2013 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病と心血管病におけるS100A8蛋白の分子機能解析と新規治療法開発
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25860587
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荷見 映理子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70599547)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 新規アディポカイン / S100A8蛋白 |
Research Abstract |
本研究はメタボリックシンドローム及び心血管疾患におけるS100A8の機能を明確にし、さらにはS100A8が組織炎症を惹起する分子機構、S100A8を介するシグナルを明らかにすることで新規治療を開発することを目的としている。 昨年度は脂肪細胞特異的S100A8ノックアウトマウスの作成に成功し、高脂肪食負荷を行った。これにより、ノックアウトマウスは野生型マウスと比較してインスリン抵抗性に差が認められた。また、両者の脂肪組織から採取した非成熟脂肪細胞分画のFACAS解析を行ったところ、M2マクロファージ数に有意差が認められた。これらの結果から、脂肪細胞から分泌されるS100A8蛋白が脂肪組織の炎症を制御し、インスリン抵抗性に関与している可能性が示唆された。さらに、ノックアウトマウスと野生型マウスの脂肪組織から単離した脂肪細胞からRNAを抽出し、RNA sequenceを行ったところ、S100A8のシグナル下流に位置すると考えられる因子が同定された。この因子は脂肪細胞の分化に関する因子として報告されており、S100A8が脂肪細胞の分化を制御することでも、インスリン抵抗性に関与する可能性も示された。そこで、中和抗体を用いて、S100A8の脂肪細胞やマクロファージへのシグナルに対する介入を行うことで、脂肪組織炎症や脂肪細胞分化を抑制し、インスリン抵抗性への進展を抑制できる新規糖尿病治療となりうる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に挙げていた、脂肪細胞特異的S100A8ノックアウトマウスの作成に成功し、その脂肪組織での表現型を明らかにした。また、ノックアウトマウスの脂肪組織の解析を行うことで、S100A8の脂肪細胞やマクロファージへのシグナルに関与する因子を同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、培養脂肪細胞(3T3-L1)を用いて、遊離脂肪酸及び肥満脂肪組織で発現が増加することが知られているサイトカインの作用を検討する。さらに、脂肪細胞内のシグナル経路の解析を行い、肥満脂肪細胞でいかにしてS100A8の発現が誘導されるかを明らかにする。一方で、マクロファージに対するS100A8の作用とそのシグナル経路を解析する。TLR4がS100A8の受容体として機能する可能性が報告されているが、マクロファージでの受容体については全く不明である。まず、TLR4が受容体であるかどうかをsiRNAによるノックダウン及び中和抗体を用いて検討する。。一方で、S100A8のマクロファージへの作用については、microarrayを用いてS100A8に反応する遺伝子群のプロファイリングを行い、これら炎症促進性遺伝子群の発現を制御するシグナル経路についての解析を行う。まず、各種シグナル分子阻害剤を用いた検討を行った後、siRNAによるノックダウン等でシグナル経路を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度の予算と合わせて、高額な器機を購入する予定のため。 研究では、メタボリックシンドロームと血管疾患の発症メカニズムの解明をS100A8を新規アディポカインに焦点をあて解明を行う。S100A8及びその制御機構を標的としたメタボリックシンドロームと血管疾患への新たな治療法を確立することを目的としている。In Vitroの実験系では臓器の関連性を再現することは困難であり、個体レベルの解析が必要不可欠である。そこで、S100A8 floxedマウスを用いたノックアウトマウスの作製など数ラインを維持繁殖させ、モデル動物の組織炎症のプロセスの解明と糖代謝への影響を詳細に検討する必要がある。以上のような実験動物飼育・交配、表現型解析や遺伝子機能解析、分子生物学的試薬に予算が必要である。
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[Journal Article] Diagnostic implication of change in b-type natriuretic peptide (BNP) for prediction of subsequent target lesion revascularization following silorimus-eluting stent deployment.2013
Author(s)
Eriko Hasumi, Hiroshi Iwata, Takahide Kohro, Ichiro Manabe, Koichiro Kinugawa, Naho Morisaki, Jiro Ando, Daigo Sawaki, Masao Takahashi, Hideo Fujita, Hiroshi Yamashita, Junya Ako, Yasunobu Hirata, Issei Komuro, Ryozo Nagai
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Journal Title
International Journa of Cardiology
Volume: 168(2)
Pages: 1429-34
DOI