2013 Fiscal Year Research-status Report
GGGGCCリピートRNAに着目したALS遺伝子ネットワークのin vivo解析
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25860733
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
上山 盛夫 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第四部, 科研費研究員 (20386593)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 脳神経疾患 / RNA / 遺伝子 / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は原因遺伝子が近年多く同定されてきたが、未だに治療法が確立されておらず、病態解明が切望されている。近年、C9ORF72遺伝子非翻訳領域のGGGGCCリピートの異常伸長RNAが発症原因としてALS患者から発見された。驚くべきことに、神経細胞内における異常蛋白質の蓄積により形成される封入体から、既知ALS原因分子p62とTDP-43、もしくはUBQLN2が発見された。このことから、異常伸長リピートRNAを中心に、これら分子間の相互関係を明らかにすることがALSの共通発症分子メカニズムの解明につながると考えられている。 そこで、本研究では、まず異常伸長リピートRNAを中心としたALS原因遺伝子のin vivo における相互関係を明らかにするために、GGGGCCリピートRNAを発現する新規ALSモデルショウジョウバエの樹立を試みた。GGGGCCリピート数が正常長(9リピート)、あるいは異常長(50または100リピート)のRNAを発現するトランスジェニックショウジョウバエを作製した。神経特異的にGGGGCCリピートRNAを発現させたところ、異常長を発現する個体において、顕著な生存率の低下、運動機能障害と寿命短縮が認められた。また、複眼に異常長リピートRNAを発現させたところ、光受容細胞および色素細胞の脱落などに伴う複眼神経変性が認められた。以上の結果から、異常伸長GGGGCCリピートRNAが神経変性を引き起こすモデル動物の樹立に成功した。さらに既知ALS原因遺伝子p62、TDP-43、FUSとの遺伝学的相互作用解析を複眼神経変性の表現型を指標に行ったところ、p62は相互作用しなかったが、TDP-43およびFUSは複眼変性がそれぞれ増悪および改善し、相互作用することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動機能障害や寿命短縮が異常伸長GGGGCCリピートRNAの神経での発現により引き起こされたため、新規ALSモデルショウジョウバエの樹立が成功したと判断した。また、複眼神経変性を指標として異常伸長GGGGCCリピートとALS原因遺伝子p62、TDP-43とFUSとの遺伝学的相互作用解析を完了している。以上のことから、全体的に研究計画がおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、樹立した新規ALSモデルショウジョウバエを利用して全ゲノムを対象とした遺伝学的スクリーニングを行い、ALSに共通する疾患関連遺伝子を同定することで発症分子メカニズムを明らかにする。 さらに研究申請後、リピートRNAがその二次構造から翻訳されることが報告されたため、ALS発症の原因としてリピートRNA由来のジペプチドリピートの蓄積も考えられるようになった。したがって、樹立した新規モデルショウジョウバエがリピートRNAの蓄積を起因としたALS発症モデル、リピートRNA由来のジペプチドリピートの蓄積を起因としたALS発症モデル、もしくは両者を共に起因としているかを検討するためにリピートRNA由来翻訳産物の有無を抗体で検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は、蛍光実体顕微鏡購入を含めて申請したが、交付された予算が申請金額より減額され、それ以外の物品を購入したことで、購入不能になったため。 今後の研究の推進方策にも示したように、申請後に新規知見が発見され、それに伴う当初計画していなかった実験を行う必要性が生じたため、新たな試薬等の物品が必要となり、それらの購入に使用する。
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