2013 Fiscal Year Research-status Report
制御性T細胞の細胞死と増殖およびサイトカイン産生に対するアスベスト曝露の影響
Project/Area Number |
25860471
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
松崎 秀紀 川崎医科大学, 医学部, 助教 (80335463)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アスベスト / 腫瘍免疫 / 制御性T細胞 / アポトーシス |
Research Abstract |
「アポトーシス制御機構の解析」 我々はこれまでにMT-2細胞にアスベスト長期曝露を加えることにより転写因子FoxO1の発現量が低下することを明らかにしている。そこで、高濃度アスベスト曝露により誘導されるアポトーシス制御におけるFoxO1の役割を検討した。その結果、MT-2親細胞のFoxO1をノックダウンすることによりアポトーシスが抑制されたが、アスベスト長期曝露細胞にFoxO1を高発現してもアポトーシス細胞数は増加しなかった。従って、アスベスト長期曝露細胞のアポトーシスの回避にはFoxO1の低下のみならず、複数の機構が存在することが示された。一方、MT-2親細胞とアスベスト長期曝露細胞内の各種アポトーシス調節分子の発現を定量RT-PCR法により検討しところ、アスベスト長期曝露細胞ではFasL、Pumaなどのアポトーシス促進因子の発現量が低下するとともに、アポトーシス抑制因子Bimの発現量が増加していることが見いだされた。PumaやBimなどは多様な刺激によるアポトーシス調節に関与することからアスベスト長期曝露細胞は高濃度アスベスト曝露によるアポトーシスのみならず生理的なアポトーシス刺激にも抵抗性を示す可能性がある。また、FasLは自己および他の細胞のアポトーシスを誘導することから、今後はFasLの作用に関しても検討が必要である。「細胞周期進行の調節因子の解析」MT-2親細胞とアスベスト長期曝露細胞の細胞周期進行の調節因子の発現量を定量RT-PCR法により検討した。その結果、アスベスト長期曝露細胞では細胞周期抑制因子p27 kip1の発現量が低下するとともに、細胞周期進行の促進因子cyclinD2の発現の亢進していることが見いだされた。従って、アスベストの長期曝露は各種の細胞周期進行の調節因子の発現量に影響を与え、細胞増殖速度を上昇させるが促進されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画ではアスベスト長期曝露細胞の特徴であるIL-10およびTGFβの産生亢進のメカニズムを明らかにすることを目的として、上記のサイトカインのmRNAとタンパク質の発現解析、それぞれの遺伝子のプロモーター解析を実施するとともに、TGFβに関してはその成熟過程を詳細に検討することを予定していた。しかしながら、実験系の確立に時間を要したため計画の進行に若干の遅れが生じている。そこで、上記の実験と並行してMT-2親細胞とアスベスト長期曝露細胞内における制御性T細胞分化の調節因子の発現をRT-PCRにより検討したところ、アスベスト長期曝露細胞では転写因子GATA-1の発現量が顕著に増加していることを見いだしている。GATA-1はFoxP3と協調して制御性T細胞分化を誘導することが提唱されており、平成26年度に詳細な解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は当初の研究計画に基づき以下の解析を実施する予定である。「細胞周期調節因子の役割」 平成25年度の解析により見いだされたアスベスト長期曝露により発現量の減少するp27Kip1や増加するcyclinD2に関してノックダウンおよび高発現実験を行い、これらの分子がアスベスト長期曝露MT-2細胞の増殖速度に与える影響を解析する。「抑制生サイトカイン分泌機構の解析」 平成25年度に実施することを予定していたアスベスト長期曝露細胞とMT-2親細胞におけるIL-10とTGFβのmRNAおよびタンパク質発現の調節機構を検討する。なお、TGFβに関しては前駆体pro-TGFβとして翻訳された後、不活性型LAP/TGFβ複合体をへて活性型TGFβに変換されることから、これら各段階を詳細に検討するとともに、TGFβの成熟過程を触媒するプロテアーゼ群(FurinおよびMMP2/MMP9)の発現量をRT-PCR法とウェスタンブロット法により検討する。上記の実験によりMT-2親細胞とアスベスト長期曝露細胞間で差異が見いだされた項目に関してGATA-1やFoxP3の役割を検討する。「健常者末梢血より単離した正常制御生T細胞に対するアスベスト曝露の影響」 健常者末梢血より制御性T細胞を分離し、アスベスト曝露を加えた後、昨年度および上記のMT-2細胞を用いた解析より見いだされたアスベスト曝露の影響を受ける項目(アポトーシス誘導、細胞周期進行、抑制性サイトカイン産生)に関する解析を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該助成金は平成24年3月23-27日にフェニックスコンベンションセンター(アメリカ)において開催された53rd Annual Meeting of Society of Toxicologyへの参加のための旅費として使用しているが、支払いが4月以降となったため次年度使用額として計上されている。 当該助成金は上記の旅費として4月中に支払いを完了している。
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Research Products
(7 results)