2013 Fiscal Year Research-status Report
PPY細胞の細胞系譜の解明ー新規糖尿病治療法開発に向けて
Project/Area Number |
25860757
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
原 朱美 順天堂大学, 医学部, その他、研究員 (60570009)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | PPY細胞 / β細胞 / 分化転換 / 糖尿病 / 細胞系譜の追跡 |
Research Abstract |
一部の2型糖尿病モデルマウスでは、血糖値上昇に伴い、β細胞が減少し、PPY細胞が増加するが、生理的条件下でのPPY細胞の細胞系譜は明らかになっていない。本研究課題の目的は、β細胞からPPY細胞、PPY細胞からβ細胞など他の膵島細胞への分化転換の可能性を示し、糖尿病発症機構における生理的意義を解明することである。 実験計画1「生理的条件下におけるPPY細胞の細胞系譜の解明」 PPY遺伝子発現細胞の細胞系譜を解明するため、PPY遺伝子を追跡するPPY promoter-driven NLS-Creノックインマウス (PPY-Cre)を作製した。PPY-Creは、ROSA26-GFPマウスと交配する。そこから得られたマウスでは、一度でもPPY遺伝子を発現した細胞をGFPで標識し、細胞系譜を追跡することが出来る。平成25年度は、このマウスを用いて、膵発生過程、持続的高血糖条件下におけるPPY細胞の細胞系譜を組織学的に追跡する。 実験計画2「β細胞からPPY細胞への分化転換の可能性の解明」 1.高脂肪食負荷およびSTZ133mg/kg腹腔内投与 (HF+STZ)により、持続的な高血糖、β細胞の減少、PPY細胞の増加などの条件を満たし、本研究課題の遂行に適当な2型糖尿病モデルを作製した。 2.持続的な高血糖状態で減少するβ細胞の細胞系譜を追跡するため、一度でもインスリン遺伝子を発現した細胞ではGFPが発現し、β細胞の細胞系譜を追跡できるRIP-Cre; Rosa26R-GFPマウスで前述した2型糖尿病モデルを作製し、組織学的解析を行った。解析の結果、持続的高血糖が、β細胞でPdx1発現低下をもたらし、β細胞からPPY細胞へと選択的な分化転換を誘導することが明らかとなった。この結果は、申請者が第28回日本糖尿病・肥満動物学会で口頭発表し、若手研究奨励賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画1、2共に、申請者は、研究結果について研究室内で定期的なdiscussionを行いながら遂行した。 実験計画1、PPY遺伝子を発現した細胞を標識するためには、PPY-CreとRosa26R-GFPの2種類のマウスが必要であり、これらを交配し得られたマウス (PPY-Cre; Rosa26R-GFP)を実験に用いる。新規にPPY-Creを作製するため、コンストラクトの作製、マウスへの遺伝子導入、ファウンダーマウスの作製など多段階のステップを踏み、PPY-Creの作製を試みた。結果、申請者らは、実験計画通り、PPY-CreのF1マウス11匹を得ることが出来た。 実験計画2、本実験計画を遂行するための2型糖尿病モデルの作製では、まず、本研究計画の遂行に適切なSTZ負荷量を決定する必要があった。申請者らは、数種類の濃度のSTZをマウスに負荷し、12週間後に膵組織を解析、比較し、血糖上昇だけでなく、膵組織におけるβ細胞数、PPY細胞数の変化が観察できる条件を決定した。この2型糖尿病モデルを、一度でもインスリン遺伝子を発現した細胞がGFP標識されるマウスで作製し、実験計画通り、β細胞の細胞系譜の追跡を行い、結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験計画1、平成24年度に作製したPPY-Creと、既存のRosa26R-GFPと交配し、PPY-Cre; Rosa26R-GFPを作製、PPY細胞の細胞系譜の追跡を開始する。実験では、PPY-Cre; Rosa26R-GFPを用いて、胎生初期から膵発生が完了するステージにおけるPPY遺伝子発現細胞の細胞系譜を免疫組織化学的に追跡する。予想される結果を以下に示す。 胎生初期、未分化な内分泌細胞の中に、PPY遺伝子を発現するがインスリン遺伝子を発現しない細胞 (GFP (+), PPY (+), インスリン (-))が出現する。申請者は、正常発生における胎生中期以降、この細胞には、以下のような細胞系譜をとる細胞である可能性が考えられ、本研究課題の遂行により、明らかにする。 仮説1: 胎生初期に発現していたPPY発現が低下し、インスリンのみを発現する細胞へと分化する。つまり、PPY遺伝子発現細胞はインスリン遺伝子発現細胞への分化能を有することを示す。 仮説2: 胎生初期にPPYを発現した細胞は、胎生中期以降もPPYのみを発現する。つまり、PPY遺伝子発現細胞はインスリン遺伝子発現細胞への分化能を持たないことを示す。 実験計画2、実験計画の大部分は平成24年度に遂行できた。平成25年度は、平成24年度の解析結果の再現性、および2型糖尿病モデル作製に用いたSTZによる、β細胞からPPY細胞への分化転換への影響を明らかにする。具体的には、STZ負荷による高血糖誘導後、膵島移植により血糖改善させ、β細胞からPPY細胞への分化転換の有無を確認する。また、平成24年度に明らかにした、持続的高血糖条件において誘導されたPdx1発現低下を調節する転写因子を、細胞生物学的に明らかにする。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] The diabetes-susceptible gene SLC30A8/ZnT8 regulates hepatic insulin clearance.2013
Author(s)
Tamaki M, Fujitani Y, Hara A, Uchida T, Tamura Y, Takeno K, Kawaguchi M, Watanabe T, Ogihara T, Fukunaka A, Shimizu T, Mita T, Kanazawa A, Imaizumi MO, Abe T, Kiyonari H, Hojyo S, Fukada T, Kawauchi T, Nagamatsu S, Hirano T, Kawamori R, Watada H.
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Journal Title
Journal of Clinical Investigation
Volume: 123 (10)
Pages: 4513-4524
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Beneficial effects of vildagliptin combined with miglitol on glucose tolerance and islet morphology in diet-controlled db/db mice.2013
Author(s)
Ishibashi K, Hara A, Fujitani Y, Uchida T, Komiya K, Tamaki M, Abe H, Ogihara T, Kanazawa A, Kawamori R, Watada H.
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun.
Volume: 440 (4)
Pages: 570-575
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Exendin-4 improves β-cell function in autophagy-deficient β-cells.2013
Author(s)
Abe H, Uchida T, Hara A, Mizukami H, Komiya K, Koike M, Shigihara N, Toyofuku Y, Ogihara T, Uchiyama Y, Yagihashi S, Fujitani Y, Watada H.
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Journal Title
Endocrinology
Volume: 154 (12)
Pages: 4512-4524
DOI
Peer Reviewed
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