2013 Fiscal Year Research-status Report
褐色脂肪組織における熱産生抑制につながる自律神経ネットワーク
Project/Area Number |
25860735
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
突田 壮平 東北大学, 大学病院, 助教 (30623160)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メタボリックシンドローム / 肝糖代謝 / 自律神経系 / 褐色脂肪組織 |
Research Abstract |
本研究の目的は、研究代表者が見出した新規臓器間ネットワーク機構(自律神経系を介した肝臓と褐色脂肪組織との連関, Cell metab. 2012)の詳細な分子機構や中枢内での神経回路を明らかにし、また褐色脂肪組織以外の自律神経支配下の諸臓器への影響を検討することである。 1.肝臓における代謝変化の解析 アデノウイルス遺伝子発現システムを用いてマウスの肝臓選択的に急性に肝糖代謝の律速酵素グルコキナーゼを過剰発現させたところ、その発現量に依存して肝グリコーゲンおよび中性脂肪含量が増加した。マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析ではグリコーゲン合成および脂肪合成に関与する酵素の遺伝子の発現上昇が確認された。今後はメタボローム解析技術等の網羅的解析技術を用いた検討をすすめ、肝臓における代謝変化が求心性の迷走神経活動を変化させる詳細な分子機構を検討していく予定である。 2.自律神経支配下の諸臓器の解析 非観血式血圧測定機を用いて、肝臓においてグルコキナーゼを過剰発現させたマウスの心拍数・血圧測定を行ったところ、心拍数の低下を認めた。このマウスでは心拍数調節において重要な神経核である延髄吻側縫線核の活性低下を認めた。これらの結果は、肝糖代謝の変化が心臓自律神経の活動を制御することを示すものであり、この機構がメタボリックシンドロームの病態に関与する可能性が示唆された。一方、内蔵脂肪組織での脂肪分解・合成に関わる遺伝子の発現に変化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝グルコキナーゼの発現上昇が生じると、グリコーゲン合成および脂肪合成に関与する酵素の遺伝子の発現上昇し、肝グリコーゲンおよび中性脂肪含量が増加することが確認された。また、肝グルコキナーゼの上昇にともない肝糖代謝に変化が生じると、延髄吻側縫線核の活性低下、心拍数が低下が生じることから、肝臓と心臓とが連関するという新たな臓器間ネットワーク機構を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はメタボローム解析技術を用いた肝臓代謝物の変化の網羅的解析や、迷走神経節(肝臓と延髄孤束核をつなぐ神経経路上に存在する)における遺伝子発現変化を網羅的に解析を行う予定である。これらの結果から、肝臓における代謝変化が求心性の迷走神経活動を変化させる分子機構を検討していく予定である。また、レーザーマイクロダイセクション法を用いて脳幹部や視床下部を構成する神経諸核を核特異的に採取したのち、神経伝達物質や受容体等の発現変化を定量PCRにて解析する。どの分子がどの脳部位で変化しているかを解析することで、肝臓と褐色脂肪組織との連関における中枢内の神経経路を明らかにしたい。
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