2014 Fiscal Year Research-status Report
EGFR-TKI によるEMTを介した肺癌の薬剤耐性獲得と肺線維化機序の解明
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25860643
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田村 大介 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (80646597)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)に対する肺癌細胞の薬剤耐性化獲得機序を解明するために研究に取り組んだ。まず上皮-間葉移行(epithelial-mesenchymal transition:EMT)に着目したがEGFR-TKI投与により肺癌細胞株のEMT様の変化が発生しなかった為、EGFR-TKIにより誘導される薬剤耐性クローン(drug-tolerant persisters: DTPs)の構成成分に着目して実験を進めた。EGFR遺伝子変異陽性肺癌細胞株(PC9)にEGFR-TKIを暴露させると経時的に幹細胞マーカー(Oct3/4, Sox2, Nanog, c-Myc, CD44)の発現が上昇することをqRT-PCRで確認した。さらにDTPsの状態の肺癌細胞を細胞老化の染色法の一つであるSA-β-gal染色を行うと陽性に染まる細胞を6割程度に認めEGFR-TKI刺激により肺癌細胞株において細胞老化も誘導されることが示唆された。以上より申請者らはEGFR-TKI投与後に残存するDTPsが癌幹細胞と細胞老化を起こした細胞の少なくとも2種の異なる細胞群で形成されることを発見した。 申請者らがこれまでに行ってきた研究からDTPsには癌幹細胞と老化細胞が含まれている可能性が強く示唆されている。現在のところ耐性株を標的とした薬剤開発が進んでいるが未だ十分な成果は得られておらず耐性株の出現を防止する治療法の開発も進んでいないのが現状である。その原因として再発の途中段階であるDTPsから生成してきた肺癌再発組織ではEGFR-TKIに耐性になっているだけではなく癌組織の多様性も再度獲得されていることがあらゆる抗癌剤への耐性につながっている可能性がある。本研究では遷移状態であるDTPsの排除を行うことで、再発の阻止を目指している。これまでDTPsを標的とした治療戦略は存在せずDTPsの解析についてもほとんどなされていない点で我々の研究は意義深い。さらに、この研究は肺癌診療の改善と肺癌死の克服に寄与する可能性があり、非常に重要な研究であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に予定していたEGFR-TKIの(1)薬剤耐性と(2)薬剤性肺線維化におけるEMT の関与について明らかにすることを目的とした実験は、上記研究実績の概要に示した通り、関連性が見られなかったため、DTPsに着目して実験を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究から、EGFR-TKI投与後に残存するDTPsが癌幹細胞と細胞老化を起こした細胞の少なくとも2種の異なる細胞群で形成されることを発見した。本研究では、(1)EGFR-TKI投与過程で生じる癌幹細胞と老化細胞からなるDTPsの形成機序の解明、(2)DTPsを排除することによる耐性克服という新たな治療戦略の構築を目的に下記実験を行っていく。 すなわち、EGFR遺伝子陽性肺癌細胞株に対してEGFR-TKIを投与し、DTPsを作成する。癌幹細胞の表面マーカーのひとつであるCD133を用いて、DTPsよりCD133 high/lowの細胞群に分離し、①CD133 high群の細胞集団が癌幹細胞の特性を有すること、②CD133 low群の細胞集団が細胞老化を起こした細胞の特性を有することを検討し、DTPsを構成する細胞集団の特性を評価する。 次にマウス移植モデルにて、糖代謝の変化を利用した新規の治療法によりCD133 low群の細胞を排除できるかを評価する。またCD133 high群に対しては幹細胞を標的とした薬剤として報告されているwithaferin Aを用いた実験によりCD133 high群を排除できるかを評価する。これらの実験により、DTPsの形成を阻止する治療法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
端数として処理困難であったから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費に組み込む。
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