2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病におけるアンドロゲン受容体シグナルの重要性
Project/Area Number |
25860668
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
坂入 徹 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20455976)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アンドロゲン受容体 / 腎線維化 / 急性腎障害 / 慢性腎臓病 |
Research Abstract |
これまでの疫学研究から、アンドロゲンシグナルが慢性腎臓病や糸球体腎炎の発症や進行に寄与している可能性が考えられている。一方で、アンドロゲンシグナルが急性腎障害に対して腎保護的に作用する可能性も示唆されている。 我々は、アンドロゲン受容体が、マウス腎において、近位尿細管に特異的に発現していることを免疫染色で確認した。次に、腎障害における、アンドロゲンシグナルの役割を調べるため、アンドロゲン受容体ノックアウトマウス(AR-KO)を用いた解析を行った。まず、定常状態において、AR-KOマウスは、野生株マウス(WT)に比べて、体重および腎重量が有意に少なかったが、血清尿素窒素、血清クレアチニン、尿中アルブミン値はWTマウスと差がなかった。次に、慢性腎臓病のモデルとして、尿細管障害と間質線維化を呈する片側尿管結紮モデル(UUO)を作成した。尿管結紮14日後に腎を摘出し、WTマウス腎と比較した。この際、線維化マーカーとしてα-smooth muscle actin (αSMA) を用いた。AR-KOマウスのUUO腎では、WTマウスのUUO腎に比べ、αSMAのmRNAの発現が有意に高いことが分かった。しかし、ウエスタンブロット法での解析では、両マウス間でαSMAの蛋白レベルでの発現に有意差を見出すことができなかった。続いて、急性腎障害モデルとして片側腎摘出+片側腎虚血再灌流(Nx+IR)を作成した。AR-KOマウスでは、虚血再灌流後、24時間における血清尿素窒素と血清クレアチニン値が、WTマウスに比べ、有意に上昇していた。72時間後にはその差が消失していた。 以上より、アンドロゲンシグナルは、慢性腎臓病、および、虚血による急性腎障害に対して腎保護的に作用することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
UUOモデルマウスを用いた実験で、AR-KOマウスはWTマウスに比べ、線維化マーカーであるαSMAがmRNAレベルで有意に上昇していたが、蛋白レベルでは差がなく、AR-KOマウスとWTマウスの腎線維化の程度について、明確な差を見いだせていない。 また、Nx+IRモデルを作成する実験においても、AR-KOにおいて作成24時間後の血清尿素窒素とクレアチニンがWTに比べて有意な上昇を認めたものの、その機序の解析が行えておらず、腎に発現しているアンドロゲン受容体からのシグナルが腎保護的に作用していることを証明できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
UUOモデルマウスを用いた実験については、解析するマウスの数を増やし、AR-KO腎とWT腎の間で、αSMAのmRNAおよび蛋白レベルでの発現に差が認められるかどうかを再度解析する。また、他の線維化マーカーや尿細管障害マーカーの発現も解析する。以上により、AR-KOマウスで腎線維化が促進するであろうというプレリミナリーな結果に再現性があるかどうかを確認する。 また、Nx-IRモデルを用いた実験については、AR-KOで24時間後に腎機能障害が増強する機序について解析する。アンドロゲン受容体シグナルは、細胞増殖や抗アポトーシス作用を有していると考えられており、障害腎の近位尿細管において、細胞増殖促進やアポトーシスの抑制を介して障害を抑制している可能性がある。Nx-IRモデルを作成したAR-KO腎とWT腎を用い、免疫染色やTUNNEL染色を行い、増殖やアポトーシスの頻度を解析し、この仮説を証明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスを使用した腎疾患モデル実験の進捗がやや遅れており、その後に予定していた、腎組織を使ったリアルタイムPCR法やウエスタンブロット法、免疫染色等の実験がまだ行えていないため。 リアルタイムPCRを行うための試薬、ウエスタンブロット法や免疫染色を行うための抗体、その他の試薬を購入する。マウスを増やす予定であるため、飼育費として使用する。
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