2013 Fiscal Year Research-status Report
発作性夜間色素性尿症型血球からのiPS細胞樹立及び骨髄造血不全疾患への応用
Project/Area Number |
25860785
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡谷 久美 (中崎 久美) 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70550432)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / PNH |
Research Abstract |
平成25年度において、古典的PNH患者の骨髄血及び末梢血からの多能性幹細胞 (iPS 細胞)の樹立を試みた。本研究者は、正常骨髄中の造血幹細胞から、レトロウイルス及びセンダイウイルスを用いてiPS細胞の樹立を確立している。まず、PNH患者の骨髄中CD34陽性CD55陰性CD59陰性のPNH造血幹細胞をフローサイトメトリーでソーティングして前培養を行った。その後、センダイウイルスのOct4、Sox2、KLF4、L-myc、Nanog、Lin28、Glis1を遺伝子導入し、iPSを作成した。免疫染色でSSEA4、Tra1-60陽性であり、stem cell geneの発現も確認した。疾患特有の性質を保持しているか確認するため、10T1/2の共培養系による血球分化を行った。iPSから誘導されたCD34陽性細胞は、CD55陽性CD59陽性であり、樹立されたiPSは、PNHクローンではなく、正常クローンと考えられた。これまで、疾患由来iPSを樹立する際に、レトロウイルスやセンダイウイルスでiPS化を行うと、疾患細胞からは非常に効率が悪く、正常クローンのみ樹立されることが他の血液疾患においても認められた。当研究室では、京都大学iPS細胞研究所の沖田先生らが報告した、エピゾーマルベクター(Oct4、Sox2、KLF4、L-myc、Nanog、Lin28、shp53)を用いてiPSの樹立を行っている。エピゾーマルベクターを用いることによって、レトロウイルスやセンダイウイルスでは、樹立されなかった疾患由来iPSの樹立(骨髄異形成症候群や慢性骨髄単球性白血病)が可能となった。また、末梢血単核球からのエピゾーマルベクターを用いた樹立系も確立しており、今後PNH患者の末梢血単核球のCD13陽性CD55陰性CD59陰性細胞に対して、エピゾーマルベクターを用いてiPSの樹立を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度においては、当科での古典的PNH患者2人から、骨髄中CD34陽性CD55陰性CD59陰性のPNH造血幹細胞をフローサイトメトリーでソーティングして前培養の上、レトロウイルス及びセンダイウイルスを用いてiPS細胞の樹立を試みた。iPS細胞は樹立できたが、PNHクローン由来ではなかった。エピゾーマルベクター(Oct4、Sox2、KLF4、L-myc、Nanog、Lin28、shp53)を用いてiPSの樹立方法が疾患由来iPSを樹立する方法として有効であると考えられた。末梢血細胞から、エピゾーマルベクターを用いた樹立の最適条件の検討を行い前培養は2日間SCF、IL3、GM-CSF、TPO添加して行い、5%O2低酸素培養条件でブチル酸、ロックインヒビターなどの小分子化合物を付加することにより樹立の効率が上昇した。古典的PNH患者からのiPS細胞樹立を引き続き目指す。さらには再生不良性貧血や骨髄異形成症候群の患者においても末梢血中の微小PNH細胞に対しても、この樹立システムを用いてPNH-iPSの樹立を試みることも検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、PNH-iPS細胞の効果的な樹立方法を検討した。 これまでに検討したPNH-iPS細胞の効果的な樹立方法を基にして、平成26年度は引き続き、PNHクローン由来のiPS細胞樹立を行なう。末梢血単核球からのエピゾーマルベクターを用いた樹立系も確立されており、今後PNH患者の末梢血単核球のCD13陽性CD55陰性CD59陰性細胞に対して、エピゾーマルベクターを用いてiPSの樹立を行う予定である。その後、PNH-iPSの証明、PNH-iPSの解析を予定している。 PNH-iPS細胞の証明として、免疫染色、遺伝子検査、テラトーマ作成を検討している。また。PNH-iPSの解析としては、血球の分化誘導を行ない、将来疾患の治療方法確立にむけ、細胞の遺伝子修復を試みる。 平成26年度は、①PNH-iPSの樹立過程、②PNH-iPSの証明、③PNH-iPSの解析の各工程において費用が必要である。①のPNH-iPSの樹立においては、前培養に用いるサイトカイン、エピゾーマルベクター、遺伝子導入試薬、メディウムが必要となる。②PNH-iPSの証明では、免疫染色、遺伝子検査、テラトーマ作成、メチル化解析において費用が必要となる。③PNH-iPSの解析では、遺伝子解析やTalenによる遺伝子修復や、血球分化誘導においてVEGFなどのサイトカイン、メディウム等の費用が必要となる。また、網羅的ゲノム解析、発現解析、メチル化解析を予定している。
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Research Products
(1 results)