2013 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病原因因子DJ-1による異常ミトコンドリア・タンパク質除去機構の解明
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25860697
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
仁木 加寿子 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50447645)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | DJ-1 / パーキンソン病 / PARK7 / プロテアーゼ |
Research Abstract |
[DJ-1とBeclinの相互作用によるMitophagy調節] パーキンソン病とミトコンドリアの関係は古くから示唆されています。DJ-1を欠損させるとミトコンドリアの膜電位が低下することをすでに明らかとしていますが、そのメカニズムは不明です。そこで、DJ-1がミトコンドリア調節を行う際にパートナーとなる因子を探索し、Mitophagy(ミトコンドリアで起きるオートファジー)に関与するBeclin1とDJ-1が結合することを見出しました。 [DJ-1のプロテアーゼ機能の解析] DJ-1のX線結晶構造解析から、DJ-1は古細菌のプロテアーゼiと構造が酷似している事が示唆されました。申請者はC末端領域を欠損したDJ-1プロテアーゼを大腸菌を用いて作製・精製し、プロテアーゼ活性を有する事を見出しました。また、申請者らはストレス条件下でDJ-1のC末端が欠損する事を以前見出しています。これらのことから、生体内においてDJ-1が切断を受けプロテアーゼ活性を持ち始めると考えられます。そこで、本研究では、まずDJ-1のプロテアーゼとしての性質・機能・基質の探索を行いました。DJ-1プロテアーゼはpH5.5で最も活性が高くなる事、NaClが増加する程活性が低下する事、Cu存在下で活性が低下する事を見出しました。また、切断配列の絞り込みにも成功し、DJ-1プロテアーゼが好んで切断する配列を明らかとし、それを元に基質候補を絞り込み、いくつかの基質候補が実際にDJ-1によって切断される事を見出しました。 [DJ-1の分泌機能の解明-神経細胞保護機能-] 申請者はこれまでに、家族性パーキンソン病患者で報告されている変異型DJ-1の細胞外への分泌が野生型DJ-1に比べて少ないこと、酸化ストレス条件下においてDJ-1の分泌により共培養した神経細胞の細胞生存率が増加した事などを明らかとしています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[DJ-1とBeclinの相互作用によるMitophagy調節] DJ-1とBeclinの結合が直接的である事、酸化ストレス下で強くなることなど、DJ-1とBeclinの分子間の解析は終了しました。しかしその分子間相互作用がMitophagyにどのように影響するかについての解析がまだ行われていないため、この項目は「おおむね順調に進展している」と言えます。 [DJ-1のプロテアーゼ機能の解析] DJ-1のプロテアーゼとしての特徴の解明を行い、DJ-1によって切断される配列の特定を行いました。また、特定された配列とDJ-1との関与がこれまでに指摘されていたタンパク質および関与が推測されるタンパク質をターゲットに切断配列の有無を調べ、基質候補の中から、DJ-1によって直接切断されるものを見出しました。この項目に関して、研究は「当初の計画以上に進展している」と言えます。 [DJ-1の分泌機能の解明-神経細胞保護機能-] DJ-1による神経保護機能が、本当に分泌されたDJ-1によるものなのか確かめるために、分泌されたDJ-1を補足できる抗DJ-1抗体を探索しました。見つけた抗体を用いて、細胞に分泌されたDJ-1を補足した時の神経細胞の酸化ストレスへの脆弱性を確かめたところ、抗DJ-1抗体の添加によって明らかに神経細胞の酸化ストレスへの脆弱性が高まりました。このことから、この項目について「おおむね順調に進展している」と言えます。
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Strategy for Future Research Activity |
[DJ-1とBeclinの相互作用によるMitophagy調節] パーキンソン病とミトコンドリアの関係で最近注目を集めているのはPINK1/Parkinの関与するMitophagyです。この系へのDJ-1の関与も十分に考えられますが、PINK1欠損細胞のrotenone投与による細胞死・ミトコンドリア断片化をDJ-1が抑制できるとの報告やその他の解析から、DJ-1によるミトコンドリア調節機構は、PINK1/Parkinとは別の機構によるものである可能性が高いと考えられます。当該年度でDJ-1とBeclinの分子間相互作用が明らかとなりましたので、今後はこの分子間作用がどのようにMitophagyに影響を与えているのか明らかにしていきたいと思います。 [DJ-1のプロテアーゼ機能の解析] 当該年度の解析は、大腸菌より作製・精製したタンパク質を用いたin vitro系での解析ですので、今後は培養細胞を用いたin vivoの系でも同様の結果が得られるのか確認したいと思います。また、得られた基質候補がin vivo系でも切断を受けるのかも解析する必要がありますし、その切断をDJ-1が調節することで担っている細胞内でのプロテアーゼとしての生理的機能を明らかとしていきたいと考えています。 [DJ-1の分泌機能の解明-神経細胞保護機能-] 当該年度の解析では、抗DJ-1抗体によって分泌DJ-1を補足した際に、神経細胞の酸化ストレスへの脆弱性が高まることを明らかとしましたので、今後は、この分泌されたDJ-1が分泌された状態で機能しているのか、神経細胞に再取り込みされることで機能しているのかを明らかにしていきたいと考えています。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
[DJ-1とBeclinの相互作用によるMitophagy調節] 予定では、当該年度に野生型マウスの胎児および野生型ラットの胎児を使用予定であり、妊娠マウスやラットは高額であるため、予算の多くを占めていました。しかし、当該年度において、DJ-1とBeclinの解析が分子間相互作用の解析にとどまり、本項目が「やや遅れている」状況であり、予定していた妊娠マウスやラットの検討が次年度になったことが、次年度使用額が生じた主な理由となります。 [DJ-1とBeclinの相互作用によるMitophagy調節] 次年度は前年度に行うはずであった、妊娠マウスおよびラットの胎児から初代培養細胞を用いての解析を早急に行う予定です。また、近年開発されたゲノム編集技術のCRISPRが大変効率が良く、ノックアウトマウスの作製および使用に比べて遥かに利便性も費用も良いため、積極的に取り入れ、解析に用いたいと考えています。
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