サイログロブリンによる甲状腺ホルモン分泌制御機構の解明

2013 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 25860772
• Research Category: Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
• Research Institution: Toho University
• Principal Investigator: 吉原 彩 東邦大学, 医学部, 助教 (10439995)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: 甲状腺機能 / サイログロブリン

Research Abstract

近年、甲状腺機能が、甲状腺濾胞内に蓄積するthyroglobulin (Tg)によって、濾胞機能をegative feedback に調節することが明らかとなった。このTgによる調節は、種々の甲状腺機能遺伝子発現、ヨード輸送、およびヨードの有機化の各段階に作用することが、申請者等の研究によって明らかとなった。本研究ではTg が甲状腺ホルモンの分泌に果たす役割を明らかにすることを目的としている。平成25年度は、ラット甲状腺FRTL-5 細胞を用い、Tg によって変動する遺伝子やタンパクをDNA マイクロアレイおよび質量分析によって網羅的に解析した。この結果、甲状腺ホルモンの分泌に係わっていることが予想されるMCT8がなどのトランスポーターのｍRNAがTgによって調節されていることが分かった。また、脂質ラフトを構成するタンパクの一種がTgによって変動することを確認した。さらに、このタンパクに対する阻害剤を用いることで、Tgの遺伝子発現作用が抑制されることが確認され、このタンパクがTgによる濾胞機能調節に重要な役割を担っていることが明らかになった。また、ヒト甲状腺細胞から得た初代培養を用いて、Tgによる甲状腺ホルモン分泌にかかわる機能遺伝子の調節を確認した。これまで、実験に用いていたFRTL細胞で確認したTgによる機能遺伝子の調節が、ヒト甲状腺細胞でも確認され、ヒト甲状腺細胞でもTgによる濾胞調節機能が行なわれていることが明らかとなった。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

これまで明らかになっていない、Tgによる甲状腺濾胞細胞への再吸収の過程に係わるタンパク、また合成した甲状腺ホルモンを血液中に分泌するために必要なトランスポーターのひとつを見いだすことができた可能性が高い。これらを見いだすことができたことは、甲状腺濾胞機能調節を解明する上で、大きな進歩と考えられるが、これらを実証するためには、さらに細かいTgの濃度、時間設定や阻害剤を用いた実験を行い、ｍRNA、タンパク発現の変化について実験を繰り返し、その他の有意なデータが必要である。さらにヒト甲状腺細胞を用いて、ヒト甲状腺細胞で再現性があるかを検証する必要がある。

Strategy for Future Research Activity

平成25年度にも一部行なったが、Tgによる甲状腺機能遺伝子への影響をヒト甲状腺初代培養を用いて検討を行う。　ラット甲状腺FRTL-5細胞は分化した内分泌機能を保持しているが、極性を持たずホルモン分泌能は評価できない。一方、甲状腺初代培養細胞をトランスウェル上で培養することで、細胞接着面が基底側、遊離面が内腔側という極性を維持した状態で培養可能であり、ヨードやホルモンの移動や分泌を検討可能である。そこで、バセドウ病手術時に得られたヒト甲状腺をコラゲナーゼ、ディスパーゼおよびトリプシンで処理して細胞を得、トランスウェルの膜上でconfluentに培養する。バセドウ病甲状腺細胞は５日間程度培養することで薬剤や自己抗体による刺激の影響無くほぼ正常甲状腺細胞と同等の反応性を有することは既に確認済みである。今回の研究において新たに見いだした遺伝子も含め、これまでFRTL5細胞を用いて行なった、Tgによる甲状腺機能遺伝子への影響をヒト甲状腺初代培養を用いて確認する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度にヒト全遺伝子型1色法解析を行う予定で、まとまった金額が必要であり、その他消耗品の購入も予定しているため。
ヒト全遺伝子型1色法解析、細胞培養、RNAやタンパクの解析用試薬類、 培養やディスポーサブル製品類、その他消耗品で使用予定である。