2013 Fiscal Year Research-status Report
心肥大の病態生理における自然炎症の役割及びその分子機構の解明
Project/Area Number |
25860586
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東邦 康智 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10586481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心肥大 / 心不全 / 適応応答 / 炎症 / TLR2 / NF-κB / IL-1β / 熱ショック蛋白質 |
Research Abstract |
平成25年度は、圧負荷心肥大の病態生理における病原体センサーであるToll様受容体2(TLR2)の役割及びそのメカニズムについて検討を行った。 野生型及びTLR2ノックアウト(TLR2KO)マウスの心臓に大動脈縮窄術による圧負荷を加えると、TLR2KOマウスでは圧負荷後の心組織における炎症反応が抑制されており、心筋細胞肥大及び心線維化は軽減したが、心機能の低下を認め、代償性心肥大が障害されることが分かった。骨髄移植実験を行うと、骨髄由来細胞ではなく、心組織に発現しているTLR2が重要な役割を果たしていることが分かった。細胞実験では、TLR2特異的リガンドを心筋細胞、線維芽細胞及び血管内皮細胞に負荷すると、転写因子NF-κB及び炎症性サイトカインIL-1β依存性に心筋細胞肥大及び線維芽細胞増殖、血管内皮細胞増殖を誘導することができた。実際、野生型マウスにNF-κB阻害薬やIL-1βに対する中和抗体を投与すると、圧負荷に対する代償性心肥大が抑制された。また、細胞実験及び動物実験において、熱ショック蛋白質(HSP)70がTLR2シグナルを活性化しうることを見出し、さらに圧負荷心肥大を誘導したマウスの血液中でHSP70濃度が上昇していることが分かった。野生型マウスにHSP70に対する中和抗体を投与して圧負荷を加えると、心組織における炎症反応及び代償性心肥大が抑制された。以上から、細胞外HSP70により誘導されるTLR2を介した非感染性炎症反応が、心臓の圧負荷に対する適応応答に重要な役割を果たすことが分かった。以上の結果は論文として報告した。 以上の結果は、心リモデリングにおける自然免疫受容体及びその内因性リガンドの重要性を示唆するものであり、その制御機構の今後の解明が、高血圧性心疾患や心不全の新たな治療法の開発につながるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、圧負荷心肥大の病態生理における自然免疫受容体TLR2の役割及びそのメカニズムの解明を計画していた。平成25年度における検討により、その目的を達成することができ、さらに次年度に計画していたTLR2に対する内因性リガンドの同定を一部ではあるが行うことができ、論文報告をすることができた。よって、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えらえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に予定していた研究計画はおおむね順調に進めることができたため、引き続き研究計画に従い、圧負荷心肥大における他の自然免疫受容体の役割について検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は研究計画が予想よりも順調に進んだため、平成25年度使用額が予定よりも低い額でおさまった。 平成26年度は、本研究における新たなサブテーマに取り組む予定であり、そのテーマに予定よりも多くの予算をあてることで、研究計画の推進力の向上を得る。
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Research Products
(12 results)