2013 Fiscal Year Research-status Report
多臓器連関から捉えた治療抵抗性高血圧の分子生物学的機序の解明及び新規治療法の開発
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25860618
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
荒井 隆秀 慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (00383894)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子生物学的研究 |
Research Abstract |
本研究においては腎動脈交感神経除神経療法で血圧が低下するメカニズムを解明するとともに、この治療法を更に発展させた、新たな治療法の開発を目的としている。 (1)高血圧動物モデルの作成 高血圧動物モデルとして、ダール食塩感受性ラットを用いる。これは、6週齢から高塩分食を与えることで高血圧を呈するラットである。この動物モデルに関しては、既に安定して確立することを確認した。 (2) 腎臓を支配する交感神経の中枢部位を逆行性トレーサーを用いて同定 高血圧の治療が腎動脈の交感神経除神経のみで可能なのかについては、高血圧による腎実質障害などが求心性経路により視床下部傍室核を興奮させ、その刺激が交感神経を伝わる。その結果、腎臓におけるレニンアンギオテンシン系を活性化、カテコラミン発現の増加などが、高血圧の発症・維持に関わっているという説がある。そのためには、まず腎臓を支配する交感神経の中枢部位を正確に同定する必要がある。中枢部位を同定するために逆行性トレーサーである、pseudorabius virus(PRV)を用いた。これはシナプスを乗り越えて逆行性に神経をトレースできる性質があるため、末梢臓器の中枢を同定することができる。腎動脈壁にPRVを投与することにより、視床下部傍室核の一部がトレースされることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
PRVを用いて同定した視床下部が実際に高血圧モデルラットにおいて興奮していることをFunctionalMRIにて確認する予定である。しかしながら、ラットのFunctionalMRIはまだ技術的に困難が多く、安定した画像を得る事が非常に難しいのが現状である。 また最終的には臨床研究まで到達することを目標としているが、基礎的なデータが未だ不十分な状態で、臨床研究に進む事は現実的に難しく、その段階に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の臨床研究につなげるためにもまず、基礎的データを蓄積することが最重要であり、以下の検討を引き続き行う。 (1)中枢が興奮する際に交感神経を介して腎動脈レベルで起きる液性因子の変化を同定する。 中枢の興奮刺激が交感神経を伝わった結果、腎動脈レベルにおけるレニンアンギオテンシン系の活性化、カテコラミン発現の増加が、高血圧の発症・維持に関わっているという説を証明するために、まず高血圧動物モデルの腎動脈採血にてレニン、アンギオテンシン濃度およびアドレナリン、ノルアドレナリン含めたカテコラミン濃度をチェックする。更に我々は中枢が興奮する際に心臓において交感神経終末からノルアドレナリンとともに、NPYが放出されノルアドレナリンの作用を増強することを心臓において証明している。同様の現象が、腎臓においてもおきることを証明するためにNPY濃度も測定する。続いて、中枢の刺激でこれらが増加することを証明するために、腎動脈交感神経の中枢である、視床下部傍室核を電気刺激する。刺激により血圧上昇することを確認し、腎動脈採血施行し、レニン、アンギオテンシン濃度、アドレナリン、ノルアドレナリン含めたカテコラミン濃度、NPY濃度をチェックする。 (2)高血圧動物モデルにおいて、腎動脈交感神経の遮断、および前述したNPYの阻害による血圧コントロールを実証する。 高血圧動物モデルにおいて、腎動脈交感神経を遮断した上で、NPY阻害薬を腎動脈の局所投与する。NPY阻害薬の局所投与により、腎動脈交感神経の遮断のみの場合より、有効に血圧コントロールができることを証明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定では基礎的検討および臨床的応用も含めて金額を計算したが、今年度は基礎的検討を中心に施行した。そのために臨床的研究に必要な費用が不要となった。 今後の予定として、本年度得られた基礎的見地を利用して、臨床応用も含めて検討している。その際には、投与する薬剤(阻害抗体)や様々なデバイス(カテーテル等)が必要になる可能性があり、それらの経費にあてる予定としている。
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