Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,マウスの同種骨髄移植モデルを用いてドナーT細胞内のMyD88シグナルの GVHDおよびGVL効果における役割を検討し以下のような結果が得られた。 1.ドナー骨髄細胞内のMyD88を欠損させても, GVHDの重症度は変化せず, T細胞のMyD88が存在すれば, GVHDが重症化する事が示された。2.T細胞は, TLR2やTLR7を発現するものの, これらはGVHDの重症化に寄与しなかった。3.T細胞は移植後, MyD88シグナルに依存するサイトカインレセプターである, interleukin-1 (IL-1)レセプター, IL-18R, IL-33Rなどの発現を上昇させる事が判明し, T細胞のMyD88シグナルはこれらのサイトカインの働きを通してGVHDを増悪させているものと考えられた。4.MyD88欠損T細胞を移植したり, in vitroで刺激した場合, IFN-gammaの発現が著明に減少し, IL-17の発現も軽度減少していた。これらの結果より, T細胞内の, MyD88シグナルはドナーのTh1やTh17の分化に必要である事が判明した。5.MyD88欠損T細胞を移植した場合の抗白血病効果を調べたところ, 残存白血病細胞数が多い時には, 野生型T細胞に比較して, 有意に抗白血病効果が減弱していた。しかし, 白血病細胞がごく少ない場合は, 十分な抗白血病効果が発現され, GVHDを軽減できるため, 全体の生存は改善する傾向にあった。 これらの結果より, 移植後のMyD88阻害剤は, GVHD予防薬となりうる。
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