2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25860532
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉野 琢哉 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10588875)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 炎症性腸疾患 / マクロファージ / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性腸疾患(IBD)は再発再燃を繰り返す、原因不明の難治性疾患である。本邦における患者数は増加の一途を辿り、その原因究明は重要な課題の一つである。欧米ではIBD患者の疾患感受性遺伝子として自然免疫に関与するマクロファージの機能異常が報告されている。しかし本邦のIBD患者ではこれらの異常は認められていない。一方、IBD患者ではマクロファージの機能異常が報告されており、マクロファージの後天的機能異常がIBD発症に関与している可能性が示唆されている。そこで本研究の目的は、1.本邦におけるIBD患者からiPS細胞を樹立し、2.iPS細胞から分化誘導されたマクロファージの機能解析によるIBDの原因究明を目指すものである。 本年度は継続して、臨床検体を用いてiPS細胞および末梢血単核球より樹状細胞、マクロファージの作成を試みている。今後、次世代シーケンサーを用いて、ゲノム網羅的解析を行う予定である。 これまで、IBDの病態に関与する免疫担当細胞や炎症性サイトカインに関する報告を多数認める。またこれまで当研究室において、マクロファージを制御することがIBDの根本的治療に繋がる可能性について報告してきた。しかしながら、ヒトiPS細胞を用いたIBDの病態の本質にせまる基礎的検討は報告されておらず、同一患者におけるiPS細胞からの分化誘導したマクロファージと組織から分離抽出したマクロファージを比較するエピゲノム解析は非常に独創的であり、画期的手法と考える。 IBDは原因不明の難治性炎症性疾患であり、本研究による病態解明は、新規治療薬の開発や、個々の症例に応じたテーラーメードな治療方針決定に繋がるものである。この研究成果は、IBD患者の病態解明、新規治療法開発に多大な貢献をもたらすものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究機関内に達成する研究事項は1.IBD患者からiPS細胞を作製、樹立すること、2.iPS細胞からマクロファージ、樹状細胞を作成すること、3.同一患者の腸管粘膜生研組織より樹状細胞、マクロファージを分離抽出すること、4.次世代シーケンサーを用いてエピゲノム解析を行うこと、5.iPS細胞および腸管粘膜生検組織由来免疫担当細胞の機能解析を行うことである。 当院消化器内科外来通院中の炎症性腸疾患患者を対象に、本研究参加を募集している。すでにクローン病患者より、小腸部分切除時に皮膚切開部より皮膚生検を行い、京都大学iPS細胞研究所にてiPS細胞作製を実施し、作成したiPS細胞の継代し、凍結保存している。さらに新たに外来通院中のクローン病患者の末梢血よりiPS細胞を樹立中である。今後、更なる症例の蓄積が本研究の遂行における重要な課題の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、より多くの炎症性腸疾患患者および健常人を対象に、iPS細胞樹立を行うことが重要な課題の一つと考える。皮膚生検は患者に苦痛を伴う検査であり、末梢血よりiPS細胞の樹立が可能であることから、末梢血より細胞樹立をめざし、更なる症例の蓄積を試みる予定である。 またすでに樹立できたiPS細胞を用いて、マクロファージ、樹状細胞に分化誘導を試み、最終年度には次世代シーケンサーを用いてゲノム網羅的メチル化解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
iPS細胞樹立に向け、炎症性腸疾患患者および健常人に本研究の参加を募ったが、十分な症例の蓄積に至っていないため、試薬の消耗が予定よりも少なかったためと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
皮膚生検ではなく末梢血よりiPS細胞の樹立を目指すため、本年度よりも多くの症例の蓄積が見込まれるため、試薬の消耗がむしろ予定よりも多くなることが考えられる。また本年度に樹立作成したiPS細胞より免疫担当細胞に分化誘導を行い、iPS細胞とiPS細胞由来免疫担当細胞の次世代シーケンサーを用いてゲノム網羅的解析を行うために、より多くの支出が想定される。従って、次年度使用額は、これら実験に充当する予定である。
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Research Products
(6 results)