2013 Fiscal Year Research-status Report
心房細動の進展における心房周囲脂肪の電気的、構造的リモデリングへの影響
Project/Area Number |
25860626
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
奥村 恭男 日本大学, 医学部, 助教 (20624159)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心房細動 / 心房周囲脂肪 / メタボリック症候群 |
Research Abstract |
心房細動(AF)患者では、メタボリック症候群に随伴する内蔵脂肪の増加が心房周囲にみられると報告されている。しかしながら、AF患者にみられる心房周囲脂肪(EAT)が、電気生理学的、構造的に心房筋に影響を与えているか不明である。そこで、AFの進展におけるEATの役割を明らかにするため、動物実験を行った。ブタ(10頭中7例済)を、生後8週後から高脂肪食を与える群(5頭中4頭済)と通常食を与える対照群(5頭中3頭済)に分け12週間餌付けし、電気生理学的検査を施行した。右房、左房での不応期は、両群間で差がなかったが、各肺静脈での不応期は、脂肪食群は対照群より有意に短かった(中央値 120[115-128]ms vs. 147[143-163]ms, P = 0.0323)。左心耳からの5秒間の高頻度刺激にてAFは全例誘発されたが、持続時間は脂肪食群で長い傾向を呈した(73 [34-470]秒 vs. 24 [22-35]秒, P = 0.1084)。洞調律時の電位波高は、両心房で両群に差はなく低電位領域も認めなかったが、肺静脈は脂肪食群で高い傾向を呈した(4.2[2.9-5.5]mV vs. 2.1[1.2-2.7]mV, P = 0.0771)。AF維持に関連するAF中の分裂電位(CFAE)に関しては、両群での局在は類似しており、肺静脈入口部に集中していた。以上より脂肪食群では、肺静脈から肺静脈入口部にAFを発症させる電気生理学的基質を有していると考えられる。しかしながら、低電位領域がないことから、線維化などの構造的変化は存在しない可能性が示唆される。現在、組織学的検討を行っている。 臨床研究:持続性AF患者60例に術前にCTを施行し、肺静脈隔離後、三次元マッピング上に統合されたEATの近接する心房内膜部位への焼灼を追加した。アブレーション後23%に再発を認め、高い成功率を有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験は、対照群5頭、脂肪食群5頭の合計10頭を予定しており、現在7頭まで行っている。現在残りの3頭を飼育中であり、平成26年中旬には全例行う計画となっている。 脂肪食群の肺静脈の不応期が短いこと、心房細動の持続期間が長い傾向にあることなど、心房細動の素地となり得る電気生理学的基質を有しており、当初予想された結果がえられている。しかしながら、ブタでの心房周囲脂肪内に存在するganglionated plexus(GP)の存在部位を同定するため、心房、肺静脈各部位で高頻度心房刺激を行ったが、GPの存在を支持する徐脈、ブロックなど迷走神経反射の反応を示さなかった。また、頻回の刺激によりブタが容易に死亡するため、高頻度心房刺激を行うプロトコールは現在は中止とした。このため、ブタの心房周囲脂肪の局在及び心房周囲脂肪内に存在する神経叢であるGPの局在は不明である。従って、AFの進展と心房周囲脂肪との直接的関連性に関しては、今後の組織学的検討が重要となってくると考えられる。組織学的検討を含め、平成26年中旬以降に終了する予定であり、平成26年下旬には発表、論文作成が可能な状態になると予想される。 臨床研究は概ね終了しており、持続性心房細動患者に対する心房周囲脂肪を標的にしたアブレーションの有効性が得られている。現在、持続性心房細動患者に対する心房周囲脂肪を標的にしたアブレーションの有効性に関する研究論文の作成は終了しており、海外誌Heart Rhythmに投稿中である。 平成26年3月に開催された日本循環器楽学会にて心房周囲脂肪と心臓周囲神経節であるganglionated plexusの局在に関しての研究報告を発表した。現在論文作成中である。臨床研究に関しては、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
心房周囲脂肪及びganglionated plexusの局在は同定できていないため、組織学的検証で同定する試みを行っている。心房周囲脂肪に近接する心房筋には、神経線維、神経節が多く存在する可能性が示唆されるため、組織学的に、心房内に存在する神経線維、神経節の局在を今後詳細に検討していく予定である。 電位波高は正常であり低電位領域がないことから、現時点においては組織学的に線維化などの変化を呈していない可能性が高い。恐らく、生後20週のブタは、ヒトでは成人前に相当するため、線維化を強制的に引き起こす方法を介入させる必要があると考えられる。具体的には、ペースメーカ植込を行い、高頻度心房刺激を数週間行い、心房細動モデルを作成する必要がある。当初の予定では、餌付け中にペースメーカ植込を行う予定であったが、飼育上困難が予想されるため今回は行わなかった。今後、ブタ数頭にペースメーカ植込を行い、現実的に施行可能か否か検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残り3頭のブタの飼育料及び海外学会(第35回米国不整脈学会)への渡航費、宿泊費、参加費のため。 ブタ3頭の飼育代:203,902円、海外学会(第35回米国不整脈学会)の渡航費:126,360円、海外学会(第35回米国不整脈学会)の宿泊費:62,844円、海外学会(第35回米国不整脈学会)の参加費:110,796円
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Research Products
(2 results)