2013 Fiscal Year Research-status Report
食中毒起因ウェルシュ菌発症の引き金となる芽胞形成・毒素産生の分子メカニズムの解明
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25860467
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
安木 真世 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40589008)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ウェルシュ菌 / 食中毒 / 芽胞形成 |
Research Abstract |
胆汁酸が芽胞形成を促進するメカニズムを解明するため、胆汁酸の存在下または非存在下におけるウェルシュ菌のin vitro感染実験を行い、芽胞形成時の菌体DNAマイクロアレイを行った。アジレント社のeArrayを用いてNCBIデータベース上のウェルシュ菌2,778遺伝子に対するDNAプローブをデザインした。チップ合成はアジレント社へ、マイクロアレイの実施・解析は大阪大学微生物病研究所DNAチップ開発センターへそれぞれ委託した。菌体全遺伝子中約1割が胆汁酸添加により有意な発現変化を示した。芽胞形成シグナルカスケードにおける胆汁酸の関与部位を明らかにするため、芽胞形成に関与すると報告されている73遺伝子に対して、その発現変化を胆汁酸の有無で比較した。その結果、芽胞形成のマスターレギュレータとして知られているspo0Aの発現に有意差はなかった一方、その下流に位置する遺伝子群は胆汁酸添加で有意な発現上昇を示した。定量PCRにおいてもアレイと同様の結果を得た。以上の結果より胆汁酸はspo0A遺伝子の発現を誘導するのではなく、Spo0Aタンパク質の活性化に関与していることが明らかとなった。そこでSpo0Aタンパク質の活性化への関与が報告されている遺伝子、ならびにマイクロアレイにおいてspo0A下流遺伝子に先駆けて発現上昇が認められた遺伝子が胆汁酸への応答遺伝子であると考え、変異株の候補とした。 ウェルシュ菌の芽胞形成・毒素産生を制御する因子として、新たにRPMI培地を構成する無機化合物を同定した。さらにウェルシュ菌を取り巻く環境因子として好気・嫌気度が芽胞形成を制御することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度の目標として芽胞形成条件の検討、マイクロアレイサンプル調整とデータ解析ならびに変異株の作出を掲げて研究を進めた。芽胞形成条件の検討では上記の通り培地成分の同定を終え、また新たに好気・嫌気度の芽胞形成への関与を明らかにすることができた。これらの成果は計画以上のものであると考えられる。マイクロアレイにおいては計画通りデータ解析まで終了し、変異株の候補を挙げることができた。当初変異株作出はH25~26年度に行う予定であったが、実際にはH26年度に行うこととなった。以上の理由からおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
胆汁酸による芽胞形成促進メカニズムの解明においては関与が疑われる菌体遺伝子の変異株を早急に作出し、実際に芽胞形成に関与しているか明らかにする。 芽胞形成に関与することが明らかとなったRPMI培地の無機化合物ならびに好気・嫌気度に関しては、マイクロアレイまたは生化学的手法を用いてそのメカニズムの解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
変異株の作製は当初H25年度から始める予定だったがH26年度に行うこととしたため、変異株作製のために計上した物品費が残った。 上記の通り、H25年度実施予定の変異株作製のための物品費として計上する。
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