用した解析を実施し、バイオマーカー候補を探索した。 マウス保存血にアルシンを曝露したサンプルをMALDI-TOF-MSで解析したところ、曝露サンプルに特異的なピークが質量電荷比(m/z)15,000付近に2つ、15,700付近に1つ確認できた。m/z値からこのピークはヘモグロビンの構成要素のひとつであるグロビンとヒ素が結合したものであることが推測された。そこで、次に同じサンプルを用いて抗グロビン抗体を用いた免疫沈降反応を行った。この反応によりサンプル中に含まれるグロビンのみを選択的に抽出することができる。得られたグロビンの中に含まれる総ヒ素をICP-MSで定量したところ、曝露サンプル中のヒ素濃度は対照サンプルのヒ素濃度よりも明らかに高く、グロビンとヒ素が結合していることが強く示唆された。最後に保存血ではなくアルシンを吸入曝露したマウスの血液を用いて同じ解析を行ったところ、同様の結果が得られた。したがって、ヒ素とグロビンの付加体は急性アルシン中毒の有用なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では平成25年度内に、大学内におけるアルシンの曝露実験実施体制を整える予定であった。しかし、アルシンが毒性および可燃性を持つことから、十分な実施体制を整えることができず、平成25年度に実施予定であったマウスの脳における遺伝子発現パターンの比較に必要なサンプル量を得ることが困難であった。そこで今年度はアルシン曝露マウスの血液を用いて、「アルシン曝露を検出するためのバイオマーカー候補の探索」と「アルシン曝露マウスおよびヒ素を経口曝露したマウスの血液を用いたメタボローム解析」を行った。バイオマーカー候補を探索した結果、ヘモグロビンを構成するグロビンとヒ素が結合した付加体が曝露指標となることが示唆された。また、メタボローム解析によってアルシン曝露マウスとヒ素を経口曝露したマウスで共通する代謝物および異なる代謝物について知見を得ることができた。 代謝物の分析は当初計画では平成27年度に実施する予定であったが、平成25年度の計画が予定通りに実施できなかったため、代謝物の分析を平成25年度に実施することとした。したがって、当初計画とは順番が異なるものの、全体的な計画の達成度としては「やや遅れている」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には申請時の研究計画通りに実施していく予定である。具体的には、平成26年度にアルシン曝露マウスの脳におけるmRNAの発現パターンを対照群と比較して、発現量の変化している遺伝子の候補を探索する。次に、候補遺伝子の発現量を定量して同定する。そして、脳のどの領域において発現量が変化しているのかを免疫組織化学染色によって明らかにする。可能であれば、平成27年度に実施予定であった認知行動学的な実験も実施する。ただし、アルシンの曝露実験については当初の予定よりは実施が困難であるため、本学だけではなく他施設での曝露実験も視野に入れている。
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Research Products
(3 results)