2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒツジ胎仔造血環境と免疫寛容を利用したヒトiPS細胞の造血系分化誘導技術の開発
Project/Area Number |
25860793
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
阿部 朋行 自治医科大学, 医学部, 助教 (20610364)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 再生医学 / 幹細胞 / トランスレーショナルリサーチ / 移植・再生医療 / 応用動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血幹細胞の大量生産は血液疾患やがん治療にきわめて有用である。近年、ES細胞やiPS細胞の再生医療への応用が期待されているが、いまだに造血幹細胞への分化誘導には成功していない。一方、申請者らは、妊娠早期(60日齢以内, 満期は147日齢)のヒツジ胎仔が免疫寛容を誘導することを利用し、造血発生の場である胎仔肝臓内でサルES細胞由来の初期中胚葉細胞を造血幹細胞に分化させることに成功した。しかしながら、ヒツジとサル由来の造血幹細胞が体内で競合するため、ES細胞由来の造血幹細胞の作製効率は必ずしも高くない。そこで本研究では、ヒトリンパ球の投与によってヒツジの造血系を抑制し、ヒトiPS細胞由来の造血幹細胞の増幅・分化を促進する技術を開発する。平成26年度は、安定してキメラヒツジを作出できるヒト臍帯血造血幹細胞を用い、キメラヒツジへのヒトリンパ球投与効果の検証を実施した。その結果、一時的にヒト造血キメラ率を向上させることに成功した。 この研究結果から、ヒツジ胎仔体内でヒトiPS細胞から効率的に造血幹細胞を作り出す技術の足がかりができたと言える。ヒトiPS細胞から効率的に造血幹細胞を作り出す技術の開発は、血液の再生医療にとって理想的なゴールである。ヒツジ胎仔の造血環境を利用してヒトiPS細胞の造血系分化誘導を行っているのは、世界でも申請者のグループだけであり、iPS細胞の由来細胞をヒツジ体内の造血幹細胞の増強を目的として有効活用するという実験系はユニークである。さらに本研究の結果から、ヒトiPS細胞の造血幹細胞への分化誘導因子を明らかにできれば、将来的に患者由来iPS細胞を用いて、血液疾患やがんに対する細胞移植治療が可能になると期待できる。
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