2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25860625
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
稲垣 夏子 東京医科大学, 医学部, 兼任助教 (10424368)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肥大型心筋症 / 心室中部閉塞型肥大型心筋症 / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度および26年度の2年間、肥大型心筋症(HCM)で東京医科大学病院を受診した435名の肥大型心筋症(HCM)患者の中で心室中部閉塞型肥大型心筋症(MVO)の診断基準を満たす30症例の臨床データを登録し、適切なインフォームドコンセントを得て、遺伝子解析用サンプリング採血および心電図、ホルター心電図、心エコー検査、心臓MRI検査、心臓カテーテル検査の各所見を登録した。また登録した症例に対し、既知の心筋疾患関連原因遺伝子67種についてIon Torrent PGM Systemを用いて網羅的に変異を検索した。 解析の結果、連続30症例中6例(20%)に遺伝子変異を同定したが、HCMの原因遺伝子とされるサルコメア関連遺伝子群の変異はミオシン結合タンパクC変異2例、ネブレット変異1例に過ぎなかった。その他の変異については、HCM類似病態(心ファブリー病)の原因遺伝子とされるαガラクトシダーゼ変異が2例と不整脈原性右室心筋症(ARVC)や左室緻密化障害(LVNC)の原因遺伝子であるデスモプラキン変異が1例であった。ことから、MVOは通常のHCMとは異なる変異パターンを示すことが明らかになった。通常のHCMでは約半数に病因変異が同定されるが、今回の解析おいて、MVO症例の80%では既知の原因遺伝子のいずれにも変異が検出されないことから、MVOはHCMとは病因・病態形成機序が大きく異なることが示唆される。また、その中でもAPHからMVOに進行した例には変異が見出されず、高度な非対称性中隔肥厚による内腔狭窄により心腔内に圧格差が生じMVOとして診断された例(ASH型)のみに変異が見出された。 なお、これまでに欧米人ではMVOにはMYL3やMYL2変異が見出されると報告されているが、日本人症例ではそれらの遺伝子に変異は見出されなかったため、欧米人と日本人では原因遺伝子変異のパターンが異なる可能性が考えられた。
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