2013 Fiscal Year Research-status Report
抗β2-Glycoprotein I抗体による炎症性血栓形成機序の解明
Project/Area Number |
25860774
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中川 久子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 特任助教 (60615342)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | B2GPI / 補体 / 血管 |
Research Abstract |
本検討では、抗B2GPI抗体による補体活性作用とそれに伴う炎症性の血栓形成機序を解析し、APSや不育症の血栓治療へつなげることを目的とした。平成25年度は主に抗B2GPIの補体カスケードへの影響の検討、つまりB2GPIとC3の結合とそれに続く補体カスケード制御に対する抗B2GPI抗体の作用を解析した。1.抗B2GPI モノクローナル抗体を用いてB2GPIとC3 の結合への作用の検討。既報のとおりC3/B2GPIの結合を追認し、さらにC3/B2GPIに対し抗B2GPI抗体の結合を認めた。次に補体経路の最終産物であるC5b-9 の産生への影響を検討する為、健常人血清を用いたELISA 法を行った。古典経路によるC5b-9 の産生、第2 経路による産生を検討した。その結果、B2GPIによるC5b-9の産生抑制効果を抗B2GPI抗体が阻害することを認めた。その効果は主に第2経路で認められた。 2.抗B2GPI抗体の血管透過性への影響。血管内皮細胞を用いC3/B2GPI/factor H/factor IのC3a 産生による血管透過性への影響および抗B2GPI 抗体添加後の透過性の変化をFITC-dextran の透過により検討した。また同時に血管内皮細胞のVE カドヘリンのエンドサイトーシスを解析する為、抗VE カドヘリン抗体を用いて蛍光免疫染色により定量を行った。その結果、C3aの産生を確認した。血管透過性およびVEカドヘリンエンドサイトーシスへの影響は強いものではなかったが、抗B2GPI抗体を添加すると血管透過性およびエンドサイトーシスが亢進した。現在までの研究により、B2GPIによるC3以下の補体活性化制御を抗B2GPI抗体により抑制される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究と同時に、その他のB2GPIの新規機能を検討するため、腫瘍血管内皮細胞と腫瘍細胞に対する作用機序の解明も行っており、これらの解析の結果からB2GPIの腫瘍細胞に対する新規機能を発見した。また、当該研究と関連のないテーマではあるが、乳酸菌を使用した線虫の寿命延長機構の解明についても、乳酸菌の新規作用メカニズムを明らかにし、一定の成果を得ている。そのため申請時に想定していたエフォートが、実施中に変化したこともあり、平成25年度に予定していたin vitro実験の一部が実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度に実施することの出来なかった抗B2GPI抗体によるアポトーシス細胞への影響を検討する。抗B2GPI 抗体の結合domain はdomain I が重要であると報告されており、血中の抗B2GPI 抗体をdomain I の投与により補体への作用を抑制するものと予想される。これにより抗B2GPI 抗体の補体活性作用も打ち消されると考えられる。in vivo実験は、妊娠マウスおよびB2GPIを免疫したマウスを用いて、抗B2GPI 抗体およびB2GPI domain I, domain V, nicked B2GPI の投与による胎児の発育、およびマウスの胎盤血栓について各種マーカーを用いて解析を行い、抗血栓治療の新たな側面を検討する。
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