2013 Fiscal Year Research-status Report
PGC-1α-ERRα経路を標的とした糖尿病性腎症の新規治療法の開発
Project/Area Number |
25860680
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田邊 克幸 岡山大学, 大学病院, 助教 (40534805)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 糖尿病性腎症 / mitochondrial biogenesis / 血管内皮成長因子 / ポドサイト / 核内受容体 |
Research Abstract |
本研究は糖尿病性腎症の発生と進展においてmitochondrial biogenesis制御経路であるPGC-1α-ERRαが糸球体上皮細胞(ポドサイト)での血管内皮成長因子(VEGF)の発現を促進させるという仮説の下、この経路の遮断が糖尿病性腎症に対する新規の治療標的となる可能性を検討することを目的としている。 まず、糖尿病性腎症におけるPGC-1α-ERRα経路の変化を検討するため、8週齢C57BL/6マウスに50mg/kgのstreptozotocin(STZ)を5日間腹腔内投与して1型糖尿病モデルを作成した。STZ投与から4週後の血糖値はSTZ非投与での136±21.3mg/dlに対してSTZ投与では358.8±74.2mg/dlであった。これらのマウスを、その後4週と8週で屠殺した。尿中アルブミン/Cr比は8週で各々359±298対985±392μg/mgとSTZ投与マウスで軽度の増加を認めた。腎臓でのVEGFの発現も8週のSTZ投与群でReal-time PCRにより約1.3倍の増加と比較的軽度であった。腎組織のwestern blotではERRαとPGC-1αの発現に2群間で有意差が認められず、Real-time PCRではERRαはSTZ投与群で増加する傾向があるも有意に至らなかった。PGC-1α-ERRα経路は早期の腎症の発生よりも、その後の進展への関与が大きいことが示唆された。 また、アルブミン尿の発生に重要なポドサイト障害への関与を検討するために、培養マウスポドサイトを高ブドウ糖(25mM)下で培養し、通常ブドウ糖(5.5mM)下での培養と比較検討した。高ブドウ糖刺激後12、24、48時間でのVEGFとERRαの発現についてreal-time PCRにより検討し、いずれの発現も増加する傾向が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Jackson研究所より購入予定であったERRαノックアウトマウスの搬入が大幅に遅れたために、ERRαノックアウトマウスに1型糖尿病を誘発し、糖尿病性腎症の発生・進展の抑制を検討する実験に使用するhomozygousのノックアウトマウスを準備することができなかった。現在、ERRαノックアウトマウスを繁殖を開始させており、マウスが得られ次第、これを使用した実験に着手する予定である。 野生型マウスにSTZを投与して糖尿病モデルを作成し、PGC1α-ERRα経路の発現変化について検討したが、高血糖の確認から8週後でも尿中アルブミン排泄の増加が小さい上にVEGFの発現増加も著明でなく、この時点でのPGC1α-ERRα経路の活性化を明確に示すことができていない。更に明らかな腎障害が出現する12週での検討を行うために、現在、糖尿病マウスモデルを作成している。
|
Strategy for Future Research Activity |
糖尿病性腎症におけるPGC1α-ERRα経路の発現変化に関して、高血糖の確認後から4週と8週では明確な差が認められなかったために、野生型マウス(C57BL/6J) にStreptozotocin (STZ) を腹腔内投与し、高血糖の確認から12週で屠殺して腎臓を摘出して、PGC1α-ERRα経路に関連する蛋白質発現(PGC1α、ERRα、FAO等)とmitochondrial biogenesis関連因子、酸化ストレスの変化について検討する。また、この経路の糖尿病性腎症に対する治療的意義を検討するために、ERRαノックアウト(KO) マウス(Jackson Laboratory にて購入し、現在繁殖中)と野生型マウスとにSTZを腹腔内投与して1 型糖尿病モデルを作成し、高血糖の確認後から12週で24 時間蓄尿と採血を行って屠殺し、腎臓を摘出する。採取した腎組織より光学顕微鏡、凍結切片、電子顕微鏡用の標本を作成し、また腎皮質よりDNA、RNA、蛋白を抽出し、以下の項目について非糖尿病マウスとの間で比較検討を行う。評価項目として、腎機能(血清Cr、24時間Ccr、尿中アルブミン/Cr比)、組織学的変化、炎症・線維化関連因子、mitochondrial biogenesis関連因子、ERRαと血管新生関連因子を比較検討する。更に、その経路の薬理学的遮断が実際に糖尿病性腎症を改善し、治療薬となり得るか否かを検討するために、糖尿病マウスに対してERRα阻害薬を投与し、上記の評価項目について同様に薬剤非投与マウスと比較検討する。また、高血糖のポドサイトへの直接傷害におけるPGC1α-ERRα経路の関与を検討するために、高ブドウ糖濃度下で培養したポドサイトにERRα阻害薬を投与し、VEGF産生と酸化ストレスの産生への抑制効果について検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ERRαノックアウトマウスの搬入が遅れたため平成25年度中のマウスの繁殖(genotypingを含む)と実験にかかる研究費の未使用額が生じた。また、糖尿病マウスと非糖尿病マウスの間でのPGC1α-ERRα経路の発現変化について、高血糖の確認後4週と8週では明確な差が認められず、12週での検討を行うこととしており、mitochondrial biogenesisと酸化ストレスの変化に関する検討も12週で行うこととしたために、これにかかる研究費に未使用額が生じた。 平成26年度は、糖尿病モデル作成から12週でのPGC1α-ERRα経路の変化とmitochondrial biogenesis及び酸化ストレスの変化について検討し、この経路の治療的意義を確認するために繁殖させたERRαノックアウトマウスでの糖尿病性腎症進展抑制の可能性についての検討と、ERRα阻害薬による糖尿病性腎症の治療効果についての検討を行う。また、培養ポドサイトへのERRα阻害薬投与の効果も検討する。これらの方策の実施のために、実験動物の購入・繁殖(genotypingを含む)、動物実験用消耗品、各種の抗体やアッセイキット、試薬、培養メディウム等に研究費を使用する。
|