2013 Fiscal Year Research-status Report
SEREX/CEREX法によるMS患者血清/髄液中、新規自己抗原の検索
Project/Area Number |
25860698
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
武藤 真弓 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (10623671)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 発現クローニング / SEREX法 / AlphaLISA / 多発性硬化症 / バイオマーカー |
Research Abstract |
本研究は、遺伝子ライブラリーから網羅的に自己抗原を検索するSEREX(serological analysis of cancer antigens by recombinant cDNA expression cloning)法によって多発性硬化症(MS)の新規自己抗原を同定し、病態解析を推進することを目的とした。 gliomaのcell lineから得られたcDNAライブラリーとMS2名の血清を用いてSEREX法を行い5つの抗原候補蛋白を見出した。精製に至ったDDX39(DEAD Box Polypeptide 39)を含む3つの蛋白に対する抗体価をMS患者51名と正常対照46名の血清、MS患者50名と疾患対照44名の髄液を対象にELISA法を用いて測定した。その結果MS群でControl群に比して有意に高値を示したのは血清中のDDX39に対する抗体のみであった(P=0.003)。DDX39の免疫系における役割は十分に解明されておらず、MSとの関連を調べた報告はない。今回の結果から抗DDX39抗体がMS病態において何らかの役割を果たしている可能性があると考えた。またSEREX法の血清の代わりに髄液を用いる「CEREX法」を開発し、MS患者7名の髄液を用いて8つの抗原候補蛋白を見出した。精製に至った7つの蛋白に対する抗体価を上記の検体を対象に化学増幅型ルミネッセンス プロキシミティホモジニアスアッセイを用いて測定した。その結果Control群に比しMS患者で髄液IgGが有意に強く反応する抗原がANXA1を含め複数同定された。更に抗体価と患者の臨床データの比較検討を行い、髄液抗ANXA1抗体価と髄液タンパク量に有意な相関を認めた。この結果から髄液中抗ANXA1抗体は中枢へのリンパ球浸潤の抑制や脳血液関門の機能の脆弱化によりMS病態の悪化因子となっている可能性を想定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していた研究のうち、①SEREX法で標的抗原蛋白を同定し、精製に至ったDDX39を含む3つの蛋白に対する抗体価をMS髄液・血清およびコントロールの多数検体でELISA法により検討、②SEREX法を応用したMS急性期髄液を用いて行うCEREX法を実施、③②により同定し精製に至ったANXA1を含む7つの蛋白に対する抗体価をMS髄液・血清およびコントロールの多数検体で化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイを用いて検討。④①および③の検討の結果、MS検体で有意差のあった蛋白に対して抗体価と臨床データ(性別、髄液採取時年齢、 罹病期間、EDSS、髄液細胞数、髄液タンパク、OCBの有無、IgG index値)との相関について検討を行うことができた。血清抗DDX39 抗体、髄液抗ANXA1抗体は疾患マーカーの候補であり、またMS病態においてなんらかの役割を果たしている可能性があることを明らかにし、これらの結果を複数の学会で発表した(XXI World Congress of Neurologyなど)。 以上より、研究は順調に経過していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)DDX39/ANXA1のマウス・ヒト中枢神経内での分布を免疫組織化学により検討する。 2)MSの動物モデル(EAE)に対するDDX39/ANXA1蛋白および抗体の投与を行う。 3)DDX39/ANXA1のノックアウトマウスの樹立を目指す。作成できればEAEに応用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に行う予定であった免疫組織化学的検討を次年度に延期したため、購入予定であった抗DDX39モノクローナル抗体および抗ANXA1モノクローナル抗体、免疫染色に使用する各種試薬の費用を次年度使用予定としたため。 次年度は免疫組織化学的検討に加え、マウス・ヒト中枢神経内でのDDX39、ANXA1の病態への関与、MSモデルマウスに対する抗DDX39、ANXA1モノクローナル抗体投与の効果を明らかにする実験を進めていく。 残額は海外・国内での研究成果の発表のための交通費等に充てる予定である。
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