2013 Fiscal Year Research-status Report
球脊髄性筋萎縮症患者由来iPS細胞の樹立とポリグルタミン病の病態研究
Project/Area Number |
25860722
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
二瓶 義廣 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60468501)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 球脊髄性筋萎縮症 / アンドロゲン受容体 / 凝集体 / dihydroteststerone |
Research Abstract |
1例の球脊髄性筋萎縮症(SBMA)患者からiPS細胞(iPSC)を樹立し、神経細胞のマーカーであるTuj1陽性細胞及び運動ニューロンのマーカーであるHb9, islet1陽性細胞への分化を確認した。分化誘導したニューロンについてアンドロゲン受容体(AR)の発現をフィルターリターデーションアッセイを用いて解析を行ったところ、コントロール(パーキンソン病患者由来iPSCから樹立したニューロン)と比較してdihydroteststerone(DHT)への反応性が有意に高いことおよび17-AAGにより凝集ARが分解されることも確認した。しかし、免疫染色ではDHT添加によるARの核内封入体は確認できなかった。 次に、フィルターリターデーションアッセイを用いてSBMA由来線維芽細胞、iPSC由来神経細胞のDHTに対する凝集ARの増加率を健常コントロール(hc)と比較した。SBMA由来線維芽細胞では神経細胞と異なり、凝集ARはほとんど認められなかった。hcでも同様の傾向であった。SBMA-iPSC由来神経細胞の凝集ARの割合はhc-iPSC由来神経細胞より有意に高値であり、DHTに対する反応性は神経細胞で特に強く見られる現象であると考えられた。 以上の結果から、SBMA-iPSCは病態研究の新たなツールとなり得るのと同時に、薬剤スクリーニングのツールにもなり得ることが示された。また、免疫組織化学的にARの凝集体、核内封入体が認められなかったことからは、SBMA-iPSC由来神経細胞が神経変性、神経細胞死に至るまでには長期間を要する可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1例のSBMA-iPSCの樹立と運動ニューロンへの分化誘導に成功し、ウェスタンブロットとフィルターリターデーションアッセイなどでSBMAの生化学的特徴であるARの凝集の再現を行うことができ、更に動物モデルで効果が確認されている17-AAGがARの分解を促進することが確認できた。生化学的解析は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
更に3-4例程度のSBMA-iPSCの樹立を行う。樹立したSBMA-iPS由来運動ニューロンについて、前述の症例と同様に凝集ARの異常についてウェスタンブロットやフィルタートラップアッセイなどによる生化学的解析および蛍光抗体法による細胞生物学的解析を行う。さらにリュープロレリンや17-AAGなどの添加による凝集ARの発現量減少を確認し、病態モデルと薬剤スクリーニングツールの確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度は1例のSBMA-iPSCの生化学的解析を中心に行い、他の症例のSBMA-iPSCの樹立は翌年度以降に行う方針とした。iPSCの樹立には、培養液に使用するKnockOut Serum Replacement (Invitrogen®)をはじめとして多額の費用が掛かり、試薬代のみで1症例当たり最低でも50万円程度は必要となる。4症例であれば200万円必要となり、来年度以降に残りの予算を繰り越す必要がある。 3-4症例のSBMA-iPSCの樹立を目指す。前述の通りiPSCの樹立には1症例あたり50万円程度は必要となり、iPSC樹立に必要な試薬代として主に予算を使用する。
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