2013 Fiscal Year Research-status Report
脂肪組織におけるグルココルチコイドとスフィンゴ脂質分子群とのクロストークの解明
Project/Area Number |
25860770
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
橋本 剛 香川大学, 医学部, 助教 (80380153)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 前駆脂肪細胞 / 成熟脂肪細胞 / グルココルチコイド / デキサメタゾン / 脂肪細胞分化 / スフィンゴ脂質 / S1P / スフィンゴシンキナーゼ |
Research Abstract |
副腎から分泌されるグルココルチコイドは脂溶性であることから細胞膜を自由に透過して細胞内に入り、グルココルチコイド受容体(GR)を介して核へと移行し、生命維持にとって重要な多くの遺伝子発現を調整する。また、機能スフィンゴ脂質:スフィンゴシン1リン酸(S1P)の産生酵素であるスフィンゴシンキナーゼ(SphK)は、前駆脂肪細胞が成熟脂肪細胞へ分化する過程において重要な役割を果たすことを我々は報告している。そこで、脂肪細胞におけるグルココルチコイドとスフィンゴ脂質分子群との関連性について検討した。 まずは前駆脂肪細胞に対してデキサメタゾン(Dex)、活性型グルココルチコイド(Cortisol)および不活性型グルココルチコイド(Cortisone)単独刺激した際のSphK-1への影響を検討した。その結果、いずれのGR作動薬は用量依存的、時間依存的にSphK-1の著名な誘導をもたらすことを見出した。さらに、この発現誘導はGR遮断薬(Mifepristone)、およびGRに対する特異的siRNAによって抑制されることを確認した。DexはCortisolとCortisoneの代謝に関与する11beta-水酸化ステロイド脱水素酵素(11beta-HSD)の誘導をもたらすことから、Dexは11beta-HSDの発現上昇を介して、SphKの発現に対してもポジティブフィードバック機構が働く可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度、前駆脂肪細胞の単細胞系を用いた実験においてグルココルチコイド/SphK/S1Pの存在仮説を証明する結果が得られたことは、本研究全体の進行に重要であり、残り 1年間の具体的な目標と見通しを立てることができた。申請時における初年度予算として計上していたSphK-1を脂肪組織に過剰発現させたトランスジェニックマウスの樹立は、予算配分の都合上困難であったため、実験計画や予算使用計画は培養細胞を中心としたものに変更したが、当初の平成25年度の研究実施計画は概ね遂行できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の結果を受け、平成26年度はグルココルチコイド刺激による前駆脂肪細胞由来成分の新生血管構築能への影響を検討する。とくに、生体内における脂肪細胞の分化には血管内皮細胞との接触による細胞間相互作用が必須であるとの報告があり、さらにS1P/S1P受容体の細胞内シグナル伝達に大きな影響を与える血管内皮増殖因子(VEGF)は脂肪組織から分泌されるが、その機能は未だ不明である。そこで、脂肪組織と接触している血管内皮細胞の表面に発現しているVEGFおよびS1Pそれぞれの受容体を独立的にまたは協同的に刺激することで、脂肪組織への栄養血管の新生が促進されるか否かを検討する。さらに、ウシ大動脈由来培養血管内皮細胞とL1細胞との共培養系を作成して検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前駆脂肪細胞を分化させた成熟脂肪細胞の代謝は非常に高いため、分化の初期段階から2日に1回の頻度で培地交換が必要であり、予算の大半を培養細胞の培地および血清の購入費用に充てる必要がある。さらに、初年度の研究成果を踏まえ、次年度の研究の中心となり最も重要な研究は、脂肪細胞と血管内皮細胞との共培養系の構築となる。それぞれの培養細胞の培地および血清の購入、培養費用に研究費のおよそ60%を充てるため、次年度に繰り越すことにした。 培養細胞の培地および血清の購入、培養備品の購入費用として研究費の60%を充てる。次に重要な研究が、SphK-1トランスジェニックマウス樹立が困難となった当初計画の代替えとして、SphK-1強制発現細胞株の樹立と、グルココルチコイドによるSphK-1遺伝子発現調節に係わるプロモーター解析である。レポーター遺伝子ベクターにプロモーター領域を挿入した遺伝子組み換え実験の構築に必要な経費、およびルシフェラーゼ活性などのレポーターアッセイのキットの購入に研究費の35%を充てる。次年度は少なくとも当該研究課題に関する研究成果発表を予定し研究費の5%を旅費に充てる。
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