2013 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌微小環境構築における癌関連線維芽細胞TRPC6 の役割
Project/Area Number |
25860571
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
倉原 琳 (海 琳) 福岡大学, 医学部, 講師 (00341438)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 癌関連線維芽細胞 / TRPC6 / 癌微小環境 / Ca2+ / チロシンリン酸化 / 成長因子 |
Research Abstract |
大腸癌では、様々な増殖因子およびその受容体が過剰に発現し癌の進展に関与することが報告されており、近年分子治療の標的として注目されている。これら増殖因子に応答して病変部へ遊走し「癌微小環境」構築に寄与する細胞の一つに癌関連線維芽細胞がある。本研究では、腸管における種々の物理化学刺激やストレスのセンサー蛋白質と考えられる癌関連線維芽細胞TRPC6チャネルに注目し、増殖因子刺激に応答したの増殖・遊走、炎症性サイトカイン・細胞外マトリクス産生の制御に果たす役割の解明を通して、炎症と発癌を繋げる「癌微小環境」構築における癌関連線維芽細胞の潜在的な役割を探索した。 我々の実験結果から、成長因子刺激に応答する癌関連線維芽細胞TRPC6チャネルはクローン病患者の腸管線維化狭窄部に高発現して、Ca2+流入を介して受容体の下流のリン酸化シグナルに対して抑制的に働き、細胞外マトリックスや抗炎症サイトカイン産生を抑制する。TRPC6を介するCa2+流入は転写因子NFATの核移行に対して影響せず、タンパク質ホスファターゼの一種であるカルシニューリンを活性化することによる脱リン酸化反応を促進して成長因子受容体下流のシグナルを抑制している可能性が示唆された。また成長因子EGF刺激によりTRPC6 channelのチロシンリン酸化が亢進し、このリン酸化にSrc family tyrosine kinaseの活性化が必須であることを明らかにした。これらの現象から、癌関連線維芽細胞TRPC6チャネルが、「癌微小環境」構築による大腸癌進展制御の新しい機構である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究計画でin vitroとin vivo両方で「癌微小環境」構築に寄与する癌関連線維芽細胞TRPC6チャネルの性質を検討する予定になっている。2013年度は主にin vitro実験から大腸線維芽細胞TRPC6チャネルの性質について検討を行った。TRPC6チャネルを介するCa2+流入が脱リン酸化酵素を活性化して成長因子下流のシグナルを抑制し、EGF受容体によるTRPC6チャネル機能制御についても有意義な結果が得られた。 これらの基礎データを元に、遺伝子改変動物での大腸癌発癌・進行と癌関連線維芽細胞TRPC6チャネルとの関わりについてin vivo実験を進めるうえの予備データを揃えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題についてin vitro実験データを取得しており設定目標は達成できる見込みである。この実験系の確立は、線維芽細胞がもたらす大腸癌の増悪や治癒の両方向におけるシグナル伝達経路の解明に繋がる重要なステップである。IBDに起因する発癌における重要性が注目されている癌関連線維芽細胞の遊走・沈着と癌化調節因子の放出に焦点をあて、マイクロRNAがTRPチャネルやCa2+流入を介した転写因子(calcineurin/NFAT系、CaMK/CREB系など)制御が大腸癌の進行や改善にどのように関わっているのか、in vivo実験を用いて探索する。 また、外科手術から提供される大腸がん組織の癌関連線維芽細胞のTRPC6発現・機能についても精査する予定。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培養細胞による確認実験が予想よりも時間が掛り、実験動物の購入・飼育が遅れたため次年度使用額が生じた。遺伝子改変動物の飼育・実験許可はすでに取得しており、実験動物の作成中である。遺伝子改変動物を用いた大腸癌発癌実験に関しては、発癌モデル動物を作成する試行錯誤が必要と考えられるので、多く予算を割り当てている。 また、動物実験の他、患者からの生検組織・大腸癌摘出組織の提供について福岡大学臨床研究の許可を倫理委員会に申請中であり。2014年度に臨床研究を進めていく予定である。 遺伝子改変動物や患者からの組織採取を今後行う予定である。繰越額は遺伝子改変動物の作成・飼育・遺伝子発現確認・大腸癌モデル動物作成のために使う予定である。
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