2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25860545
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
松田 みゆき 大分大学, 医学部, 技術補佐員 (90586207)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ピロリ菌 |
Research Abstract |
(研究の学術的背景) ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染による消化性潰瘍や胃癌発症の高危険群を同定することは非常に重要である。発症の原因として、宿主や環境の因子に加え、様々な菌側の病原因子が関与していると考えられており、ピロリ菌の病原因子のなかではcagA遺伝子が最も研究されている。疫学的、分子生物学的にはcagAの遺伝子型が病原性と関連することが報告されているが、これらの研究は疫学またはCagA蛋白を全身に人為的に導入した遺伝子改変マウスの実験であり、実際それらのCagA蛋白を発現する菌が胃粘膜で同様の現象を引き起こすかについては不明瞭である。異なるcagA遺伝子型を持つ臨床株を用いて検討することも可能ではあるが、その他の病原因子が異なるので、cagA遺伝子多型を比較することは困難である。そこで本研究では種々のcagA遺伝子多型を持つピロリ菌を作製し、ピロリ菌のcagA以外の遺伝的背景を同じ状態にした上で培養細胞ならびに実験動物への感染実験を行う事で、細胞接着、IV型分泌装置による宿主細胞へのCagA蛋白の注入といった生体内での感染を実際に再現でき、より的確にcagA遺伝子の多型と病原性の関連性について評価することができると考えた。 (cagAの遺伝子型と病原性) cagA遺伝子はCagA蛋白をコードし、CagA蛋白は注射針様構造(IV 型分泌装置)を介して宿主細胞内に注入され、さまざまな細胞内シグナル伝達系に異常を起こすことが報告されている。cagAの遺伝子型は3'末端側にある繰り返し配列によって識別でき、繰り返し配列に存在するチロシンリン酸化部位を含むアミノ酸配列(EPIYA)モチーフの周辺アミノ酸配列をもとに、AおよびBモチーフ、欧米株に特徴的なCモチーフ、東アジア株に特徴的なDモチーフの組み合わせで、ABCやABCC、ABDなどと表現する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本講座で保管されているピロリ菌のDNA サンプルを用いてPCR を行い、cagA 遺伝子の有無について調べた。このうち、陽性であったサンプルについてcagA 遺伝子のシーケンス解析を行ったところ、cagAの遺伝子型がAB、ABC、ABD、ABCC、ABCCC、AABD、ABABCCなど種々の遺伝子多型を持つピロリ菌株を得ることができた。 また、変異株を得るためにT7 Blue vector に cagA の上流及び下流領域とクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)を挿入したプラスミド(pTHP494/496::cat)を作製し、natural transformation 法でTN2 cagA欠損株(TN2⊿cagA)を作製している。ピロリ菌-大腸菌の両宿主で複製可能なシャトルベクターであるpHel3(Heuermann D. and Haas R., Mol. Gen. Genet., 1998)上に、cagA 遺伝子全長およびそのプロモーター領域をクローニングし(pHel3::cagATN2)、上記のTN2⊿cagA に導入することでcagA 遺伝子相補株を取得、同様に、pHel3 上のcagA に各種変異を加え、随時、TN2⊿cagA へと導入することで、目的のcagA 相補性変異株(TN2⊿cagATN2/cagA***)の取得を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
(培養細胞への感染実験) 胃上皮細胞株AGS 細胞およびMKN45 細胞にTN2⊿cagA TN2 株、TN2⊿cagATN2株にそれおぞれのcagA遺伝子多型を含むシャトルベクターを導入した変異株を感染させ、サイトカイン産生能やシグナル伝達系の評価を行う。 (実験動物への感染実験) 本実験で使用するTN2 株はスナネズミへの感染により胃炎を惹起することが確立されている。遺伝子組み換えによって作製したピロリ菌株(TN2⊿cagATN2/ cagA***)をスナネズミに経口投与し、感染成立の有無や感染後の炎症反応を組織、生化学的に解析する。 ピロリ菌は、野生株TN2 群、TN2⊿cagA群、TN2⊿cagA/cagA(ABC)群、TN2⊿cagA/cagA(ABCC)群、TN2⊿cagA/cagA(ABCCC)群、TN2⊿cagA/cagA(ABD)群、TN2⊿cagA/cagA(ABBD)群、および非感染コントロール群とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本講座既存の試薬類や器具類を利用できたので次年度使用額が生じた。 人件費、マイクロプレートリーダーについても他の経費で賄えたので未使用額が生じた。 次年度は培養細胞や実験動物への感染実験が予定されており、多量の消耗品が必要となるのでそちらに利用予定である。
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[Journal Article] Complete Genome Sequences of Eight Helicobacter pylori Strains with Different Virulence Factor Genotypes and Methylation Profiles, Isolated from Patients with Diverse Gastrointestinal Diseases on Okinawa Island, Japan, Determined Using PacBio Single-Molecule Real-Time Technology2014
Author(s)
Satou K, Shiroma A, Teruya K, Shimoji M, Nakano K, Juan A, Tamotsu H, Terabayashi Y, Aoyama M, Teruya M, Suzuki R, Matsuda M, Sekine A, Kinjo N, Kinjo F, Yamaoka Y, Hirano T
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Journal Title
Genome Announc
Volume: 2
Pages: e00286-14
DOI
Peer Reviewed
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