2014 Fiscal Year Research-status Report
患者の医薬品備蓄とセルフメディケーションの実態からみた災害・精神医療に関する研究
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25860483
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
中島 範宏 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10567514)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 医薬品備蓄 / セルフメディケーション / 災害医療 / 医療提供体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に実施した文献調査の結果,市民の医薬品の備蓄傾向やセルフメディケーションの現状把握によって,「災害医療」および「精神医療」のあり方について検討するためには,複数の視角から分析することの重要性が示唆された。特に,①医薬品の性質(患者にとっての緊急度,入手難度など),②地域差(大規模災害の経験の有無,高齢化率や世帯構造といった人口構成の特徴,医療機関等へのアクセスしやすさ,薬剤師の在宅医療への関与の有無など)に着目した分析を行うことが重要であると考えられた。そこで,予定しているアンケート調査にもそのような意図を反映させた。 なお,本年度実施する予定であったアンケート調査については,前年度に調査実施方法の内的妥当性について課題が見えたため,調査方法を一部見直すことになった。当初は,一般市民の医薬品の処方状況およびセルフメディケーションのための医薬品購入状況について調査を行う際,薬局を訪れた一般市民に調査票を配布して回答を得る予定だった。しかし,上記の課題を考慮し,一般市民対象の調査を取りやめ,薬局調査の対象を日本保険薬局協会の正会員全体に変更することで,一般市民への医薬品の調剤傾向と店舗でのOTC医薬品の販売傾向などについて把握することにした。そのため,再度,調査票の作成作業を行った。 前年度にアンケート調査作業用のパソコンを購入したが,統計解析を行うためにIBMSPSSを購入して研究環境を整えた。 次に,初年度から続けている文献調査の資料を整理した。特に,日本の人口高齢化や地域包括ケアシステムといった我が国の医療を取り巻く変化を無視した医薬品の備蓄はあり得ないため,そのような観点から公的な医薬品の備蓄の社会保障的な位置づけについて諸外国の制度も参考に検討を続けている。 また,関連領域における英文論文も執筆し,現在は投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定よりもやや遅れている部分と進展している部分が混在している。 文献調査などは予定よりも進展しており,本研究の関連領域について英文論文も執筆していて,現在は投稿準備段階にある。 一方,やや遅れているのは,アンケート調査である。一般市民対象の調査方法に課題が残ったため,薬局向け調査の対象を日本保険薬局協会の全正会員へと拡大し,一般市民の医薬品の調剤やOTC医薬品などの購入の動向などについて把握することになった。そのため,諸変更が生じ,当初の予定よりも時間を費やした。研究計画では平成26年の秋頃にアンケート調査を実施する予定であった。しかし,上記の理由により,急いでも平成26年度末頃の実施となる見込みとなったため,実施時期による回収率低下の影響を考慮して,当調査の実施を平成27年度に延期することとなった。 しかし,アンケート調査が次年度の実施となったのも,回収率を考慮したがゆえの延期であり,本研究全体としては,おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査を平成27年度の早い時期に実施し,分析,学会発表等を行えるように効率よく研究を推進していく。アンケート調査の対象者数が多く,データ入力に相当の時間と労力を要することが予測できるため,調査票の印刷やデータ入力についてはそれぞれの専門業者に依頼し,発送作業については学内外の大学生(もしくは大学院生)の協力を得るなどして対応する。 アンケート調査の分析はすぐに行えるようにIBMSPSSを導入済みなので,調査実施後は速やかに分析作業を行い,成果の公表を積極的に行っていきたい。 本研究は,精神医療や災害医療に関連した課題テーマであるが,最終的な考察の段階では,医療政策ないし社会保障政策的な検討に踏み込む可能性がある。その際,検討内容について一定の質の高さを担保するために,医療政策学者や社会保障法学者とディスカッションを必ず行うようにする。
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Causes of Carryover |
平成26年度は,アンケート調査の実施やそれに伴う分析などの費用として約200万円を計上していた。しかし,調査手法および調査対象のサンプリング方法の変更などに伴い,調査票の質問項目の修正作業等に時間を要し,実施時期を平成27年度に変更した。 そのため,本調査に使用する予定であった金額分が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額となった約202万円は,平成26年度に予定していたアンケート調査を平成27年度に実施することで使用する予定である。 具体的には,アンケート調査票や封筒類の印刷費,配布と回収に伴う郵送費,データ代行入力費,事務用品などの物品費,配送作業などの協力者への謝金などとして使用する。 調査方法の変更に伴って,調査対象数に変更が生じたため,多少の余剰金が生じる可能性があるが,その場合には文献調査のとりまとめを行う際の費用や,英文論文を書く際の校正費などとして使用する予定である。
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